Apache TinkerPopがトップレベルプロジェクトに

Apache Software FoundationがTinkerPopを卒業させてトッププロジェクトにすると発表した。 TinkerPopはリアルタイムのトランザクション処理 (OLAP) とバッチのグラフ解析 (OLTP) のためのグラフ計算フレームワークであり、コアとなるTinkerPop Gremlinエンジンと、それにインテグレートされる多数のサブプロジェクトおよびモジュールを包括するものとみなせる。このフレームワークはコア機能の一部として、グラフトラバーサル言語であるGremlin言語も提供している。

Gremlinエンジンはグラフトラバーサルを処理するものだが、多数の言語ドライバによってサポートされるGremlinエンジンバインディングを使うことで、別の言語で書かれたグラフトラバーサルを実行することができ、ある意味、JVMと似ているところがある。Gremlinエンジンでは、Gremlin言語はもちろん、SPARQL、SQL、Python、JavaScript、Scala、Goでも使える。今回の卒業は、本プロジェクトのコミュニティおよびプロダクトが、Apacheの能力本位のプロセスおよび原則のもと、うまく治められてきたことを意味している。

Apache TinkerPopのバイスプレジデントで、"Sally in General"としても知られる前コントリビュータのStephen Mallette氏は、どこでも簡単にアクセスできるグラフデータベースのニーズについて、スケーラビリティを挙げている。TinkerPopはトップレベルプロジェクトになる前に業界採用を増やしていた。

TinkerPopは、単一マシンに収まる小さなグラフで動かすのにも、複数マシンから成る計算クラスタ上で分離・分散でしか存在しない巨大なグラフで動かすのにも有用です。… TinkerPopはDataStaxやIBMといった企業でも使われています。現在、Amazon.comは約1兆エッジを含む注文処理グラフを扱うのに、TinkerPopとGremlinを使っています。

TinkerPopは2009年にLos Alamos National Laboratoryで生まれ、Neo4j、Giraph、Spark、Hadoopなどにプロダクトレディな参照実装を提供している。

Apacheのトップレベルプロジェクトになる前、一部のコミュニティメンバーがTinkerPopのスコープの理解について課題を指摘していた。具体的には、それはコアであるGremlin言語とエンジンのことなのか、それとも、開発者にGremlinエンジンでグラフトラバースを実装するための選択肢を提供する各種インテグレーションとバインディングが含まれるのかだ。

当初からその曖昧さは、一般からのコメントに見ることができる。TinkerPopは何であって何でないのか、その明確化に関する投稿に対して、Mallette氏は次のように答えた。

TinkerPopは、グラフアプリケーションを書くための仕様でも、指示書でも、標準でもありません。そうなることを望んでもいません。TinkerPopは一連のインターフェイスを提供するだけです。データベースベンダーはそのデータベースを実装して (Blueprints)、TinkerPopスタックの他の機能を得ることができます (Pipes、Frames、Rexster、Furnace、Gremlin)。スタックのそれぞれの部分が、グラフベースアプリケーションの開発をサポートする上で、特定の機能を提供します。... TinkerPopにはもう、BlueprintsやPipesといった個別のプロジェクトはありません。単一のプロジェクトリポジトリがあって、それがすべてのプロジェクトを包括します。

TinkerPop関連のプロジェクトを中央のApache リポジトリに移すことで、コミュニティは言語ドライバによるGremlinインテグレーション、各種グラフシステムのGremlinエンジンサポート、クエリ言語サポート、チュートリアル、関連出版物など、その全体スコープの把握と理解が容易になるだろう。