“Radical Collaboration”著者のJames (Jim) Tamm氏が先日,Agile 2015カンファレンスで閉会講演を行った。
氏の経歴によると,
氏はカリフォルニア州上級行政法判事として,キャリアのほとんどを積み重ねてきました。公共部門の職務紛争に関する管轄権を持ち,これまでに1,500を越える労働争議を調定してきました。特に学校内の労働ストライキに関しては,米国内の誰よりも多く関わっています。氏は数年間,コラボレーションに関する特別対策委員会の委員を務めていました。これは対立の激しい公共部門を対象として,コラボレーションスキルの教育計画を行う委員会です。プロジェクトは大成功を収めました。信頼関係を構築し,対立を解消して,より協力的な作業環境の確立を支援することができたのです。
“Want Better Collaboration – don’t be so defensive”と題して行われた講演は,仲のよい鶏のグループと仲の悪いグループとの差異に注目するという,鶏に関する研究の論議で始まった。仲の悪い鶏のグループではスターパフォーマたちが,他の鶏が卵を産むことを邪魔することでスターになっていた。つまり,他の効率を下げることによって,自らを高く見せていたのだ。これは多くの組織環境や,企業内のスターパフォーマの行動につながるものだ,と氏は述べている。
この研究では,仲のよい鶏のグループと悪いグループの間に顕著な差異があることが分かった – 仲のよい方のグループは,1年間で260パーセント以上多くの卵を産んだのだ。
氏はこの2グループの主要な特徴を特定し,レッドゾーンとグリーンゾーンにラベル付けした上で,同じ特徴が人のグループ,とりわけ企業環境に見られることを示した。
次に氏は,レッドゾーン(敵対的)の行動とグリーンゾーン(協調的)の行動が,組織の結果に与える影響について論議した。その中で氏は,グリーンゾーンの管理アプローチを採用する組織が,はるかに多くの成果をあげていることを示す研究結果を引用している。
- 755パーセントの純利益改善
- 826パーセントの株価成長
- 516パーセントの収益改善
- 246パーセントの労働力向上
さらに氏は,学区内の協議調定に関与した裁判官としての自身の経験をもとに,紛争に関わる2つのグループがレッドゾーンの行為に走ることがいかに多いか,ということを述べた。氏は多くの人々と協力して,学区の利害関係者に対するグリーンゾーンのスキル教育に特化した,非営利団体を組織した。そして彼らは,訴訟数の大幅な減少,コミュニティとしてより望ましい結果,全面的な協力の獲得といった成果をあげることができたのだ。
次に氏は,自分自身のレッドゾーン反応を探し出すよう聴衆に求めた上で,そこからグリーンゾーンに意識的に移動するためのテクニックを提示した。
氏が示したのは,協力的な環境と関係を構築するために不可欠な,5つの基本的スキルである。
- 協力的な意思
- 誠実さ
- 自己責任
- 自覚
- 交渉と問題解決
氏によれば,人々をレッドゾーンへと向かわせる要因は自己防衛の意識であり,協力的な環境と関係を構築するためには,自己防衛の意識をコントロールするスキルが最も重要なのだ。
自己防衛について,氏は次のような定義をする。
自己防衛は,自身を他の人々から守るものではありません。
私たちが感じたくない恐れから守るものです。
テーブルの上には,脅威を感じた時に現れる,自己防衛の兆候を列挙した50枚のカードが並べられた。氏は参加者に対して,自身に当てはまるものを選び出して,その中から,防衛的なスタンスに向かわせるもののトップ3を選ぶように求めた。
カードには余白があって,参加者が他の誰かと同意できない時,自己防衛的な態度を克服してオープンなコラボレーションを保つためのアクションプランを書き留められるようになっていた。
最後に氏は,参加者に宿題を出した。
- レッドゾーンやグリーンゾーンにあることを意識する
- 自分の早期警告サインを見つける
- 自己防衛時のアクションプランを実践する
講演は録画されていて,Agile Alliance Learning Centerで見ることができる。