2016年3月の“Let us loop you in”で発表したとおり,Appleは,CareKitフレームワークをオープンソースとして公開した。CareKitは,医学的な状態を管理するアプリの開発支援を目的としたフレームワークだ。新たなフレームワークと合わせて,それを使用した4つのiOSアプリも同時に公開されている。
Appleのこの新しいフレームワークは,GitHub上の専用リポジトリにホストされている。興味深いのは,Swiftが導入されてほぼ2年が経過しているにも関わらず,CareKitがObjective-C 100%のフレームワークであることだ。ただしサンプルプログラムの中には,Swiftで記述されたものも含まれている。InfoQではこの決定の根拠を明らかにすべく,Appleに問合せを行なっている。回答があればこの記事を更新する予定だ。
CareKitは,医学指向のアプリを開発する上で有効であるとAppleが期待する,次の6つのモジュールを提供している。
- Care Card — 薬の服用やエクササイズの実行といった,ケアプランとアクションアイテムの追跡を支援する。
- Symptom and Measurement Tracker — 体温,疲労感,空腹感などの症状や測定値を監視する。
- Insight Dashboard — 症状とアクションアイテムを組み合わせ,治療状況をグラフ表示する。
- Connect — 医師,他アプリ,家族との患者情報の共有,あるいは非共有を可能にする。
- Care Plan Store — 他のモジュールと共有するデータベースである。
- Document Exporter — 内部データをエクスポート用にパッケージ化する機構を提供する。
Appleはまた,CareKitをオープンソース化することによって,開発者コミュニティが新たなモジュール開発や既存モジュールの拡張を行なうことも期待している。
前述のようにAppleは,CareKit対応アプリを提供する上でサードパーティとの共同開発を実施している。取り上げられているのは,うつ病の投薬管理,糖尿病の症状管理,妊娠管理,乳児の健康監視といったテーマだ。その他にも,術後のニーズや慢性疾患の監視に注目したアプリが発表されている。
CareKitは健康志向アプリの要求に応えるために,AppleがHealthKit,ResearchKitに続いてリリースした第3のフレームワークであり,概念上はその2つの上に位置している。HealthKitは,iOS8以降の健康支援アプリとのインタラクションを通じて,血圧やカロリ消費量などの健康情報をユーザに開示するAPIを提供する。もう一方のResearchKitは,特に調査の実施や同意の獲得,アクティブなタスクの管理といった医学研究者からの要求に注目したものだ。
CareKitについて詳しく知るためには,GitHubレポジトリのクローン,あるいはAPI資料の参照が可能だ。専用のブログも用意されている。
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