末日聖徒イエス・キリスト教会(LDS)でエンタープライズ・データ・アーキテクトを務めるMike Bowers氏が,先日のEnterprise Data World Conference(EDW)で,8年間のNoSQLデータベース運用経験から学んだことについて講演し,NoSQLデータベースの選択に関する設計上の考慮点を解説した。
大規模な組織でNoSQLデータベースを採用するには,既存のリレーショナルデータベースモデルのNoSQLデータベース移行を伴うことから,多大な労力と時間を必要とする。加えて,さまざまな管理レベルにおける組織文化の変化もこれに関与する。
講演の中で氏は,大規模なIT部門を持つ自らの組織において,最新のデータベース技術(ドキュメントNoSQLデータベース)を導入した成功例について説明した。氏の所属するLDS教会では現在,189のアプリケーションを運用して数十億件のトランザクションを処理している。同教会は1500万人の会員を有し,数千種の文書を188の言語で提供する。運用中の192のWebサイトとアプリケーション(Marklogicサーバ上で稼働)には,年間数十億のページビューがある。
NoSQLデータベースの採用には,NoSQLを支持する指導者と,開発者および経営陣の積極的な関与が必要だ。
教訓その1: NoSQLを支持するリーダが組織にいること: 組織全体に影響力を持ち,企業内の開発者のみならず,経営陣をも納得させるような人物の存在が不可欠だ。
教訓その2: 経営陣の積極的関与を得ること: 大企業の経営陣は企業向け商用データベースを,新興企業の上級管理職はオープンソースデータベースを,それぞれ好む傾向がある。つまりNoSQL移行チームがNoSQLデータベースを導入するには,組織の管理層による関与が必要なのだ。
教訓その3: 開発者の積極的関与を得ること: 開発者に対して,NoSQLが多様なデータ構造をサポートし,アジャイル開発を実現するものであることを示す必要がる。キー/バリューデータベースが高度なパフォーマンスを,ワイドカラムデータベースがインターネットレベルのスケーリングを提供するのに対して,ドキュメントNoSQLデータベースは短期間でのアプリ開発を実現するのだ,と氏は指摘する。
教訓その4: トレーニング,トレーニング,トレーニング: 開発者がNoSQLに習熟することが何よりも重要だ。 技術を伴わないNoSQLの導入活動は,都合のよい練習台に過ぎない。
氏が勧める方法は,NoSQLを使った現実的なソリューションを短期間で安価に構築し,それを成功の実例として上層部に示すことだ。データベースライセンスと開発コストの削減,スケーラビリティの向上といった目標を実証することに意味がある。
さらに氏は,高帯域幅,低レイテンシ,分析性,運用性,ボリューム,速度といった要件に対して,他のデータベースと比較を行なう方法も提案した。データモデルの柔軟性,パフォーマンス,あるいは水平スケーラビリティなど,NoSQLデータベース採用の原動力となり得るファクタをその中から見つけ出すのだ。
意思決定プロセスにはチーム全体による集団所有権があるので,NoSQLデータベースの採用は,チーム内でコンセンサスの取れたものであることは不可欠だ。
この記事を評価
- 編集者評
- 編集長対応