大組織はリーンスタートアップのようになろうとするが、アジャイルな組織となるためには、いかにスタッフを雇い、彼らにインセンティブを与え、マネージするかを考え直す必要がある、とJeff Gothelf氏は述べた。組織はチームに対して、即座に学習して低リスクの決定を下すことに対して報奨を与えるべきだ。また、チームが顧客にとって意味のある変化を与えるものを構築しているかどうか、正しいことを行っているかどうかを、彼ら自身が知ることができるようにするため、デリバリーに加えて学習の価値を高めるべきだ。
作家、コーチ、ワークショップリーダー、パブリックスピーカーであるhref="https://www.infoq.com/jp/profile/Jeff-Gothelf">Jeff Gothelf氏は、Craft 2017でリーンのスケーリングについて話した。InfoQはこのカンファレンスについて、Q&A、要約、記事でカバーしている。
InfoQはGothelf氏にインタビューし、大組織がスタートアップのようになろうとしたときに発生しうる課題や、なぜ組織はデリバリーを通じて学習することに価値をおくべきなのか、大組織における真の実験と学習の文化をいかに築くか、そして謙虚さが十分な注目を集めることをいかに保証するか、について尋ねた。
InfoQ: 大組織がスタートアップのようになろうとするときの課題は何でしょうか?
Jeff Gothelf氏: 沢山あります。これらは私がクライアントと働いていたときに直面したうちのトップ3です。
- 企業の規模のために起こる、「我々は、我々が何をしているかについて既に知っている」という感覚。 アジャイリストがいう「ビギナーズマインド」は多くの企業で失われています。これは本質的に謙虚さを失っているということです。顧客、顧客のニーズ、そしてニーズに対して製品やサービスでいかに応えるかについて学習を止めてもよいという考えは、イノベーションと組織の進歩を奪ってしまいます。
- リスクをとろうとしないこと。ほとんどの企業はイノベーティブかつ最先端であろうとしていると主張しますが、現実ではそうした活動はリスクを伴います。多くのイノベーションプロジェクトは失敗します(あるいは失敗すべきです)。失敗(言い換えると、うまくいかないことを学習すること)は賞賛されないことが多く、時にはペナルティが課せられます。真の実験と学習への欲求がないのでは、ほとんどのイノベーションラボ、社内アクセラレーター、「リーンな」チームは、イノベーションシアターに過ぎません。
- ソフトウェアビジネスの世界にいることに気づいていないこと。レガシーな組織は、技術が工業化を可能にし、バックオフィスの仕事を自動化していった期間に成長しました。Web 1.0の時間枠の技術を新しいマーケティングチャネルとみなし、他にそれ以上の技術をもたない組織もあります。今日、もしスケールしたい、あるいはスケールするよう指示を出したいのであれば、ソフトウェアビジネスの中で一流でなければなりません。このことが意味するのは、企業をマネージする方法を変えなければならないということです。ITはもはやサイロ(たとえば「あそこにいるウェブサイトを作るやつら」)として扱うことはできません。技術はあらゆる仕事に広がっています。人員配置や仕事の割り当て、成功した仕事へのインセンティブ付与の方法が変わります。この気づきは多くの大組織でまれなことです。
InfoQ: これらの課題に効果的に取り組み、スタートアップのように振る舞い始めている大組織の例を挙げていただけますか?彼らはどのようにやってきたのでしょうか?
Gothelf氏: 私が知る限りで完璧に実行している組織はありませんが、Capital OneやING、Barclaysなどの銀行や、その急速な成長にもかかわらずこの精神を具現化しているAmazonなどのデジタルなパイオニアなどの成功例があります。彼らの成長の根源には、世界はレガシーな産業において変革し続けていること、また、デジタルな世界でサービスをいかにデリバリーするかだけでなく、いかにビジネスに取り組むかについて考え直さなければ、徐々に無関係になってしまうということを認識したリーダーシップのマインドセットがあります。INGはHQベースの従業員を雇い、彼ら全員(3500人!)に、職務について再び面接してソフトウェア第一でアジャイルな組織によくフィットするかを確認したという素晴らしい例です。彼らの40%は新しい職務が企業の内部または外部にあることに気づきました。このように、変化へのコミットメントと新しい価値をトップダウンで表明することは成功のために重要です。
InfoQ: 組織はデリバリーを通じて学習することに価値をおくべきだと述べられていました。それはなぜでしょうか?
Gothelf氏: 学習することは、チームが取り組むべきことと、チームが顧客に対して意味のある変化をもたらすものを構築することができたか、あるいはできなかったのかを、証拠をもって教えてくれます。今日、成長とスケールを媒介するのはソフトウェアです。ソフトウェアチームは機能を開発する工場ではありませんし、そのようにマネージされるべきものでもありません。彼らの目標は消費されたコストに応じてソフトウェアを次々と開発することではありません。彼らの目標は、複雑なシステムを進化させ、最適化し続けることです。学習は、こうしたシステムを最適化するための最良の方法をチームに教えてくれます。すなわち、どの機能を追加すべきか、どの機能を再設計すべきか、どの機能を取り除くべきか、顧客に利益をもたらすためにそれらの機能をいかにワークフローとして結びつけるか、ということです。学習することなくデリバリーを最適化することは、慢心、混乱、顧客価値の低下につながります。
InfoQ: 大組織で真の実験と学習の文化をつくるためには何ができるでしょうか?
Gothelf氏: 高ベロシティな意思決定にインセンティブを与えることです。これが意味するのは、即座に学習できることに基いて素早い意思決定を行うことによって、チームは報奨を受けるということです。これにより、彼らはより少ない投資、低いリスクで、容易に方針を調整できるようになります。言い換えれば、デリバリーよりも学習にインセンティブを与えるということです。これが鍵です。
Ash Maurya氏が、彼の新著Scaling LeanのQ&Aで、実験からの学習を可能とするためには、我々の語彙から「失敗」という言葉を取り除くべきだと提案していました。
ブレイクスルーの洞察力は、失敗した実験の裏に隠れていることが多いものです。しかし、ほとんどの起業家は、失敗から逃げてしまいます。失敗の最初の兆候が現れると、彼らは失敗の根本原因について十分な時間をとって深掘りすることなく、急いで方向を正してしまいます。(…)ブレイクスルーの鍵は失敗から逃げることではありませんが(...)妥協を許さず、なぜかを問うことです。「フェイルファースト」のミームは、この感情を矯正するためによく用いられます。しかし、失敗のタブーは根深く(おそらくシリコンバレーを除いてどこにおいても)、「フェイルファースト」という言葉では、ブレイクスルーを得るために失敗が必要不可欠であると受け入れるには不十分なようです。語彙から「失敗」を完全に取り去ってしまう必要があります。
InfoQ: 謙虚さが十分な注目を集めることを組織はどうしたら保証できるでしょうか?
Gothelf氏: これはトップから行わなければなりません。リーダーは、誤ってもよいことを示し、失敗から学習し、それを公に認め、どのような変化があり、それがどんな効果があるかを明らかにする必要があります。これによって、チームはより力づけられ、さらにイノベーティブなソリューションを探し求めるようになります。より重要なことですが、トップから行われることによって、それは企業文化の一部となります。従業員がリーダーに対して、答えの全てを持ち合わせていないこと、または失敗したことについて認めるのが怖くないと感じるようになれば、彼らは勇気をもってそうした行動をとるようになるでしょう。これにより、より素晴らしい探索、実験、そして学習が促進されるのです。
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