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英国の放送局ITVで共通プラットフォームチームを率いるTom Clark氏が2月のDOXLONで講演し、自主性(autonomy)と熟達(mastery)と目的(purpose)に関するDan Pink氏の原理に基づいて、英国最大のメディア企業のひとつであるITVで幸福感と意欲に満ちたチームを作り上げた自身の経験を語った。講演で氏は、ハイパフォーマンスは幸福なチームを作り上げることの副作用である、という仮説を提案し、その立証を試みた。Way to GoのCEOで、2016年の書籍“An Everyone Culture: Becoming a Deliberately Developmental Organization”にも寄稿しているAndy Flemming氏は、先日のAgile Uprising Podcastとのインタビューで、個人の学習や成長、幸福を重視する文化の構築によって企業が享受することのできる、ビジネスおよび戦略上のメリットについて、自身の見解を語っている。
Clark氏は、幸福でハイパフォーマンスなチームを実現する手段として、自主性と熟達と目的を意図的に重視することによって個人の卓越性を引き出す、というDan Pink氏の戦略を用いた、ことを説明した。講演の中で氏は、ハイパフォーマンスチームの雇用と実現に関する独自の方程式を披露している。
環境 + 人々 (賢明さ + 適合性) + リーダシップ (自主性 + 熟達 + 目的) = ハイパフォーマンス = 幸福な人々
ここで言う“環境”についてClark氏は、集中した作業に適した静かな場所、苦痛のない企業技術、ハックデーのようなイベント、健康要因といった“衛生要因”に関するものだ、と説明している。賢明で親切な人を見つけることが、自身の採用アプローチの大きな部分である、と氏は言う。チームに適合する能力を氏は“適合性”と定義し、“才能豊かな変わり者”の採用を避けるように警告している。また、“賢明さ”については、“チェックボックスの長大なリスト”を望むのではなく、変化に適応する能力として説明している。さらに氏は、急速に変化する最適技術を追い求める上で、個人の学習能力を重視することのメリットについて、次のように述べている。
“私たちはみなテクノロジに従事しています。テクノロジは極めて急速に変化します。賢明さがあれば、それに追いつけるでしょう。つまり、人を雇うとき、PuppetやChefを知っていれば教えられるので、それを知っているかどうかは重要ではない、ということなのです。長々としたチェックボックスのリストで選ばないでください。”
“An Everyone Culture: Becoming a Deliberately Developmental Organization”では、“成長したいという、人の最も強いモチベーションとより深く結び付いた時に、組織は最も成長するという、単純だが急進的な信念に基づいて構成された”企業の説明を通じて、DDOの概念を紹介している。組織は学習、成長、包括、発展に意識を集中すべきだ、とDDOは主張する。Agile UprisingとのインタビューでFlemming氏は、個人の成長を意識した文化を構築することによって達成されるビジネス上のメリットについて、次のように説明している。
伸び伸びと成長できる文化があれば、それはすなわち、適応性を要する課題に対処可能な文化を持つことになります。これは多くの組織が直面している課題のひとつであり、成長する考え方を持つことで対処可能な、複雑であいまいな課題なのです。
DDDは、学習の焦点を組織内の特定のグループではなく、組織全体に拡大する上で有効である、とFlemming氏は言う。20世紀には“高い潜在能力を持つと考えられた少数の社員”の学習への投資が奨励され、対象を限定した教育が提供されていたため、その他は偶然的な学習を通じて成長するのみだったが、21世紀に競争力を維持するためには、“経営幹部、最前線の人々、その中間にいるすべての人たち”を含む、あらゆるレベルの社員の成長を意図的に目指す必要がある、と氏は述べている。
DDOの言う“意図的な”部分は、幸運による学習を越えて然るべきものです。人々がより高いレベルの調整とサポートを毎日体験できるような組織環境を目指すべきではないでしょうか。
ワークショップに参加した人々をインタビューすることで、役割や複雑な立場になるような偶然の出来事が、個々のキャリアにおいて重要な転機になることが多いと分かった、と氏は言う。
ほとんどの場合、そのような経験は偶然の産物であり、唐突に訪れた状況なのです。これを少し紐解けば、成長経験を可能にする共通の要因のあることが分かります。彼らはより高いレベルの課題を突き付けられることで、自身の快適ゾーンから踏み出します。それと同時に、これまで以上のサポートも受けています。少なくともひとりの人物、あるいはグループがあって、あなたを信じ、あなたをサポートし、あなたを励まし、ある時にはあなたの手を取ってくれるのです。
自主性と熟達と目的について説明としてClark氏は、ITVが意思決定の自主性を提供し、熟達への過程をサポートし、目的意識を刺激することによって、チームの成長を意図的に実現している状況を詳しく説明した。自律性について氏は、次のように述べている。
賢明で適合性のある人を雇用し、賢明で適合性のあることをさせてください。マイクロマネージメントをしてはいけません。信頼することで、信頼を得るのです。多くを指示するのではなく、“何をするのですか?”と聞きましょう。地図とコンパス、目的地を与えてください。彼らは自力で到達し、達成感を得るでしょう。あなたの予想しなかった工事や雪に見舞われたとしても、彼ら自身で回避してくれます。
Clark氏は熟達について、“トレーニングやプラクティスを通じて、何かについて秀でたものになる”能力である、と説明している。個人は仕事を通じて自身の能力を試されることを望む一方で、仕事が退屈ではないが、“対処しようとして燃え尽きてしまう”ほど難しくもないという、Goldilocksレベル(安住できる領域)の存在も同時に求めている、と氏は言う。これらの課題は、“彼らを成長させ、考えさせる上で、相応に難しいもの”でなければならない。それによって“新たなスキルを学んだり、新しいコンタクトを得られるかも知れないのです。”、と氏は説明する。組織と個人、双方のメリットとして、氏は次のように述べている。
結果としてその日の終わりに、仕事も終了し、個人としても成長していることです。
透過的なDDO文化を創造する上で重要なのは、“同僚がお互いを実際にサポートできるように、リスクや弱みを公にすることを容認”できることだ、とFlemming氏は説明した上で、“誰もが隠れずに前に出られるような、安全かつ厳しい職場を作り上げる”ことを提唱する。
ハイパフォーマンスなチームについてもClark氏は、安全と学習が中核的な属性である、と述べている。解雇を心配することなく、“知らない”あるいは“間違った”と言えることが必要だ、と氏は言う。
間違いによって被った大きな損害は高い勉強代です。解雇してしまっては、それを活かすことはできません。
Flemming氏は、組織における“成長文化の展開を知る上でのMRI”となる、DDO成長カルテの指標について説明している。ここで疑問になるのは、“問題に貢献したものが何であるか”について、リーダが理解しているかどうか、ということだ。リーダの脆さは“組織の他の部分の脆さに大きく影響している”、と氏は述べている。
QCon London 2018のパネル“leading great engineering cultures”でも、Clark氏を含む何人かのリーダが、進歩的な成長の文化を持った組織の創造について語っている。さらに氏は、製品とチームへのフィードバックにデータ駆動アプローチを取り入れて、学びにつながったデータのトレースを可能にすることが重要だとも語った。
Flemming氏は、組織のあらゆるレベルにおける透明性とサポートという共通のテーマで、DDOにまつわるさまざまな逸話を紹介している。氏は認知バイアスと限定的な仮定が、しばしば成長や組織的変容に立ちふさがっていることを発見した。さらに氏は、制約的プロセスを打破して科学的手法やオープンフィードバックの採用を可能にし、仮定を継続的にテストして組織全体が成長する上で、“開放的構造”を作り上げることの重要性についても説明している。
Clark氏は最後に、ITVのチームがハイパフォーマンスを達成した裏には、幸福なチーム創造の重視があったとして、自身の講演を締め括った。さらに氏は、ハイパフォーマンスを実現できた理由としての7つの特性を定義した。
- 認識(Awareness): “自身と周りのチームのスキルと能力を知ること。”
- 決定性(Decisiveness): “意思決定し、状況が変わるまでそれに固執すること。”
- コラボレーション(Collaboration): “私たちは単なる部分の集まり以上のものであるから、密接に協力し合うこと。”
- 専門知識(Expertise): “要件を十分に満足するものを作り出すべきである。高品質は何よりも優先する。彼らがやると言っていることが、私たちのやるべきことだ。”
- 効率性(Efficiency): “効率的であること ... 実行するまでは、必要のない可能性がある。”
- 取り組み(Engagement): “ハイパフォーマンスなチームに仕事を任せたい。”
- 整合性(Alignment): “全体の中の自分の位置は、自分が知っている。自分がチームのどこに収まるかを知っている。チームが部門に、部門が企業に適しているのであれば、ほぼ同じ方向に進んでいると言える。”
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