Tony Grout氏とChris Matts氏がビジネスマッピングとスキルの流動性についてQCon London 2016で語り、彼らのロイズ銀行での実践例を示した。
講演では、ふたりはロイズ銀行でこの手法をどのように導入したかについて語られた。彼らが説明したのはビジネスの戦略と人の能力と願いを組み合わせ、ビジネスサイドと技術者の協力を改善する方法だ。
InfoQは講演の後、彼らに話を聞いた。
InfoQ: 大きな組織にアジャイルを導入した結果、人々は次に何か起こるかわからないという不安を抱えています。この不安はどのように対処すればよいでしょうか。
Chris Matts: まず、アジャイルを導入するのにアジャイルの手法を使うことです。"キャズム越え"の方法を使って製品をリリースするときのように考えます。こうすることで自分たちに影響がある前に、アジャイルがどのように企業に影響を与えるかをみることができ、うまく馴染むことができます。
ミドルマネージャは企業の変革に責任を持ちます。"変化した"と感じるのではなく運転席にいることに心地よさを感じなければなりません。最近、クライアントのミドルマネージャ向けにオープンスペースを開催しました。変革に対する責任という点でとても効果的でした。
決してしてはならないことがひとつあります。ミドルマネージャやプロジェクトマネージャは必要ない、去るかスクラムマスターになるかのどちらかだ、とは広報してはいけません。これはナイーブで愚かなことです。私にはこのようなアジャイルの"思想的リーダー"からのアドバイスを真に受けて深く後悔している顧客が2社あります。
Tony Grout: 組織の文化はアジャイルをスケールするに当たって強力な敵です。私が柔道を通じて学んだのは敵の力を使うことです。そして、"文化を変えるのに文化を使う"という考えにたどり着いたのです。.
私はメトリクス駆動なヒエラルキー型の組織の変革をリードしました。その時は、その文化を使って、アジャイル文化を推進するためにメトリクスの再設計に注力しました。上級のリーダーに馴染みのある、しかし、異なる結果を産むツールを与えることでこのやり方はうまくいきました。
InfoQ: 講演では、 "待ち行列はあらゆる場所にある"と話していましたね。どういう意味か説明していただけますか。なぜ問題なのでしょうか。
Chris Matts: 重要なのはリードタイムを改善することです。これによってプロダクト開発のリスクが小さくなります。アジャイルはチームを最適化するのには素晴らしい手法ですが、チーム横断の動きを駆動するのには比較的弱いです。チーム横断の動きのリードタイムを分析すると、ほとんどの遅延は待ち行列で起きているのがわかるでしょう。ここで待ち行列を管理する手法の出番です。これらの手法は待ち行列を見える化します。累積フロー図、バリューストリームマッピング、カンバンボードなどです。
InfoQ: Dan North氏はビジネスマッピングでアジャイルな組織を作ると題した記事で、ビジネスマッピングについて書いています。これはあなたが一緒に作ったものですね。Lloyds Bankではどのように使ったのですか。
Chris Matts: ロイズ銀行の件はまだ始まったばかりで、ビジネスマッピングが正しい解決策かどうかを判断するには早すぎます。まずは、どのようになるかしっかりと見る必要があります。
ビジネスマッピングはDanと私が考えた一式の方法のことです。需要マッピングはTonyと私がSkypeでの同僚と共に開発したもので、組織でどのチームが制約になっているかを特定する方法です。需要マッピングは4半期に1度実施して組織的なバックログと、制約となっているチームを特定します。Danも同じようなことを顧客と共に実施していました。この後、私は需要マッピングとメトリックマッピングを導入する顧客の支援をしていました。
メトリックマッピングもSkypeどの仕事から生まれています。組織がメトリクスを使って優先順位を決めるのに役立ちます。
スキルマッピングはDanのある顧客での仕事から生まれました。彼はスキルマトリクスを拡張して組織と個人のニーズを整えたのです。Danが見つけたのは、アジャイルへの転換によって以前は理解されていたキャリアパスが一掃されてしまい、個人が迷子になってしまうということでした。
Tony Grout: ロイズ銀行での手法を使う可能性はあります。しかし、もっとも重要な3つの要素を考慮しなければなりません。それは何かというと、文脈、文脈、そして文脈です。文脈をより良く理解することで、それらの手法が役に立つかどうか見極められるのです。
InfoQ: 講演の中で、比較的優先度が低い仕事を抱えるチームを持ち、最高の優先度の仕事をしているチームを助けようとしたことについて話していましたね。詳しく教えてください。どのような教訓が得られましたか。
Chris Matts: これこそ、アジャイルへの転換の核心です。個人としてもっとも効率良くやれる仕事ではなく、もっとも重要な仕事をするということです。
人事の評価体系を変えることには成功しました。しかし、文化の変化を管理するのは大変でした。組織の変化には制約の理論を適用しました。
Tony Grout: 大変なことであり、ほとんどの場合、評価の仕組みに関わらず、正しいことをするチームがあるかどうかにかかっています。ほとんどの大企業は、社会的手抜きやスタックランキング評価システムに対する時代遅れのモデルを使うことで、組織の効率性よりも個人の効率に注力をしています。
一番簡単な第一歩として、私が経験したのは、あるチームがそのチームが依存しているチームを支援するというものです。
InfoQ: ビジネスニーズを満たすためのスキルが必要であり、そのスキルは組織になく、誰も学習しようとしない場合はどうしますか。
Chris Matts: 常識を使います。同じ程度のリスクのある外国で家を買うのと同じです。
内部の支持者でアジャイルコミュニティをリサーチしネットワークを作ります。ブログや本を読ませます。ミートアップやカンファレンスに行かせます。とくにオープンスペースやワークショップがあるカンファレンスに行かせます。
"思想的リーダー"からの支援を得るのは、リサーチややろうとしていることに対する理解が済んでからです。トレーナーやコンサルタントではなく、実践者を雇いましょう。まずは、何が必要か理解してからです。既存のウォーターフォールのソフトウエアプロバイダに助けを求めてはなりません。
Tony Grout: スキルを維持したいならスキル向上に努めましょう。維持する必要がないなら、契約社員を雇い、段階的かつ速やかにスキルに対するニーズを少なくしていきます。スキルを維持したいなら、そのスキルを活用したい正社員を雇い、そのスキルの必要性について既存の社員に周知します。
Chrisの言う通りで、私もいつも思想的リーダーよりも実践のリーダーを雇ってきました。
InfoQ: アジャイルは規律を持った人に依存していると話していましたね。組織に規律の文化を打ち立てるためのアドバイスをお願いします。
Chris Matts: 望ましい振る舞いを理解しましょう。悪い振る舞いを罰しましょう。良い振る舞いを褒めましょう。
Tony Grout: 良い人は良い人と働きたがるということを理解してください。もちろんそれだけではありませんが、彼らにはどこで働くか選択肢があります。
リーダーシップはこれらの価値を示す必要があります。さもなければ、信用を失います。
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