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ディジタル化はもはや止められない – ディジタル化とモバイル化のますます進む顧客にとって、重要なのはディジタルリーダシップの提供だ。Royal Dutch Touring Club ANWBにとってITは、路上支援などの従来サービスに取って代わる、新たなディジタル接続サービスの方向を示すものである。ANWBでは、チームの資金調達方法を変え、優れたプロダクトを市場に投入する責任を負うオーナとしてのチームを実現するために、アジャイルを採用した。
ANWBでオンラインポータルのマネージャを務めるRolf Guldenmundt氏は、Agile Consortium Netherlandsの年次カンファレンスで、同社がアジャイルを導入した経緯について講演した。このカンファレンスに関してはInfoQでもQ&Aや要約,記事などを通じて取り上げる予定である。
InfoQはGuldenmundt氏にインタビューして、ディジタルリーダシップが重要な理由、同社がいかにアジャイルを適用して課題に取り組んだか、アジャイル導入の過程で何を学んだか、などを聞いた。
InfoQ: ANWBとは何で、メンバにどのようなサービスを提供しているのか、説明して頂けますか?
Rolf Guldenmundt: Royal Dutch Touring Club ANWBは、啓蒙とサービス活動のユニークな組み合わせで、モビリティや旅行、レジャーといった分野でのメンバの利益を代表する団体です。そのような活動を通じて、社会の持続可能な発展に貢献したいと考えています。ANWBはその目的と使命、ビジョンに基づいて、モビリティ、休暇、レジャーの世界における影響力、プロダクトとサービス、情報およびアドバイスなどの分野において、幅広い活動を行なっています。
一般にはロードサービスと交通情報で知られていますが、保険や旅行、レジャーや店舗経営といった分野でも活動しているのです。
InfoQ: ディジタルリーダシップがANWBにとって重要なのはなぜでしょう?
Guldenmundt: ディジタルリーダシップはANWBにとって非常に重要です。これはANWBの戦略的ドメインにおいて、今後も引き続き、最良の方法でメンバにサービスを提供し続けるためです。
その一例が、Connected Carと安全運転保証提案です - これらはANWBが今年開発した2つのプロダクトで、どちらも完全にディジタル機器の使用を前提としています。新しいサービスであるConnected Carは、アプリとドングルを組み合わせることで、自動車の健全性をドライバに提供するものです。自動車を始動した時に、駐車料金の課金処理を自動的に停止するようなことも可能です。安全性保証提案では、車内に装着されたドングルの提供する情報を使用して、運転行動に基づいた保険料の割引を行ないます。
路上支援など従来のサービスにおいても、ディジタル化はもはや止められない流れです。従来は道路網に沿って設置されていた緊急電話がなくなった、という事実からもこれは明らかです - 故障時に100パーセントのディジタル通知が可能な、最新のアプリケーションに取って代わられたのです。レジャーや旅行の分野でも、サービスのディジタル化はすでに幅広く利用されています。400万人を越えるメンバがディジタルサービスやモバイルをますます多く利用しているため、正しい方法でディジタルリーダシップを示すことが重要です。ANWBが信頼できるブランドであることは、彼らがメンバである理由のひとつなのですから、この点について、私たちには責任があります。
InfoQ: ANWBではどのようにアジャイルを適用しているのか、例をあげて頂けますか?
Guldenmundt: ANWBがアジャイル活動の広範なロールアウトに着手したのは4年ほど前です。最初はITからでしたが、今では他のビジネスラインでもこのメソッドで作業をしています。
ANWBでは、Spotifyのようなアジャイルフレームワークを直接コピーするのではなく、アジャイルな方法でアジャイルを導入することを選択しました。アプローチとして採用したのは、特定のアジャイル方法論で説明されているルールに完全に則るのではなく、IT従業者や管理職、ビジネスステークホルダの間から支持と熱意を生み出して、長期的な目標に重点を置く方法です。アジャイルへの移行においては、ツーリングよりも仕事の文化を強く意識しています。
移行期間中、ANWBでは当初、外部のアジャイルコーチによるサポートを受けていました。2年目には、その外部コーチの役割を社内コーチに置き換えました。さらに今年はProduct Owner Excellenceプログラムを開始して、ステークホルダ管理(特に複雑なビジネスチェーンにおいて)とバリューマネージメントの改善に注力しています。
2年前からは別のワークグループによって、アジャイルチームに資金調達する新たなモデルの確立にも着手しています。このワークグループの目標は、プロジェクトの資金計画に関するソリューションを見出して、管理面での負担を軽減することにあります。アジャイルチームの資金調達に関するこの新手法が、当社のアジャイル移行において、次の重要なステップになるのです。この新たなモデルで私たちが最初にしたことは、従来のポートフォリオ計画をすべてのアジャイルチームにプロットする作業でした。その次には、ビジネスラインによってチームをクラスタ化しました。結果的に生まれたのが、各アジャイルチームに対するメインスポンサです。このモデルのサポートを確立する上で重要なのは、上級マネジメントによるプロセス全体へのタイムリな関与です。単純なボトムアップやトップダウンではなく、相互理解を得るためのコラボレーションが必要なのです。営業部門、管理部門、IT部門とともに従来の予算システムの懸案事項を議論し、私たちの夢と懸念について説明し、アジャイルチームのビジネスと資金管理に関して私たちが目指す、新しい価値感と前提とを定義しました。これらの価値観を用いて、プロジェクト単位であったこれまでのチームの資金調達を、専任のチーム資金部門に統合したのです。
InfoQ: アジャイルを採用する上でどのような課題があって、どのように対処したのでしょう?
Guldenmundt: この3年間、さまざまな領域で数多くの問題に出会いました。重要なのは、それまでと違う管理方法を適用する(そして古い報告システムを放棄する)というのは、誰にとっても簡単なものではないということです。
ANWBは元々が協会であって、本当のIT企業ではありません。しかしITは、私たちの従来のサービスに急速に取って代わっています。当初はコスト項目として認識されていたものが、現在では多くの部門やサービスにおいて重要な部分となり、市場やメンバからの疑問に素早く対応することが求められています。このためには、従来とは違う管理の方法が必要です(資金調達に関する先程のコメントも参照)。その一方で、ANWB(135年)のような古い企業は、これまでの長い歴史にも対応する必要があります(会社の企業沿革を読んでみてください)。企業のルーツを変えるのは簡単ではないのです。老木からニンジンを引き抜こうとしてもうまくは行きません。この状況に機敏に(アジャイルに)対処して、組織のコントロールを(可能ならば古いシステムを使って)違う方法に変えるための選択肢を見つけることが必要です。私たちが遭遇する課題に人々を巻き込んで、どうすれば新たな一歩を踏み出すことができるのかを一緒に考えるのです。ここでのキーワードは理解と信頼です。
もうひとつの課題は、チームの責任に関する転換です。私たちはアジャイルチームを、従業員のチームからオーナのチームに変えることを目標にしています。このためには従業員に対して、通常であれば持たないような考え方を求めることになります。労働市場における人手不足もこれに拍車を掛けるため、結果として外部スタッフが(一時的に)多数登用されています。この変化を私たちも受け入れなくてはなりませんし、彼らも責任を正しく取らなくてはなりません。これが意思決定の自由と独立性を意味することは確かですが、同時に責任も重くなります。もはや自分の能力内で個人として行動したり、あるいは自分のタスクだけを行なうのではなく、チームメンバとして行動し、優れたプロダクトを市場に投入して生き生きと輝かせるためであれば、どんなことでも行なわなくてはなりません。多くの企業を見て分かるのは、チームをまとめる上で、スキルよりも態度や行動が重要であることです。ANWB内では、アジャイルチームに期待されるものを正確に記述したドキュメント(行動規範の一種、いわゆるコードイエロー)を用意しました。このドキュメントでは、私たちがメンバに期待する変革のための行動と責任、提供する価値について(“自分の仕事の結果に責任を持つ”、“簡略化と改善に絶えず努める”、“うまくいかなければ、新たなソリューションに取り組む”というように)説明しています。これはチームの発展と成長において非常に有効であるだけでなく、社員採用と教育にも役立っています。
InfoQ: アジャイルを導入する過程で、どのようなことを学びましたか?
Guldenmundt: 次のようなことです。
- モデルはあくまでモデルであって、現実とは違っている場合が少なくない。
- 見過ごすことを覚えなくてはならないが、それは組織の中核や文化に触れる(ルーツを考える)ことでもあり、必ずしも簡単ではない。
- いきなりすべてを変えることはできない。信頼に基づいて少しずつ進み、あなたが手にしているものを使う方法を学ぶことだ。
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