Natureに掲載された論文の中でGoogleは、量子コンピュータが現在のコンピュータを凌駕する計算処理を実行可能であるという、いわゆる量子超越性(quantum supremacy)の主張を実証する計画を明らかにした。計画の鍵を握るのは、量子サンプリング問題を解決するための50キュビットのプロセッサを開発することだ。
量子超越性を実証するためのGoogleのアプローチは、粒子(particle)毎の量子状態を他と独立的に説明することができないという量子システムの性質である量子もつれ(quantum entanglement)を使って、コイントスをシミュレーションすることだ。従来のコンピュータでは、2つの状態のいずれかである粒子50個の取り得る状態をすべて表現するために数百テラバイトを必要とするため、この問題を解決するのは容易ではない。対照的にキュビットでは、両方の状態を同時に、すなわち粒子が存在するかどうかで表現することが可能である。つまり50コインのシステムを、コインにつきひとつのキュビットで表すことができるのだ。
Googleはすでに9キュビットの量子コンピュータによる量子サンプリングを成功させており、現在は50キュビットの量子コンピュータに取り組んでいる、とNews Scientistは報告している。大きな課題はキュビットの増大に伴うエラー率を低くすることで、量子スケーラビリティの主な問題である。Googleは年末までに、2キュビットの正確性が少なくとも99.7パーセントの量子システムの構築を目指している、と同社エンジニアのAlan Ho氏は説明する。
スケーラブルな量子コンピュータを実現する新たな方法を研究しているのは、Googleだけではない。しかしながら、スケーラブルな量子プロセッサの開発は、それ自体が重要な進歩ではあっても、量子超越性の最終的な証拠とはなり得ない。そうではなく、必要なのは、従来のコンピュータでは同じ計算を実行できないということの証明なのだ。量子システムの多くが、そのすべての状態を表現しなくても現行のコンピュータでシミュレート可能であることから、これは簡単な作業ではないと思われる。
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