マイクロソフトがクラウドベースの生物学研究ツールをオープンソース化

マイクロソフトのクラウドベースのツールBio Model Analyzerは、生物学者が細胞の相互作用やコミュニケーションのモデル化に使うことができ、MITライセンスでGitHubのオープンソースとして利用できるようになった。

研究者はBio Model Analyzer (BMA)を使用して、健康な細胞と罹患した細胞のプロセスを比較できるコンピュータモデルを作成できる。研究者は、細胞、その内容物（DNAやタンパク質など）、および細胞外成分をキャンバスにドラッグ・アンド・ドロップできる。また、これらのコンポーネント間の関係を描くこともできる。生体システムがどのように振る舞うかをテストして正当性を検証するため、あるいは生体システムがどれほど安定しているかを試験するために、これらのモデルを検証し、見直し、再度検証することができる。

BMAは、システム生物学と、並列ソフトウェアシステムの仕様と検証のために開発された正式な方法を融合している。技術開発のためのCAD/CAMとよく似ているが、BMAは人間とコンピューターとの対話や、薬物の作用や抵抗のような領域における研究をスピードアップするための設計を使っている。マイクロソフトの英国ケンブリッジ研究所のプログラミングの原則とツールグループで働き、生物学のトレーニングを受けているJasmin Fisher氏は、“我々は生物学における日々行われる研究のやり方を変えようとしている”と述べている。

BMAモデルによって、科学者は数百万の遺伝子とタンパク質との相互作用を見ることができるようになる。Ben Hall氏は、英国ケンブリッジのロイヤルソサエティ大学リサーチフェローであり、Fisher氏と共に働いている。彼はBMAが早期にがんを発見する方法を発見する助けになると述べた。また、どの薬が最も効果的か、個々の癌がいつ薬に対して耐性を示す可能性があるかをモデル化することで、癌に対してどのように治療するのがより適切かを把握することもできる。

BMAは、健康な患者の情報とがん患者の情報を比較することによって実験を行うために使用される。BMAにより、患者がどのように薬に反応するかをシミュレートすることができる。人体には多くの変数、多くの分子、タンパク質、遺伝子がある。強力な計算モデルによってのみ、組み合わせをより分け、可能性をテストし、癌が体内でどのように発達し、変化するかを理解することができる。

“実験室でできること以上の可能性をテストできるため、研究を加速できるだろう”とJonathan Dry氏は述べた。彼は製薬会社AstraZenecaの主任科学者であり、彼のチームはFisher氏のチームと協力している。研究者はもう経験に基づいた推測をしたり、好みにって見解が偏ることがなくなるであろう。

BMAによって、よりパーソナライズされた癌治療を患者に提供することが可能になる。人によって、他に病気を持っていたり、治療と干渉する薬を他に服用している可能性がある。このような状況はモデルに入力することができる。“すべての患者が異なり、そこに膨大な異質性が存在する可能性があることを認識させてくれる”とDry氏は述べている。