VesionOneが第10回のState of Agile年次調査結果をリリースした。世界各国からの3,800件を越える回答を元にした調査結果は,アジャイルメソッドが具体的なメリットを提供していること,ソフトウェア開発の既定のメソッドとして着実に浸透していること,ソフトウェア以外の領域にも拡大し始めていること,などを示している。
調査結果の注目すべき部分を以下に示す。
- 調査は多くの対象にリーチしており,44%の米国外からの回答や多種多様な産業を含んでいる。
- 回答者は各組織のIT部門が主体で,そのITにおける役割は広い範囲に及んでいる。
- 回答者のアジャイルメソッドに関する知識レベルは高く,33%がアジャイルアプローチを3~4年,33%は5年以上にわたって使用している。
- 95%の組織が,アジャイルアプローチをソフトウェア開発に使用している。
- 組織としての浸透の高さとは対照的に,53%の回答者が,アジャイルメソッドを運用しているチームの数が全体の半分に満たないと回答している。
- 組織がアジャイルアプローチを導入するメリットのトップ3は以下のものだった。
- 87% – 優先順位の変更管理が可能
- 85% – チームの生産性向上
- 84% – プロジェクトの可視性改善
- スクラムは依然として最も使用されているアジャイルフレームワークであり,それ自体(58%),XPとのハイブリッド(10%),Scrumban(7%)となっている。
- アジャイル導入の最大の課題は文化的なものだ -
- 失敗したアジャイルプロジェクトの46%が,失敗の最大の理由として“企業文化とアジャイルの中心的価値観との対立”をあげている。
- 回答者の55%が,アジャイル採用を拡大する上で最大の障害は“組織の文化を変えること”だ,としている。
- アジャイルのスケールアップは現実的問題である — 企業はアジャイルの適用を,小規模なチームから,より複雑なプログラムないしポートフォリオに拡大する方法を積極的に模索している。
- 最も多く用いられているスケールアップのアプローチはスクラム/スクラム・オブ・スクラムズ(72%)で,次いでSAFe(Scaled Agile Framework)(27%)となっている。
調査結果の詳細を確認すべく,報告書の著者のひとりであるLee Cunningham氏に話を聞いた。
回答者が自己選択であることとVesionOneの顧客であることによる影響の可能性について,氏は,回答者の中でVesionOneのユーザが占める割合は28%に過ぎず,参加者を可能な限り広範に求めるべく調査の広報を行なっている,と述べた。
過去10年間の調査の結果と,一部の回答者との会話から,いくつかの重要な傾向があることをCunningham氏は指摘している。
- アジャイルの採用は,年を追うにつれ,ますます大規模な組織にまで浸透し,現在ではスタートアップからフォーチュン100企業に至るまで,広く普及している。
- 原理原則の正しさに重点を置くことでより多くの成果をあげる,第2,第3のアジャイル採用の波が起きているようだ。
- ここで言う原理原則には,有力な技術的プラクティスやクラフトマンシップ重視などが含まれる。
- 必要とされる組織文化変革への取り組み — その第一歩は,ビジネスのあり方をまったく違う方法で考えることだ。
- 新たな働き方をサポートするためには,組織のKPIとメトリックを変える必要がある。
- アジャイル移行の失敗例から,文化的変革の効率的普及と永続化に,トップによるリードが不可欠であることは明らかだ。
- アジャイル開発の自然な拡張としてのDevOps関連の思想は,より安心感と親近感を持って受け止められている。組織における顧客対応の領域という“上流(upstream)”への拡張を通じることで,バリューストリーム全体をアジャイルかつレスポンシブにすることが可能である。
- これまでソフトウェア開発のみであったアジャイルプラクティスが,他組織へと拡がりを見せ始めている。アジャイルマーケティング,アジャイル人材管理(HR)の2つは,最近になって確立された分野である。
- スケールアップアプローチの採用は,組織がさらなる適応性と応答性を求めていることを示している — フレームワークを取り入れることが目標なのではなく,アジャイル企業を作り上げることが目標なのだ。
- アジャイルを導入する上で最大の障害が人と文化であることに変わりはなく,これらを変えることは困難である。
調査の全結果はVersionOneのWebサイトからダウンロード可能だ。
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