ソフトウェア業界でより高いレベルの多様性に達するため、自分と似た人ばかりを雇うサイクルを打ち破らなければならない、とBirgitta Böckeler氏は言う。彼女によれば、事はゆっくりと変わっているという。組織は段々と多様性の受け入れに目を向けてきている。世の中にはたくさんの素晴らしい、そして幸せなソフトウェア開発者になれるかもしれない人々が大勢いるのに、彼らはそれに気付くことすらない。
Born for it - How the Image of Software Developers Came aboutという記事で、初のコンピュータは女性によってプログラムされたとBöckeler氏は述べている。
ENIAC - 初期の電子、汎用、デジタルコンピュータの1つ -をプログラムした女性は初のプログラマだと広く認められている。当時は”プログラマ”という言葉やプログラムのコンセプトすらまだ存在していなかった。 6人の女性は(…)ENIACが”計算の計画”を実行するよう”セットアップ”するために雇われた。より具体的には、彼女らは機械に兵器の軌道の計算を教えていた。兵士が現場で使うためである。ENIACの女性は、それまで手動でこれらの計画を計算してきた女性によって採用された。
ThoughWorksのリードコンサルタントでありソフトウェア開発者でもあるBirgitta Böckeler氏は、ソフトウェア開発者のイメージと、これがソフトウェア業界の多様性にどんなインパクトを与えるかをGOTO Berlin 2016で語った。InfoQはこのカンファレンスのQ&A、要約、記事を扱っている。
心理学者のWilliam M. Cannon氏、Dallas K. Perry氏は”vocational interest scale for computer programmers”で論文を発表した。彼らはプログラマのある珍しい特徴を見出した。人より”モノ”と働くことを好み、人に興味がないということだ、とBöckeler氏は言う。良いソフトウェア開発者とはどんな人かというイメージは、1960年代にコンピュータのプログラムのために選考・採用された人々に多大な影響を与えた。Bockeler氏によると、今日の雇用決定は未だに50年以上前に形作られたソフトウェア開発者のイメージに影響されているという。
InfoQはBirgitta Böckeler氏にインタビューを行い、企業が男性を採用し始めた理由、多様性の受け入れでソフトウェア業界にどんな影響があるか、多様性の拡大のために個人は日々の業務で何ができるか、そして組織が多様性をサポートする戦略を持つことでどんな利益を得られるかについて訊いた。
InfoQ: 記事では実は初のプログラマは女性だったと記載がありましたが、その後はほとんど男性がプログラマ職に採用されています。男性を採用する主な理由は何だったのでしょうか?
Birgitta Böckeler氏: 大きな企業が最初にプログラマを採用し始めたとき、良いプログラマにどんな能力が必要かということを実際には誰もよくわかっていませんでした。そのため60年代、企業は才能のあるプログラマを識別する方法として適性試験と性格分析を導入したのです。テストスコアを使うことは客観的ですし、性的に中立に見えます。しかし、これらのテストはうかつにも技能を検査し、男性に有利になるような特徴を期待するものだったのです。1つには、当時はできる女性が少なかった分野である数学問題の比重が重くされてたことがあります。例えば、英国のソフトウェアパイオニアであるStephanie Shirley氏が子供の頃には、高度な数学教育を受けるために特別な許可を取って男子校に転校する必要があったといいます。彼女がいた女子校にはそれがなかったためです。
当時の一般的なセクシズムもまた重要な役割を果たしました。初め、プログラミングは非常に労力のいる機械的な作業でした。それが、ソフトウェアを書くことが思っていたよりずっと科学的かつ知的だとわかった途端、誰ができるかという認識もまたシフトしたのです。
InfoQ: 多様性の受け入れに関する議論は進行中です。このことはソフトウェア業界に影響していますか?
Böckeler氏: とてもゆっくりではありますが、事は変わってきていると思います。多様性に目を向ける企業は段々と増えてきていますし、具体的な数字を出すプレッシャーも高まっています。少なくともいくつか、スピーカーのグループに多様性を持たせるようにしているカンファレンスがあります。
しかしながら、まだ米国以外で状況を理解できるようになることは難しいようです。このトピックに関する入手可能な事実や記事の多くは米国から出ていますので。最近わたしは自国であるドイツで数字を見つけようとしたのですが、ダメでした。わたしの印象では、平均して、現状を変えるために必要な作業を行う意欲はまだあまり多くありません。
わたしたちは今、移行の段階にあること、良くも悪くも意見が上がってくるのは多様性の成長痛のサインで、乗り越えるのに必要な痛みであるということを信じたいです。
InfoQ: 多様性の受け入れを拡大させたいときに、個人は日々の業務で何ができるのでしょうか?
Böckeler氏: シンプルに、多様性とは人材募集、受け入れとは人材確保だとしましょう。
人材募集に関わるとなったとき、自分にバイアスがあると気付いてそれを認めることは非常に重要です。わたしは自己選択と類似性効果の話に出会ったとき、本当に目が醒めるような思いをしました - もし男子が”ただコンピュータの方が好き”でないとしたら?代わりに、彼らが自分と似た人を何度も採用してきたのだとしたら?60年代のあるプログラマの性格分析から始めて、それを継続的に強化してきたとしたら?見るものを変えれば、自分のバイアスと戦えます。ソーシャルメディアではグループや見方に多様性があることを知れます。しかし、意図的にその後の行動を変えたり、techiesproject.comのようなストーリーを探さなければなりません。
多様なスキルやバックグラウンドを持った人材を採用したら、特に従業員は割と均質なままであるうちは、その受け入れが重要となります。多数派とは異なるグループに人を入れるときは、彼らが順応して”なじんで”くれると期待するべきではありません。これは多様性のあるチームを作るという目的を達成できないだけでなく、彼らがそこに根ざす強い文化から自分が外れていると感じ、辞めてしまうリスクが生まれるのです。この職業には自分がやることに非常に情熱的で、そのことに強い一体感を持っている人がとても多くいて、わたしはそれが大好きです。しかし、自分と違う性格、スキル、バックグラウンドを持つ人に正直に心を開くには、自分が浸かっている文化への変化に対して、わたしたち全員がオープンにならなければいけません。これは、今まで作り上げてきたジョークや文化基準など、小さくてバカげているように見えることから始まるのかもしれません。例えば、良いコードを書ける人はみんなスタートレックとスターウォーズの違いを知っているものだと思い込まない、といったことです。
InfoQ: 多様性をサポートする戦略を持つ組織はどんな利益を得られるのでしょうか?
Böckeler氏: 多様性の利点については多くの素晴らしい資料があります。意見や視点の違いは知性と創造性を上げ、イノベーションを生むといいます。多様性のある企業は、業界平均を最大35%超えるパフォーマンスを出す可能性が高いことを示した研究もあります。
特にIT業界において多様性の利点は才能の供給というシンプルな課題にまで及びます。見回せばどこも、企業はソフトウェア開発者の雇用に苦戦しています。わたしは世の中にはたくさんの素晴らしい、そして幸せなソフトウェア開発者になれるかもしれない人々がいると信じているのですが、彼らはそれに気付くことすらないのです。この職がどんなものかという大衆のイメージ(男性で、反社会的で、地下生活をしているプログラマという風刺)と、裏にある”本当のプログラマ”とはどうあるべきという期待とのコンビネーションだと思います。これら2つのベースラインを変えられたら、企業が活用できるような才能あふれる人たちの新しいプールを開拓できるのです。
最後に、これはあまり言われないことなのですが、技術分野における多様性の拡大は行うべき正しいことなのです - 今日わたしたちの生活にある技術の計り知れない影響を考えると、それを作った人がそれを使う人の代表であるということは極めて重大であるのです。
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