Alan O’Callaghan氏がScrum Gathering Portugal 2016で,Jossé Mourinho監督からチーム構築について何を学べるか,というテーマのプレゼンテーションを行なった。サッカーとスクラムの類似性から始まった講演で最初に取り上げられたのは,スクラムの有効性に関わる特性,すなわち,氏によれば,自己組織化チームの構築に対する理解の不足だ。
Scrum Patterns Group (Scrum PLoP)のアクティブなメンバであるO’Callaghan氏はまず,サッカーとスクラムの共通点について説明した。
- 理解の容易な,少数のルールセットを持っている
- コーチを必要とするチームによって行われる
- 成功に到達するアプローチには,ほぼ無限の多様性がある
次に氏は,欧州で最も成功したサッカーコーチであるMourinho氏にとっての“チーム”の重要性を説明した。スポーツ科学を専攻したMourinho氏は,個人のトレーニングを重視した理論を拒否した上で,次のことばが明確に示すように,完全なチーム指向の方法論を独自に開発した。
11人がひとつの目標を追求することは,ひとりで行なう場合とは全く違う,という点を理解しなくてはなりません。
次の話題として講演で取り上げられたのは,Edgar Morin氏が定義した複雑性についてだった。Mourinho氏の友人で伝記作家のLuis Lourenço氏によれば,氏は自身のメソッドにおいて複雑性を取り上げ,具体的な人間活動に哲学の分野からアイデアを持ち出した,初のサッカーコーチなのだという。
Mourinho氏のメソッド独自の特徴として,O’Callaghan氏は次のようなものをあげている。
- トップチームと補欠選手に区別はない。どのプレーヤにも,任意の時点でアクションを求められる可能性がある。
- トレーニングと実際のゲームに差異はない。
- フィットネス,アジリティ,戦術的トレーニング - これらはすべて,トレーニングと呼ばれる単一のアクティビティの一部である。トレーニングに種別はない。個々のアクションはすべて最終的な目標のためのものだ。
- “プレーヤ”は“社会的存在”でもある。
- ... そして,コーチとグループの間に境界はない!
講演では3つの重要な教訓が取り上げられた。
- 世界はそれ“全体”が,複数の“全体”の中心による複雑なシステムである。その相互関係を理解したアクションを基盤とすることが必要だ。
共通の目標が魅力あるものであって初めて,個人の集まりがチームになる。
システムないしプロセスのコンポーネントに注目する場合には,それが存在するコンテキストを強調する形でそれを示すこと。
これらがすべて,サッカーチームおよびスクラムチームにとって行動の指針となる。
Scrum Patterns Groupは,スクラム分野における複雑性操作の次ステップへの進化を支援すべく,イベント(パターン)の順序付けに取り組んでいる。
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