オープンソースコミュニティは2015年12月28日，Debin Linuxの創始者であるIan Murdock氏死去のニュースに接して，深い悲しみに包まれている。Murdock氏は1993年8月，公式にDebian Linuxの開始を発表し，1996年に同ディストリビューションとして最初の安定版をリリースした。Debian以外にも，氏はSunやSalesforce，最近ではDockerのコンテナ化テクノロジに従事している。
Debianが10周年に達した2003年には，その10年間の振り返りを行なっている。Debianのさまざまな成果の中で氏が特にあげたのは，パッケージシステム(dpkg)，プロジェクト管理とガバナンス構造，そしてDebianを取り巻くエコシステム全体だった。このアプローチが成功したことは，Debianの寿命の長さ，Debianを基盤として用いたLinuxディストリビューションの数の多さが証明している。中でも注目に値するのはUbuntu, Linux Mint, Netrunner, そしてdeepin Linuxだ。 このようにDebianの影響はDebianそれ自体のユーザを越えて，すべての人たちに対するリッチなLinux環境の提供へと成長しているのだ。
氏の逝去という損失を複雑にしているのは，氏のTwitterアカウントから送られている，サンフランシスコ警察署との衝撃的な遭遇を氏の視点から詳しく述べた，当惑を覚えるメッセージの存在である。残念ながらこの惨事によって，前途有望な氏の人生に相応しい長さと終焉を得ることなく，断ち切られることになった。氏がその人生を通じて作り上げた技術面での功績は，Linuxコミュニティへの絶えない貢献の証として今後も長く残り続けていく。