Angular 4のリリースを完成したIgor Minar氏とSteven Fluin氏は、ng-conf 2017の基調講演のステージに立ち、Angularエコシステムの現状への注目を呼びかけた。主要な作業の大部分がすでにバックミラーの中となったAngularは、新たな成熟の段階に入ったと言える。
氏らの講演は技術的な進歩よりも、Angularのよりソフトな面の紹介に時間を費やしていた。コミュニティによる貢献を称賛し、賛辞を述べた上で、Minar氏はまず、“なぜAngularを開発するのか?”という質問に回答することで自らの基調講演を始めた。
私たちがしようとしているのは、人々が使いたいと思っているアプリケーションの開発を可能にし、その使い勝手を気に入ってもらえるようにすることです。自らの仕事を愛し、完成したアプリケーションを愛し、生産性の向上を実感してくれるような開発者たちに、このようなアプリケーションを開発してほしいのです。彼らが人々を暖かく迎え入れてくれるコミュニティの一員であることを、私たちは願っています。
コミュニティは成長している、とMinar氏は言うが、既存のAngularJS(1.X)コミュニティから奪ったものではない、真の成長部分がどの程度であるのかを言うのは難しい。次にFluin氏は、先日のStackOverflow 2017 Developer Surveyについて話をした。“StackOverflowの数値によると、回答者の44%がAngularJSまたはAngularを使用しています”、とFluin氏は言う。これは明るいニュースだが、暗い現実もあるようだ。同じ調査では、Angular開発者の48%が“今後も使い続ける意思はない”と答えている。
将来的な開発に関するロードマップの説明で、Minar氏は、現行のバージョンを必要とする人たちのためのサポートを続けながら、一方で進化の必要もあるという認識を示した。
Angularを取り巻くWebエコシステムは静的ではありません。進化しているのです。標準は進化しますし、ブラウザも進化します。Angularはこのような変化をキャッチアップし、順応し、新たに登場するものすべてを利用可能にしなくてはなりません。ただし私たちは、そういった[アップグレードを実施する]自由を持たない人たちがいることも理解しています。
Minar氏は今回のバージョン4について、Long Term Support(LTS)を備えたAngularとして最初のバージョンになる、と発表した。新たに設けられた6ヶ月というメジャーリリースのペースにより、今回のバージョン4は、バージョン5のリリースが予定される2017年10月までプライマリバージョンとなる。その後1年間は、“重要なフィックスやパッチのみがマージされ、リリースされることになります”、とMinar氏は述べている。Angularと自分たちのアプリケーションを定常的にアップグレードできない企業にとって、これは朗報と言ってよいだろう。
Minar氏はまた、メジャーバージョン番号が6ヶ月ごとに増加し続けるということが、必ずしも開発者が年に2回、数多くの破壊的変更(breaking change)に直面するという意味ではないことをコミュニティに伝えている。
メジャーバージョンは、破壊的変更を意味することが少なくありません。ですが私たちにとっては、“たくさんの作業をしたので、検証に余分な時間が必要だ”、という意味に過ぎないのです。私たちにとってメジャーバージョンは、何か素晴らしいことを試みる機会なのです。より優れたアプリケーションの開発に活用できるように、 Angularをさらに良いものにしたいと思っています。それと同時に、アップグレードも非常にシンプルなものにしたいと考えています。メジャーバージョンが大きな障害にはならないように、私たちは、さまざまな取り組みを行なっています。
バージョン5のプレビュー期間はあまり長くないが、Minar氏はその目標として単純化、スピードとサイズの改善、アップデートの簡略化をあげている。例えばコンパイラの改善により、開発/運用が別々であった現行のコンパイルが統一されて、開発と運用の両方で、現在は運用向けのAhead-Of-Timeコンパイラが使用できるようになる。
ng-confはユタ州ソルトレイクシティで毎年開催される代表的なAngularカンファレンスで、全てのセッションのビデオがYouTubeで公開されている。
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