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革新的信念(Game changing beliefs)は、我々の行動を形成する上で最も強固な壁となる。我々がプロフェッショナルな仕事において取り組むと決めた信念がレバレッジポイント(作用点)だ。組織の文化や行動を変え、アジリティを高めるために必要なのは、そのような信念なのだ。
アジリティの概念は、それ自体が進歩を続けている。チームのレベルでのアジリティは、全員に行動の自由と貢献の機会を提供する。その一方で組織のレベルでは、後戻りの可能なスピードでのマネジメントを可能にする。
Nordeaでチーフプロジェクトマネージャを務めるMorten Elvang氏は、Agile by Example 2017で、革新的発想について講演した。このカンファレンスに関してはInfoQでもQ&Aや要約,記事などを通じて取り上げる予定である。
InfoQはElvang氏にインタビューして、革新的信念とは何か、どのようにして文化や行動を変革し、組織がよりアジャイルになるのを支援するのか、といった点について質問した。
InfoQ: “革新的信念(Game Changing Beliefs)”とは何であって、どのように機能するものなのでしょう?
Morten Elvang: 世界は有用な情報で溢れています。もしもある瞬間に、私たちにとって何が正しいのかを耳にし、それを信じれば、それがレバレッジポイント(作用点)になります – それ以外はすべて同じです。これこそが革新的信念に他なりません。逆の見方をすれば、周りのアドバイスに耳を傾けないために、自分自身で対処できないほど事態を複雑にしてしまうことがあまりにも多い、ということでもあります。
私が聞きたいのは、“あなたの運命を変える何かを選んで信じることができますか?”、ということです。この質問は理にかなっているでしょうか?もしそうであれば、あなたは何を選びますか?
講演では最初に2つの質問をして、最後に次回予告を行いました。
InfoQ: 何かを信じるということが、どのような役に立ったのでしょう?
Elvang: 私が常に心掛けているのは、変革のエージェントとして、責任あるスポンサーからの支援を確保する必要があるということです。明確な権限と確固たる支援を事前に得られていなければ、そのことが変革プロセスの最も大事な時にそれが痛手となるかも知れません。
InfoQ: 講演では、“ほとんどのアイデアは正しくない”という発言がありましたが、これについて詳しく説明してください。
Elvang: この話は、Paddy Miller、Thomas Wedell-Wedellsborg両氏の“Innovation as Usual”から引用したもので、革新的信念の典型的な例です。ほとんどの人たちは、アイデアは素晴らしいもので、たくさんあればあるほどよいと考えているのですが、“Innovation as Usual”で語られているのは、アイデアの大部分は間違っていて、盲目的に進めてはならない、ということなのです。これを基本的な信念として受け入れることで、自身のアイデアを常に疑問視して、それが真実を持っているかどうかを判断できるようになります。ある意味でそれは、リーンスタートアップなどの根拠でもあります。人々が自身のすばらしい – しかし大部分は間違っている – アイデアを守ろうと日夜戦い続けることが、世界中のほぼすべての企業や組織において、非常に強力かつ極めて悲惨な結果を招いているのです。それが本当はどれほど間違っているかが分かった時には、すでに引き返せない状況にあって、結果に直面することを避けたいがためにさらに深みにはまるという、真の悪循環に陥るのです。
InfoQ: アジャイルによって成功のチャンスを広げるには、どのような信念が必要なのでしょう – 何か例をあげて頂けますか?
Elvang: よい質問です。組織レベルのアジャイルで説明しましょう。何かひとつ選ぶとすれば、“最悪のコストは、行なったことのためにできない、あるいはできなかったこと”だ、というものをあげたいと思います。ほとんどの大規模な組織では、あまりにも多くのことが同時進行されています – 意識しないうちに、自然で持続可能な負荷に対して、3倍や6倍のオーバーロードには簡単に達してしまいます。関係者すべてに対する生産性の低下や、生活の質への影響は計り知れません。過負荷であれば、間違いなくアジャイルではないのです。
過負荷への対処は – 過負荷を軽減するのは簡単ですから – 非常に大きな影響力があります。最優先で行なっている、あるいは行なうべき、最も価値のある作業が終わるまで、その他のものはすべて棚上げしておけばよいのです。
InfoQ: 革新的信念は、組織の文化や行動を変える上では、どのように役に立つのでしょう?
Elvang: 革新的信念はメソッドではありません。フレームワークでもありません。それぞれが自由で独立した情報の一片として、簡単にアクセスできて、自由に使えるものなのです。文化や行動という件については、有名なLewinの等式を最初にあげたいと思います。行動とは個人と、その個人のいる環境の関数である、という単純なものです。これによって、行動や文化に対する建設的なアプローチが可能になるのです。
InfoQ: Lewisの等式が革新的信念に繋がっているのですか?
Elvang: 最も深い意味では、そうです。“この考え方は理にかなっているのか?”という疑問において、Lewinの等式はパズルの重要なピースなのです。環境は、ある意味で構造形成行動です。構造とは、例えば壁のようなものです。もしそこに壁があれば、それを信じるかどうかは問題ではありません。壁で頭を打てば、ほぼ間違いなく、けがをすることになります。それとは逆に、もしそこに壁があると信じるならば、それが事実かどうかは問題にはなりません。これが革新的信念(Game Changing Beliefs)です ... 信じるならば、それは存在し、行動を形成する上で最も強固な壁と同じ強さを持つのです。
InfoQ: 人々のベストを引き出したいと願う組織に対して、どのようなアドバイスがありますか?
Elvang: 誰もがお互いに自由に行動し、貢献する機会を与えることです。
一歩引いて見るならば、アジャイルは2つの方向に進化していると言えるでしょう – ひとつは組織の人々とチームに関してです。これがアジャイルの出発点ですし、私がこれまで話してきたことでもあります。その中で新たな点は、アジャイルのプラクティスがさまざまな分野に適用されていることです – そのほとんどは、アジャイルが最初に始まったITの領域とはまったく違っています。これは知識労働を扱う上で、アジャイルがよりよい方法であるからに他なりません。
第2の方向は組織に関するものです – ここでは、後戻りできるスピードでマネジメントする、ということです。オーバーロードが深刻な問題である理由はここにあります。私たちはしばしば – 多くの場合、アイデアの誤りが認識されないことによって – さまざまな分野で深みにはまります。その結果、予期せぬ事態が発生すると – 時間がない、誤った仮定のもとに多くのことがすでに着手されていて、今さら変えられない、などの理由で – それに対応できなくなるのです。
それが組織のアジリティです。
本質的には、チームレベルのアジリティとは、すべての人たちに行動する自由と貢献の機会を提供する、ということです。そして組織のレベルでは、後戻りできるスピードでマネジメントする、ということなのです。
この2つを組み合わせることが、人々のベストを発揮する、組織内で最高のものを引き出す方法として、私が考えているものです。
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