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“Turn the Ship Around”に見る,すべてのレベルにリーダシップを

原文(投稿日:2015/11/06)へのリンク

Agile Tour London 2015でWim Heemskerk氏とDirk Mulder氏が,あらゆるレベルでのリーダシップの創造に関するセッションを開いた。このワークショップは,David Marquet氏の著書“Turn the Ship Around”をベースとしている。

InfoQではHeemskerk, Mulder両氏にインタビューして,職務階級がアジャイル移行にどのような障害になり得るか,組織がフォロワではなくリーダを育てるべきなのはなぜか,増大する組織のアジリティに対して同書の教えるリーダシップをどのように適用すべきか,などを聞いた。

InfoQ: セッションでは,アジャイルに移行しようとしている組織が,職務階級や組織の複雑性によって阻害される状況が取り上げられていましたが,その例をあげて頂けますか?

Heemskerk: いや,例をあげるまでもないでしょう。組織の上位層で行われる階層的な意思決定が,自らの意思交換やプロセスの自己組織化を図る人々には相容れないものであるというのは,セミナに参加した誰もが毎日,経験していることだと思います。さらに私たちには,今日の速度と複雑さに対処し得るような自己組織化の資質も必要です。そこで私たちは,参加者に対して,権限委譲の拡大を妨げているものは何なのか尋ねてみました。彼らの答は,大きく3つのテーマに集約されます。 1) 必要な力量が不足しているため,優れた仕事を行うことができない。2) 全体像を把握できていないため,適切な判断を下すことができない。3) マネージャ自身が,“何ができるのか?”, “私の立場にどのような影響があるのか?”といった問題に悩んでいる。

Mulder: 職階構造に阻まれているのは,何もアジャイル移行中の組織だけではありません。マネージャあるいは専門家としての私たちは,組織を管理したい(そして自分の専門知識を示したい)という気持ちを持つ傾向にあります。どうするべきかを尋ねる人たちに,答を与えたいのです。これはその組織が,そこで働く人たちにとって最高の場所になるという意味では,よい方向ではありません。人々にコントロール権を与え,オーナーシップと積極的なイニシアティブを選択するように教育してこそ,より活発な(Daniel Pinkの言う“やる気(Drive)”の)文化が作り出されるのです。

InfoQ: “Turn the Ship Around”を知らない読者のために,どういった本なのか,簡単に説明して頂けますか?

Mulder: この本は,ある事情から不慣れな潜水艦の艦長になったDavid Marquet氏の話です。どうも潜水艦というのは,意欲とその維持,結果という面で,艦隊の中でも“厄介者(black sheep)”扱いだったようです。本書では,この米海軍原子力潜水艦の船長と乗組員の両方が,指揮統制型からリーダ-リーダへの移行から学んだ様子が説明されています。この習得プロセスの間,管理と意思決定は,潜水艦内のすべての階層において個々に託されました。自身(と仲間)が生来持っていた本能を変えて,自分で自分をコントロールする形にした訳です。その方がはるかに力を発揮できるからです。これによって艦内の文化は変化し,素晴らしいものになりました。

Heemskerk: 一時的な(だけの)現象ではありません。急激に広がって,1年の間にすべての事態を好転させるのです。それまでは艦長ただ一人の判断であったものが,全乗員135人の判断,情熱,積極性に変わったからだ,と氏は説明しています。

InfoQ: セッションの中で,組織はフォロワではなくリーダを育てる必要がある,という話題がありましたが,これはどういう意味なのか,説明して頂けますか?

Mulder: 組織が高い適応性を持つためには,組織の持つすべての力を結集する必要があります。すべての構成員が自身のパートの所有者となり,その能力の範囲内でリーダとなり,意思決定とイニシアティブを取らなくてはなりません。これが組織の可変性を改善し,モラルを向上させるのです。それだけではありません。最高の労働力を求めて競い合わなくてはならない世界では,社員を奮起させる組織こそがより魅力的であり,最終的に優れた結果を生み出すことができるのです。

Heemskerk: 積極性や自発性を持っていない人を募集する求人広告があるでしょうか?現在の組織が求めているのは,自ら考えることのできる人たちです。ただし,それが実際にできるかどうかは,管理する側にも大きく依存します。 マイクロマネジメントは,判断やイニシアティブといったものをだめにします。人はコントロールを与えてこそ,自分自身をリードするようになれるのです。盲目的にフォローさせていては,彼らの可能性をフルに活用することはできません。ですから,リーダを育てることが必要なのです。

InfoQ: この本で紹介されているリーダシップのレッスンが,組織のアジリティを向上するためにどのように適用できるのか,いくつか例をあげて頂けますか?

Heemskerk: 権限を委譲しようとした時に直面する問題として,セッションでは3つのカテゴリを取り上げました。著者のDavidは,それらを“力量”,“目的の明確性”,“コントロール”と呼んでいます。それを理解できれば,一度にひとづずつのステップで事を進めることができるようになります。混乱に陥ることなく,これまで以上のコントロールを与える(あるいは求める)ことが可能になるのです。

コーチとしての私自身の仕事でも,最も効果的であるためには 相応の自由が必要です。その自由を得るために私が本書から用いていることの1つは,管理を行う上で,彼らの全体像を心に描こうとしていることを,彼らに分かってもらうことです。また上司との会話では,自分が彼と同じレベルで考えていると示すことによって,それまでよりも安心して仕事を任せてもらえるようになりました。

これまでに,さまざまな設定でこのワークショップを実行してきましたが, 非常に大きな反響を頂いています。特に,全管理チームを集めたインハウスのワークショップでは,得るものがたくさんありました。私たちは現在,まさにDavidその人と共に,オランダで一連の活動を行っている真っ最中です。夕方開催のリーダシップに関するセミナに始まって,半日のワークショップ,高次のマネジメントを対象とする1日のリーダシッププログラムと続きます。詳細については,lead4greatness.comのWebサイトを参照してください。

Mulder:“New Way of Working”が実践されている状況においてDavidが提供してくれたものは,マネージャと社員両方の立場での信頼と可能性を育む上で極めて有効なものです。

実践的運用を重視している点は,まさにわが意を得たりというところです。複雑なモデルは必要ありません。その時点において,次のステップを明確にするために必要なものさえあればよいのです。Davidはこのインクリメンタルアプローチのメリットを強調するために,ちょっとした“Nudge(突き)”を毎週受け取れるサービスを提供しています。

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