IBMでグローバルバンキングインダストリマーケティング部門の責任者を務めるStuart Bilick氏が先日,“Becoming an Agile Bank”というブログ記事を書いた。銀行は今,アジャイル銀行(Agile Bank)への転向という大きな課題に直面している,と氏は言う。
- アプリケーションの複雑性の存在
- 顧客行動の変化
- データ量の増大
これらの課題に取り組み,ユーザによりよいサービスを提供するために,銀行には,基幹系システム改善の戦略の確立が求められている。
銀行は今,複雑化した既存の基幹系システムへの対応に加えて,身近に起きているデジタル化という営業的課題にも,喫緊の対処を求められています。クラウド,アナリティクス,モバイル,セキュリティ,ソーシャル(CMASS)テクノロジは,アジャイル化というこの目標達成の上で,その重要度をさらに増しています ... 再利用可能なコンポーネントを導入し,カスタマソリューションとしてCAMSS機能を取り入れたアーキテクチャのメリットを活用することにより,銀行は,基幹システム更新を実施するための適切なフレームワークと戦略を開発し,市場において,よりアジャイルな存在になることが可能なのです。
SolidFireのテクニカルディレクタであるMartin Cooper氏は,Cloud Computing Newsに,従来型の銀行は,アジャイル手法などの革新的手法を採用した新たな競争相手という脅威にさらされている,と書いている。
ApplePayや,特にPayPalのような,新たな破壊的挑戦者の最大の強みは,消費者が望むサービスを提供する手段として,クラウドインフラストラクチャなどのアジャイルテクノロジを積極的に採用する姿勢にあります ... 高度なフレキシビリティとコラボレーション機会の提供は,クラウドソリューションに限るものではありません。しかしながら,それらの持つスケーラブルな性質は,新しく有望なディジタル製品やサービスの,迅速なプロトタイプを可能にするDevOps環境として機能します。
Accentureのブログ記事“Agile development platforms..”によれば,銀行は今,その製品開発や組織設計,ユーザエクスペリエンス能力において,従来のアプリケーション開発を越えた,より高いアジリティとフレキシビリティの実現を目指している。ITアーキテクチャとインフラストラクチャにおいて,当初からマルチチャネル機能を設計しておくことが,より迅速な緊急の規制要件への対処,ビジネスやテクノロジの変化への対応,より効果的な顧客サービスを可能にするのだ。
前出のAccentureの記事によれば,ビジネスへの対応性の高いIT機能をアジャイルで構築するには,2つのアクティビティを並行して実施することが必要となる。その2つとは,
- 主にサイロ環境を削減することによる,よりフレキシブルなエンタープライズアーキテクチャ設計。これは,ITとビジネスの共同作業の奨励,RADツールの活用,複数チャネルを通じたデリバリをサポートするアーキテクチャの実装によって実現可能だ。
- マルチチャネルな方法論を用いた,よりフレキシブルなアプリケーション開発アプローチの活用。このためには,プラットフォームのスケーラビリティとパフォーマンスの確立,プラットフォームの独立性による特定技術へのコミットの排除,アプリケーションの相互運用性の確立,強力なユーザインターフェース開発力の活用,開発のための情報統合ハブの活用が必要となる。
InformationWeek Financial Servicesの編集ディレクタであるGreg MacSweeney氏は先頃,Capital Oneがソフトウェアの85%をアジャイルで開発している,という記事を書いた。
カスタマエクスペリエンスを,従来型の銀行取引から,AmazonやAppleのユーザインタラクションのような方式に転換する上で,Capital Oneでは,新たなアプリケーションやサービスのデプロイにアジャイル技術開発を導入しました。
Capital OneでカードIT担当上級副社長を務めるRudy Wolfs氏によると,同社はアジャイルの活用によって,1ヶ月で約400製品のリリースを可能にしたという。Capital Oneでは現在,3,000人を越える開発者とビジネスユーザがアジャイル方法論を学んでいる。さらにアジャイルに関連して,チームのサイズやコミットメントのレベル,製品の品質,製品提供時間,コスト,初回デプロイメントでの要求満足度など,9項目の測定値を追跡している,と氏は言う。
Capital Oneでのイノベーション推進について,氏は次のように述べている。
当社では,関係者がテストし,学び,人々が考えていないようなものを探索するために,3つのラボを用意しています。このようなことをする必要があるのは,技術系企業と同じような行動が私たちにも必要だと考えているからです。
全社的イノベーションを促進するためにCapital Oneでは,開発者のチームをフルタイムでイノベーションラボ内に留めるのではなく,固定的にアサインされている数人を除いて,イノベーションラボ内で開発者のローテーションを行っています。