テスタはストーリを共有し、自身の懸念について語ることによって、自らの仕事に対する人々の関心を得ることが必要だ。これからのテストはテスタに対してマーケティア(marketeer)の思考を求めるようになる、とRoise Sherry氏は主張する。そのためには物作り、例えばブログや記事、講演、ビデオなどを作ることから始めて、それを共有する、という方法がある。
Ministry of Testingの創設者であるRoise Sherry氏はEuropean Testing Conference 2017で、“Why And How Testers Should Act Like Marketeers”と題した講演を行なった。このカンファレンスに関してはInfoQのQ&Aやサマリ、記事などを通じて、これまでにもお伝えしている。
テスタは防御的や受動的にならずにストーリを共有するべきだ、とSherry氏は言う。テストは死んだ、あるいはもはや重要ではない、と主張する人々に対して、我々は戸惑い、不満を口にする。しかしテスタとしての我々は、そのような状況に対して何をしているだろうか?外に出て自分たちの懸念について語ること、そのためのエネルギと時間を手に入れることがテスタには必要だ。
Sherry氏は、アイデアの共有と変革のリードをおもな目的とした、Seth Godin氏のマーケティングの4ステップの修正版を公開した。氏のマーケティングに対するアプローチは次のようなものだ。
- アイデアを持つ
- 何かを作る
- 感情が高まって誰かに話す
- 作業する。おそらくは長い時間が必要
- それを進化させる、あるいは先に進む
すべてのアイデアがよい結果を生むとは限らない。
テスタはどうやってストーリを思い付けばよいのだろう?氏が奨めるのは、身の回りで起きていることを見て、そこからインスピレーションを得る方法だ – チームに関心を持ち、サポートし、理解するように努め、ビジネスをサポートすることによってアイデアは現れる。講演の中で氏は、これを実行するための具体的なアイデアをいくつも紹介した。以下にあげるのは、プレゼンテーションからの例だ。
- ミーティングに自分自身を招待する
- 役立つものを探して共有する
- メンバの日常作業を楽にする方法を探す
- 自分がCEOであったらと想像する
- 書き、話す
- 支援する
まずは自分が進むこと、そうすれば他の人が続く、と氏は言う。例えば、自分の目標を達成するために役立つ習慣を身に付ける努力をすることで、自分の価値観を示すことで、他の人たちとつながりを持つことが可能になる。
何を話せばよいのか、何について書けばよいのか分からない、という人もいるだろう。深く見つめればトピックは見つかるはずだ、と氏は言う。出発点はインスピレーションや不満、疑問、ソリューションなど、他にもたくさんある。
氏は、最初に何かを作ること、例えばブログや記事、講演、あるいはビデオなどから始めて、それを共有する、という方法を推奨した。難しいと思うかも知れないが、その場合は、誰か他の人のものに積み重ねる、という方法ならば簡単だろう。
“Webを良心で満たしてほしいのです”と述べた上で、Sherry氏は、テスタは成長の心を持たなければならない、そのための単純かつ賢い方法は優れたコミュニケーションを持つことだ、と示唆した。
講演後のRosie Sherry氏に話を聞いた。
InfoQ: ストーリを語ること(storytelling)は、コミュニケーションの成長にどのように役立つのでしょう?
Rosie Sherry: 私は本当の意味での専門家ではありませんが、それでも言えるのは、コミュニケーションを育てるには、倫理的かつオープンな方法でストーリを共有する必要がある、ということです。これを可能にするためには、人々がそれをしても安全だと思える環境にいなくてはなりません。
人は誰も、自身の人生の異なるステージにいるということを、私たちは往々にして忘れがちです。私自身は記事の公開についてあまり考えていませんが、それが大きな意義を持っている人もいます。私たちは皆、このことに感謝すべきです。
コミュニケーションとストーリに関して、私が重要だと考えていることが2つあります。
- 私たちは皆、共有に値するストーリを持っています – そう思わない人が多いのですが、そんなことはありません。 必要なのは、それをうまく伝えることなのです。
- 私たちは、私たちの語るストーリで互いをサポートしなくてはなりません – 否定的な面や問題点をあげつらうのではなく、よい面を見つけ出すことが必要です。テスタの地位を高め、信頼を構築し、現在よりもよいバージョンになることを支援しなくてはなりません。
InfoQ: 共有できるものを作ることは難しい場合がある、ということを述べられていましたが、自分たち自身でそれを簡単にするために、何ができるのでしょう?
Sherry: テスタはまず、物作りから始めなくてはなりません。実践と発展はすべてそこから始まります。最初は遅いかも知れませんが、何かをつぶやくというのも、何かを作ることです。 そこから積み上げればよいのです。自分の声を持ってください。自分が誰なのか、何を表現したいのかを理解してください。記事を書きましょう。Webサイトを始めるとよいでしょう。製品やビジネスの構築を考えるのはもっと先でよいのです。
私は個人的に、さまざまな場所からインスピレーションを得ています。テストや技術界以外からインスピレーションを得て、それが私たちのいるテストの世界に関連しているかどうかを検討するのです。
ものを作ることには計り知れない価値があります。個人的にも、私たちを取り巻くコミュニティにとってもものを作ることで、積極的に学ぶことができます。リアルタイムで学ぶのです。その上で、フィットすると思われるものを適用すればよいのです。
物作りは大変ですが、テスタが自分自身でものを作る習慣を身に付ければ、テスタ同士の共感と理解が生まれると思います。物作りに成功する、あるいは共有するための魔法の解決法はありません。自らの創造性を育み、他の人たちに自分のしていることに興味を持ってもらうことが必要になります。
InfoQ: テスタが自身の経験を共有して他から学びたいならば、どのようなことをすればよいのでしょうか?
Sherry: テスタは世に現存する技術コミュニティに対して、もっと貢献するべきだと思います。私たちは自分たち自身の小さな世界に閉じこもってニッチなコミュニティに参加しているだけで、現存するハイテク世界での認知度が低いのではないか、と感じることがよくあります。
情報の取得や貢献を始めるには、次のようなものに参加することをお勧めします。
- Reddit: ソフトウェアテストや品質保証、プログラミングなど、さまざまなチャネルがあります。テスト関係の問題について議論や共有を始めるには、自分に関連のあるニッチな部門を探すとよいでしょう。
- Medium: 一般的な認知度を拡げつつあるプラットフォームです。記事を書くか、記事を書いている人を探します。参加して、コメントを書いて、コントリビュートしましょう。
- Quora:ソフトウェアテストに関する質問をする人たちがいますが、多くはあまりよい回答が付いていません。これは私たちテスタの出番です。ぜひ参加して質問し、回答しましょう!
これらに加えて私は、自分でも認めますが、自分の仕事に大きな先入観を持っています。ソフトウェアテストの世界に対して肯定的な態度の人が少な過ぎる、というのが私の意見です。もっと多くの人たちにステップアップしてほしいのです。そのためにもぜひ、Ministry of Testingをチェックしてほしいと思っています。道場(Dojo) (記事やビデオ、30日トライアル、ポッドキャストなど豊富なコンテンツがあります)、Ministry of TestingのSlack、テストコミュニティ一般に関するSlack、さらにフォーラムもあります。これ以外にも各地のテスタたちと協力して、多くの場所でイベントを開催しています。これはすべて、私たちが多くのテスタと協力しながら実現してきたものです。そこでお会いしましょう!
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