Microsoftは今年4月、同社のAzure Internet of Things(IoT)プラットフォームのアップデートを発表した。その中でInfoQが注目した発表のひとつが、Azure Time Series Insight(TSI)の登場だ。このサービスの目的は、ユーザが自身のデバイステレメトリを時系列で検出し、管理できるようにすることだ。
時系列データは製造業や石油、ガス、公益事業、輸送、鉱業などの業界では目新しいものではない。しかしながら、これまでのソリューションは、固定価格モデルに基づいた歴史的技術によるオンプレミスのデプロイメントに依存していた。これに対して、消費価格モデルに基づいたクラウドサービスを使用して、デバイスデータの保存と解析を可能にする機能が注目を集めている。生産管理技術(OT)のコンサルティングファームであるiSolutionsは、クラウドベースのサービスを使用することで顧客が経験したいくつかのメリットとして、次のような指摘をする。
このような [クラウドベースの時系列データサービスという]トレンドの原動力となっているのは、コスト面での理由、クラウドベースの分析機能(クエリのストリーミングと通知、マシンラーニング、クラウドベースのビジネスインテリジェンスなど)の必要性の他、いくつかのケースにおいては、既存のオンプレミスデータ履歴管理におけるパフォーマンス上の制約もあります。
MicrosoftのTime Series Insightsサービスは現在公開プレビュー中で、最近ではRoot Cause Analysisなどの新機能の追加や、Time Explorationのアップデートなどが行われている。
Azure Time Series Insightsでは“SN比”が問題となる可能性のあるような、大容量データの処理が可能だ。同社プリンシパルプログラムマネージャであるOP Ravi氏が次のように説明する。
Time Series Insightsは、数十億規模のIoTイベントを対象とした探索と分析を可能にする、完全にマネージドな分析、ストレージ、可視化のサービスです。当社は製造業や石油・ガス関連のユーザから、根本原因解析と調査に関する数多くの意見を頂いていますが、データの統計的に重要なパターンを短時間で特定することが、これまでは困難でした。このプロセスをもっと効率的にするために、選択したデータ領域において、統計的に最も重要なパターンを明確化する機能を新たに用意しました。これによって、最も多くの時間とエネルギを要しているパターンを理解するために、何千ものイベントを調査する必要はなくなります。
さらにMicrosoftは、これら重要なデータパターンをユーザが直接参照することも、簡単にできるようにした。この機能を使用することで、事後調査において必要となるトリアージ(対応の優先順位付け)時間の短縮が可能になるとMicrosoftは考えている。
Microsoftが注力しているもうひとつの分野は、データ探索をユーザがより詳細にコントロールできるようにすることだ。Ravi氏は次のように説明する。
多くの業界のユーザが、彼らの主要設備から取得したセンサデータに関わる問題のトリアージと診断を支援する手段として、Time Series Insightsを使用しているという声を聞きます。そのようなユーザから、視覚化時の時間のナビゲーションをもっと詳細にコントロールできないか、という要望を受けています。これらユーザにより多くのコントロールを提供して、トリアージと診断を容易なものにするため、時間のナビゲーションに関するユーザビリティの改善を新たに行ないました。
具体的には、時系列データの大きなタイムスライスを行なうために、ミリ秒まで指定可能なタイムインターバルスライダが新たに用意された。さらにデフォルトの開始点が、ユーザが選択したデータの最適なビューを含む位置に設定されるようになった。この機能により、解像度とクエリ速度と粒度のバランスを保ちながら、答を短時間で得ることができるようになる。
Azure Time Series Insightは現在パブリックプレビュー中だが、Microsoft Azureのアカウントを持っていれば、デモ環境にアクセスして、これらの機能を無償で試すことができる。
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