企業がインテグレーションテクノロジを利用する方法は,この10年間で大きく様変わりした。今後10年の間にも大きく変わるだろう – QCon Londonで行なったプレゼンテーションの中でSenaka Fernando氏は,エンタープライズインテグレーションの過去10年と現在の状況,今後10年で起こるであろうことの予測に対する自身の見解をこう説明した。
この10年を振り返って,WSO2のソリューションアーキテクトであるFernando氏は,技術面での重要な変化をいくつか挙げた。
- サービス通信はXMLからSOAP,WS-*,そして昨今のRESTアーキテクチャスタイルへと変遷している。REST APIによってアプリケーションは,かつてよりも対話的になったといえるだろう。氏はこれが,かつてのSOAP Webサービスから,より柔軟なRESTベースサービスへと移行していった理由のひとつだと考えている。
- インフラストラクチャはオンプレミス一辺倒からクラウド利用へと移行し,現在はコンテナが多くの注目を集めている。
- システムとの対話方法は大きく変わった。PCとWebベースインターフェースを使ったかつての方法から,今ではモバイルシステムが中心となり,さらにはモノのインターネット(IoT)もあらゆるシステムで稼働している。
Fernando氏が課題として強調するのは,私たちを取り巻く世界が急激に変化しているにも関わらず,人間がそれほど変わっていないことだ。私たちの期待や要求に変わりはない。企業は相変わらずユーザやパートナとの協力の下で,生産性の高いソリューションの構築を追求し続けている。ビジネスの目標がこの10年でもほとんど変化していないにも関わらず,目的を実現するための手段は大きく変わっている。それと同じように,エンタープライズインテグレーションの目標は変わっていないが,私たちが利用できるテクノロジは変化している。これが過去10年間の傾向であると同時に,今後10ないし15年間の傾向でもあると氏は確信している。
インテグレーションテクノロジの現在の状況について,氏は,システムの接続方法が大きく様変わりしている点を指摘する。これまで私たちは,内部使用するアプリケーションによるサイロ型の世界と,特に外部使用を目的として開発されたものとを使い分けてきた。今日ではこれらすべてが接続され,あらゆる企業が,これらすべてのシステムの潜在能力を活用する方法に注目している。すべてはより緊密に統合され,接続された環境の構築という,大きな目標の下で行われているのだ。
今後10年の間,企業が進む方向について,氏はいくつかのポイントを指摘する。
- 通貨としてのデータ。 企業の所有するすべてのデータには,その企業自身あるいは他の企業にとって潜在的な有用性を持つものが数多く存在する。
- 多国語アーキテクチャ。あらゆるデバイスに対応するために,さまざまなタイプのデータリポジトリが使用されるようになるだろう。さまざまなテクノロジで開発されたシステムが,オンプレミスで,あるいはクラウド内でで動作する,というように,エコシステム全体が広がっていくだろう。
- マイクロサービスは現在でも十分に理解されているとは言い難く,運用にはいまだ多くの課題がある。それが本当に必要なのか,メリットはあるのか,といったことを再考し,疑問を持つべきだ,と氏は考えている。
ここでも氏は,人間がほとんど変わらないでいられるのに対して,ビジネスはそうではないことを,Nokiaを例に引きながら強調している。
結論として氏は,3つの重要なポイントを挙げた。
- インテグレーションは新しい問題ではないし,過去の問題になることもない — ただ見かけが変わるだけだ。
- 現代のすべてのビジネスは,結合されたビジネスであることが必要だ。
- 企業の課題をキャッチアップするための鍵はイテレーションにある。
プレゼンテーションのスライドがこちらで公開されている。
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