改善を組織化し本当の学習が生まれるようにするのはマネージャの仕事だ。真の学習のためには未知を受け入れ、自身の知識の境界を超える必要がある。ING BankのLeendert Kalfsbeek氏とDavid Bogaerts氏によれば、アジャイルでリーンな継続的デリバリによって学習能力を高めることができる。
ITマネージャであるLeendert Kalfsbeek氏とリーンとアジャイルのコーチであるDavid Bogaerts氏はLean IT Summit 2017でING Bankでのリーダーシップの旅について語った。InfoQはこのカンファレンスをインタビューと記事でカバーしている。
Lean IT Summit 2017はフランスはパリで3月14日から15日に開催された。
Lean ITは検証済みのマネジメント手法を提供しデジタル社会が職場にもたらす課題を取り組みます。このカンファレンスではIT/デジタルの世界でリーンが次のことをどのように実現するかを探ります。
- 顧客とユーザーをどのように喜ばすか。
- 速度と敏捷さをどのように増強して競争優位を得るか。
- テイラー主義を超えて、どのように顧客や従業員、サプライヤーと緊密に連携するか。
InfoQは両氏にインタビューを行い、ING Bankでのアジャイルとリーン導入の歴史とそこから学んだことについて話を聞いた。
InfoQ: ING Bankにはリーン導入について長い歴史があります。簡単に教えてください。
Leendert Kalfsbeek & David Bogaerts: INGのいくつかの領域には長いリーンの歴史があります。ITに特化すると、約7年前にインターネットとモバイルの部門でのソフトウエア開発に3つのアジャイル/スクラムの試験的導入をしたことで始まりました。私たちの領域(今はオムニチャネルITと呼ばれています)では、アジャイルとリーンは常に絡み合っています。まるで同時に生まれた双子が別々の家族でそうだったような感じです。おそらく呼び名は違うこともありますが、概念と思想は同じなのでしょう。他の業界や自家薬籠していない企業から実装をコピーしようとする時にだけ問題がおきます。
さて、私たちの歴史の話でしたね。最初の試験的導入で成功したあと、アジャイル/スクラムは本当に流行りました。エンジニアは自由を感じ、チームは自分たちで動きアジャイルを導入していきました。課題も現れましたが、全般的にはとてもポジティブな動きで簡単に実現できました。2011年にはアジャイルが私たちを助けてくれるという実証的な証拠に支えられて、ING NLでのソフトウエア開発ではアジャイルとリーンのフレームワークだけを使うという決定をしました。
一方、私たちは次のステップも考えていました。どのようにして干渉を少なくしてチームの自主性を高めるのか、ということです。私たちは再びインターネットとモバイルの領域で実験をしました。この領域ではソフトウエア開発も運用も一つのチームで行なっていたのです。当時はDevOpsチームと呼んでいました。そして歴史は繰り返します。いくつか学習することがありましたが、とても成功したのです。これによって次のステップが生まれました。ING NL全体のIT部門で開発と運用を一つのチームにするということです。2013年には150のDevOpsチームがありました。もちろん、この規模でこのようなことを行えば、ある種の調整の課題が生まれます。しかし、私たちはこれを良いことだと思いました。解決するべき組織の障害に注目が集まるからです。そうなれば解決できます。
しかし、私たちは今、干渉を減らすことの威力を感じています。これによって私たちは次の大胆な一歩を踏み出すことができました。チームに顧客についての深い知識を提供するということです。IT部門のプロダクトオーナーだけでなく、本当のカスタマージャーニーの専門家に、です。これによって、私たちは現在の組織になりました。つまり、カスタマージャーニーの専門家とITエンジニアが一つの小さなチーム(7 +/- 2人くらいの)になり、可能な限り自主的になったのです。BizDevOpsとかEnterprise Agilityという名前で呼ぶ人もいます。私たちは単に"うまくいくモデル"と呼んでいます。少なくとも私たちにとってはうまくいったのです。
この歴史には2つの重要な点があります。
まず、私たちの継続的デリバリはアジャイルとリーンとともに進みました。両方の成功が必要です。
そして、アジャイルとリーンと継続的デリバリは目的ではありません。2010年、オランダで最高のIT企業を作るのが目的であり、私たちはエンジニアリングの優れた文化を作ることに注力していました。アジャイルとリーンと継続的デリバリは単なる必要な手段であり私たちの学習能力を高めてくれるものでした。
InfoQ: リーンの旅の中でどのような問題でつまづきましたか。
Kalfsbeek & Bogaerts: つまづいたことはありません。しかし、たくさんのことを学びました。二つだけ指摘します。
1: 障害の山を見ないこと。山の頂上からの眺めを想像すること。
このような旅では、障害は山積みになります。一つ解決すればまた下から現れます。歩みを進めれば進めるほど、山はどんどん大きくなるようです。私たちが学んだのはこれにイライラすることなく、障害を歓迎するということです。障害はいつでもあります。私たちはそれを見て解決を開始できます。山を見る必要はありません。現在の見通しを楽しみ、その見通しが山の頂点ではどのように改善されるかを想像し、次の障害を皆を巻き込んで取り除くことです。このように考えることでよく眠れるようになります。
2: 広く、の前に、深く
私たちの旅は小さな実験と大きな実験の組み合わせです。新しいことを試してそれがうまくいくか確かめるなら、うまくいく、ということがどういうことなのか、どうしてうまくいくのかを先に進める前に理解しておく必要があるということを、学びました。他の領域に展開する前に深い理解を得たいということです。はじめは、このように考えることでスローダウンしたと感じました。しかし、はじめにしっかりとした理解を持っておくと、その後より素早く展開できるのです。なので、広げる前に深く理解し、速く動くためにスローダウンするのです。
InfoQ: ING Bankでは、どのように継続的改善を組織化していましたか。
Kalfsbeek & Bogaerts: ING Bank全体を代表して発言することはできませんが、OmniChannel ITでは、ある時点で、スクラムはあるレベルしか私たちにもたらしてくれないということがわかりました。私たちは大きく進歩しましたが、それ以上に改善はされませんでした。この状況を評価して気づいたのは、私たちのチームはよくやったが、まだある種の出来事が起きていないということでした。そして、チームが問題ではない以上、問題は私たち、つまりマネジメントであるはずでした。
私たちが気づいたのおは、隔週でチームの振り返りをすることで組織を継続的に改善する、というのは不十分だということでした。必要なのは改善に対する組織的な注力です。全員に文脈を提供することで改善をしようとしました。全体の方向だけではなく、個々人に対して具体的な情報を提示し、それぞれが最良の意思決定を継続的にできるようにしたのです。課題について継続的に対話を行い、PDCAという具体的な方法にしたがって対処をしています。Mike Rother氏のコーチングの型を使った対話は役にたっています。
PDCAは単純そうですが、毎日実践しようとするととても難しいということがわかりました。これをするには助けが必要でした。私たちの古い習慣はゆっくりとなくなって行ったからです。そこで、私たちは働き方のパターンを作りました。それは、課題について話し合い、取り組み続けることを保証し、日々、改善をする人になるためのリズムとルーチンです。
これはとてもシンプルですし、実際にシンプルです。しかし、実際にやってみると大変で多くの障害がありました。しかし、最終的にはうまく動くようになりました。"全てのプロセス、全てのプロダクト、全ての人、全ての日"を改善するというレベルに到達するまでこれを続けるということに決めました。
InfoQ: マネージャや従業員など皆をどのように継続的改善に巻き込んだのですか。
Kalfsbeek & Bogaerts: 実行することによって巻き込みました。話し合いはあまりしていません。実行して結果が出て、本当の学習が行われて、それが、改善の方法自体の改善に繋がるのです。
解決に構造的なアプローチが必要な困難にぶつかったら、正しい解決者(その困難に立ち向かうのが"自然"なポジションにいる人)が担当するようにします。簡単に私たちの改善のフレームワークを紹介し、一人の改善者とそのメンターと一緒にやってみます。
InfoQ: 継続的改善の旅から何を学びましたか。
Kalfsbeek & Bogaerts: 私たちは何も知りませんでした。そして、まだ、多くのことを知りません。しかし、少なくとも私たちは学習しています。何かがわからない状態をもう怖がりません。地中に何が埋まっているのかを明らかにするのは楽しいことです。真の学習は未知から生まれるということを経験したのです。結果を生み出しながら、より良い組織を作っています。
もちろん、これ以外にも多くを学びました。3月14日にパリで開催されるlean IT Summitで発表します。
InfoQ: リーンを導入して継続的な改善をしたいと思っているマネージャにアドバイスをお願いします。
Kalfsbeek & Bogaerts: 自分の能力を構築することです。外に助けを求めるな、ということではありませんが、自分の力でうまくやり遂げるべきです。マネージャは重要なマネジメントの役割である"組織の改善"と"従業員の教育"をアウトソースできません。それをするくらいなら、マネジメントの役割全体をアウトソースした方がいいでしょう。
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