スキルマトリックスはチームの自己組織化を支援し、新しいことを学びたいという本質的な同期を生成するのに役に立つ。クロスファンクショナルなチームは実際はどのように機能しているのかを明らかにし、チームの中のボトルネックに対する洞察を提供する。
Co-LearningのフリーランスのアジャイルコーチであるJeremy Naus氏とCo-LearningのファシリテーターでありアジャイルコーチでもあるAnnelies de Meyere氏はXP Days Benelux 2016のセッションでスキルマトリックスの4つのレベルについて話をした。InfoQはこのカンファレンスを記事やインタビューで取り上げている。
セッションのために部屋をチームごとに分割し、それぞれのチームは、XP Daysのウェブサイトを完全に作り直すには何が必要かについて考えるという課題が与えられた。フロントエンド、バックエンド、すべてのサービスを含む完全な再構築だ。すべてのチームは5人で構成される。メンバはそれぞれ、持っているスキルを説明した役割の記述が与えられた。
まず最初のエクササイズで、チームはこの仕事に必要な技術的なスキルを付箋に書き出した。次に8つのもっとも重要なスキルを特定する。この段階で、チームの中でどのスキルがなぜ一番重要なのかという点の議論が起こったが、最終的には合意に達した。
チームはフリップチャート上にマトリックスを作成し、行に各メンバを書き、そして、列にスキルを重要な順に左から右へ配置した。そして、メンバの役割記述に基づいてそのメンバがある特定のスキルを持っている場合にセルにチェックを記入した。これが、ファシリテーターがいう、第一段階のスキルマトリックスだ。
Naus氏とDe Meyere氏は、チームに対して、作成したマトリックスを見て何がわかるかを共有するように求めた。複数のメンバが保持するスキルの重複がある、という声が上がった。また、多くのスキルを持っている1人のメンバがいる、どんな理由であれこのメンバが稼働できなくなるということはリスクだと思われる、という意見もでた。いくつかのスキルは足りていないことも明らかになった。この問題をどのように解決するか、という問いをファシリテーターが投げかけると、トレーニング、ペアを組み、ほかの方法でスキルを獲得する、といった議論が起こった。このマトリックスの限られた情報に基づいて具体的なアクションを定義するのは難しい、という意見が出た。
そこで、ファシリテーターの2人はこのマトリックスに足りていないものを説明した。チェックマークだけではそのメンバがあるスキルの初心者なのか、限定的な経験を持っているのかはわからない。メンバのスキルのレベルを明らかにする必要がある。
第二段階のスキルマトリックスを作るため、チームには、"守破離"に基づいてスキルレベルを設定するという課題を課された。あるメンバが対象のスキルを学んでいる最中なのか、上級者なのか、それとも、達人なのか、それによて、スキルレベルを1,2,3のどれかでスコアリングする。0はそのスキルに対してまったく知識がないということだ。これが、第二段階のスキルマトリックスだ。
スキルレベルを追加することで新しい洞察が得られる。何人かのメンバが同じスキルを持っているが、誰も深いところまで習熟していないということが明らかになった。第一段階のスキルマトリックスはこの情報は得られなかったが、第二段階では明らかだ。第一段階のスキルマトリックスで1つのスキルを持っているメンバが多すぎるということがわかったが、第二段階では1人の熟練者と数人の初心者がいることがわかった。これは良い状況だ。
第三段階のスキルマトリックスを作成するために、メンバがどのスキルを学びたいと思っているかを示すという課題が課された。あるスキルを学びたいと思っていない場合は、0を、学びたいと思っている場合は1を書く。これによってボトルネックが明らかになった、というのがチームの声だ。いくつかのチームではあるスキルが足りておらず、そのスキルを学びたいメンバもいないということがわかった。あるチームには何も学びたくないというメンバもいた。それでもOKだ。
第四段階のスキルマトリックスを作るために、再度"守破離"を使って、チームのメンバが特定のスキルを持っていることについてどのくらい良いと感じるかについて議論した。この議論はチームの持っているスキルについてより深い洞察を与えてくれるが、実際にやるのは怖いかもしれない、とDe Meyere氏は言う。チームが高いスコアをつけて自分たちのできることについて自信過剰になるかもしれない。Naus氏は、この議論は人気投票になる可能性もあると言う。これは、チームのスキルに対する洞察を得るのに役にたたない。
De Meyere氏は定期的にこのマトリックスをチェックするべきだ、と指摘している。例えば、アジャイルの振り返りのときだ。何かが変わったか、チームにどのスキルが必要かを探るためだ。
必要なスキルについての情報として、バックログは素晴らしい情報源です。スキルをチェックし、バックログに基づいて優先順位をつけるようにしてください、とDe Meyere氏は言う。
InfoQはこのセッションのあとに、Jeremy Naus氏とAnnelies de Meyere氏にこのマトリックスを使うことについて、スキルマトリックスを使った学習の増強について、スキルマトリクスがもたらすメリットについて話を聞いた。
InfoQ: スキルマトリックスとは何でしょうか。
Jeremy Naus: スキルマトリックスは、チームがメンバのスキルを理解するのに役に立ちます。列はスキルです。最初の列にはチームのメンバを名前を書きます。行のセルにはそのメンバのスキルに対するチェックマークやスコアを記入します。
Annelies de Meyere: スキルマトリックスはリーンから生まれました。リーンの第一原則は無駄を最小限にすることです。オリジナルの格子("第一段階")では、スキルの重複やスキルのギャップを視覚化してくれます。
InfoQ: クロスファンクショナルなアジャイルチームではこのスキルマトリックスはどのように使えるでしょうか。
Naus: クロスファンクショナルチームがどのようになっているかを明らかにします。完全なクロスファンクショナルなチームになることを阻んでいるギャップがあるかどうかを示します。
De Meyere: スキルマトリックスはたくさんの洞察をもたらします。スキルギャップの特定だけでなく、スキルの重複、特定のスキルの知識の拡大に興味があるのは誰なのか、ある種の仕事で誰がボトルネックになる可能性があるか。このどれもがより良いチームを作るのに役に立ちます。チームの中で誰が、"T-型"や"π-型"の人材なのかを特定するのにも使えます。
InfoQ: 学習を促進するためにスキルマトリックスはどのように使えますか。
Naus: 第三段階のスキルマトリックスによって、ある特定のスキルに対するゴール(より伸ばしていくのか、今のレベルを維持するのか、もはや関心を払わないのか)を明らかにします。もし、あるメンバAがあるスキルXを伸ばしたい、そして、メンバBがスキルXの専門家なら、このふたりを一緒に働かせてAのスキルXを伸ばせます。簡単に言えば、学習を促すためのメンバのマッチングを可能にするということです。
De Meyere: あるチームのメンバがメンターになるのか、特定のスキルを伸ばすのか、という本質的な動機を視覚化し、学習を集中したり別の方法で行うことができます。本当に興味のある人とペアで働くのと、チームの半分が退屈して本当の結果はよくわからないような集まりの違いです。
InfoQ: スキルマトリックスがチームにもたらすメリットを教えてください。組織全体にはどのような利益をもたらしますか。
Naus: 第三段階のマトリックスでは、それぞれのメンバの(スキルに対する)野心を明確に示します。これによって、組織はそれぞれのメンバの志向性を把握することができ、どのようなトレーニングに投資すべきかを決めるのに役立ちます。
組織はすべてのチームのスキルマトリックスを使って、パターンを探ったり、他のチームでよりフィットする人がいるかどうかを見つけることもできます。De Meyere: 組織が受ける恩恵はさまざまです。例えば、新しいチームを雇う場合、空のスキルマトリックスを用意して、チームのメンバが作るべき価値の流れを明らかにします。アジャイルチームを雇うと、新しい次元が手に入るかもしれません。候補者にこのスキルマトリックスを埋めてもらい、それを最終選考に使います。チームをクロスファンクショナルで、学習と成長に前向きで、アジャイルという継続的な改善の環境になるようにするのです。スキルマトリックスにはソフトスキルも入ります。個人的なスキルマトリックスを使って、自信の成長を追跡することもできます。アジャイルのメンバの"あいまいな"キャリアをより具体的にできます。
InfoQ: スキルマトリックスをより具体的に学びたい場合はどうすればいいでしょうか。
Naus: Co-Learningのサイトにthe four levels of the skill matrixという優れた記事があります。
De MeyereXP Days Beneluxのワークショップは、参加者がチームや組織のそれぞれのマトリックスを作れるように設計しました。また、Management 3.0では、Management Workoutのエクササイズの1つとしてコンピテンシーマトリックスを使用しています。 リーンの実践を学ぶときには必ずスキルマトリックスに遭遇するでしょう。
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