ニューヨーク大学で講師を務めるSteve Blank氏はブログで、技術的負債に似た概念である組織的負債について書いている。成長する組織は組織的負債を認識し解消する方法を理解する必要がある、と氏はいう。
技術的負債は問題として理解されましたが、スタートアップには別の負債が生まれていることが明らかになっています。この負債は企業の寿命を縮めさえします。それは、組織的負債です。組織的負債は人に関する負債であり、スタートアップがアーリーステージで“とにかく完了させるんだ”という動きから生まれた文化的な妥協物に関する負債なのだ。
氏がいうには、技術的負債と企業レベルで平行しているのが"組織的負債"だ。技術的負債がソフトウエアのメンテナンスを阻害するなら、組織的負債は企業の毎日の運営がスムーズに動かすことを阻害する。
- 異なる部門で別のツールや方法論を使って同じ問題を解決している。それによって、上層部は企業全体の問題に対処するための同質性を見つけにくくなる。
- マネージャはその時に良いアイディアだと思ったプロセスを作り、ソフトウエアを実装するが、問題の根本には対処せず、その結果、長期的にはより問題が生まれる。
- 時間の短縮によって、チームは"今回は"あるタスクを理想的な時間よりも短い時間で仕上げようと決定する。しかし、このやり方が繰り返されてしまう。というのは、最初の1回が特別だったことを誰も覚えていないからだ。
MaritzCXのCOOであるBassam T. Salem氏はブログで。組織的負債の概念は、企業の世界では、誰でも見るものだと言い、次のような例を挙げる。
- 重複の負債: 個別のチームが特別な役割を作り、チームの独立性を保つために、ワークフローのギャップを埋めようとする。
- 曖昧さの負債: 部門の統廃合が繰り返され、役割や責任に曖昧さが生まれる組織がある。
- “もっと前にクビにしておくべきだった”負債: 採用は馘首より簡単。そのため、積極的かつきめ細かなタレントマネジメントが出来ずに、本当はいるべきではない人、年がら年じゅう口頭による厳重注意を受け、いつかの時点で処置されなければならない人だらけの組織になってしまう可能性がある。
INSTECでマネージャを務めるScott Norberg氏は、組織的負債は組織にとって有害であり、組織は新しいプロジェクトで負債を抱えないようにするべきだという。
多量の組織的負債を抱えている企業は、新しいプロジェクトでも負債を抱えがちです。というのは、彼らの文化は価値を生み出す活動と単なる忙しさを区別するのが難しいのです。その結果、新しいソフトウエアを構築するときに、すでにあるプロセスを作ろうとするだけでなく、一度にすべてのプロセスを作ろうとするのです。
氏は次の解決策を提示する。
- 良い変化を生み出すマネジメント技術を導入する。
- ビジネスリーダーが小さなスケールのソリューションではなく、大きな図面を描けるように促す。
- 小さな単位で変化を生み出す。