Fred George氏が,マイクロサービスのデプロイに成功を収めるために何ができるか,モノのインターネット(IoT)においてどのような役割を果たすことができるか,という話題についてGOTO Berlin 2015カンファレンスで講演した。InfoQでは以前,マイクロサービスを活用する上で必要なサポートについて氏にインタビューしたことがある。その中で氏は,モノのインターネットでのマイクロサービスの活用方法と,モノのインターネットがもたらす課題,それらに対処する方法について説明してくれた。今回はさらに,モノのインターネットのために,ソフトウェア産業としてマイクロサービスをどのように活用すべきか,氏の意見を聞くことにした。
InfoQ: IoT(モノのインターネット)でマイクロサービスをどのように活用できるのか,詳しく説明して頂けますか?
George: すべてのデバイスがコンピュータとワイヤレス接続を持つような環境に,モノシリックなITアーキテクチャは相応しくありません。私の家には現在,7つのライトバルブと10メートルのライトストリップがあるのですが,それぞれが自身のプロセッサを持っています。さらにApple TVやXBoxもあります。それらとのインタラクションは,あなたの予想とは違うかも知れませんが,ある程度(IBMやOracleやGoogleやAmazonやAppleが想定しているよりも)分離されている必要があると思っています。つまり私としては,デバイス自身が自分の状態を公開すると同時に,他のデバイス(あるいは人)の行為にも反応するようにしてほしい,と考えているのです。しかも,直面している問題はあいまいですから,まさにマイクロサービスに最適な分野なのです。
ここで,私が家にいるかどうかを(多分,私の持っているiPhoneとジオロケーションサービスを使って)示すだけのマイクロサービスがあるものと仮定してみます。他のマイクロサービスがそのサービスに反応して,1日の時間に基づいて照明の点灯と消灯を(Apple HomeKitと私のPhilips Hueコントローラを経由して)行ってくれます。マイクロサービスを使えば,大規模ベンダが機能を用意してくれるのを待たなくても,該当するサービスを追加することでより高度な機能が実現可能になるのです。
InfoQ: モノのインターネットを扱う上で直面した課題について,いくつか説明をお願いできますか?
George: 私自身まだ始めたばかりですが,すぐに思い当たることが2つあります。ひとつは,さまざまなベンダのデバイスに相互動作させるにはどうすればよいのか,という相互運用性の問題です。ふたつめは,悪質な他人(私の場合はハッカーの知人)のアクセスから自宅のシステムを保護するにはどうすればよいのか,といセキュリティの問題です。
InfoQ: これらの課題に対処する上で,何か提案はありますか?
George: 相互運用の件については,2つの標準が登場しています。主要なベンダ企業も,複数の互換性標準をサポートすれば他社製品よりも使用される可能性が高くなる,ということを意識し始めました。セキュリティの面では,ロックされた無線ネットワークを使用すること,セキュリティ確保のためのベストプラクティスに従うこと,この2つが最善策でしょう。そうすることで,外部に面したファサードだけを攻撃から保護すればよくなります。Apple TV,Microsoft XBox,Amazon Echoなどはみな,このファサードを競い合っているように思えます。
InfoQ: 相互運用性の問題に関して,マイクロサービスが解決策になるのでしょうか?具体的な例をあげられますか?
George: ベンダはそれぞれがプロトコルを公開して,自分たちのハブへのAPIを提供しています。マイクロサービスはそれらプロトコルの間で,アダプタとして機能することが可能です。軽量かつ破棄が容易という,急速に変化する環境で望まれる特徴を兼ね備えているのです。これを使っている同僚はよく,これらのタスクにArduinoプロセッサ基盤を使っています。このプロセッサの最新版では現代的な言語が使える上に,消費電力が小さく,どこにでも設置することができるのです。
InfoQ: モノのインターネットでマイクロサービスを使用することについて,ソフトウェア業界にどのようなアドバイスをしたいですか?
George: この分野で成功を収めるベンダは,相互運用性の必要を理解した上で,プロプライエタリな製品群の連続的な機能によってではなく,標準的なプロトコル上で自社のハブやデバイスとリッチなコミュニケーションを行う(HTTPプロトコルのRESTfulインターフェースのような)APIを解放することで,その問題の解決に当たるようになるでしょう。私としては,おもちゃのロボットやドローン市場のように,機能の豊富なオープンソースモデルが登場することを期待しています。オープンプロトコルを最初に提供したものが,その報酬としてマーケットシェアを得ることになるでしょう。
Amazonは最近,そのような統合ベンダになろうと努力しています(“Amazon to flex internet of things”をご覧ください)。Philipsは先頃,同社のハブから外部デバイスを除外する決定を覆しました。コミュニティを除外することへの批判の激しさから,このような行動がマーケットシェアを失うものであることを理解したのです(“Philips Hue is getting back its third party smart bulb support”をご覧ください)。業界は,自分たちが何をするべきかを理解しているのだと思います。