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2018 Haskell User SurveyではHaskellのセキュリティ、品質、信頼性、保守性、高度な機能に対して非常に高い満足度が示されていると、FP CompleteのCEOであるAaron Contorer氏は記している。InfoQは今回、Haskellの現状と将来への展望について、氏と議論する機会を持つことができた。
2015 Haskell User Surveyから3年を経て実施された今回の調査は、改善を評価するためのベースラインの提供を目的としている。調査から得られたいくつかのハイライトを紹介すると、
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Haskellコミュニティは、これまでの“科学者オンリー”による評価から、さまざまな方向に視野を広げて、プロジェクトを重視し始めている。
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多言語プロジェクトのみでなく、エンドツーエンドの完全なソリューションの記述でもHaskellが使われ始めている。
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Haskellコミュニティは極めて協力的であるという評価を受けている。
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特にフィンテックや小規模ネットワークセキュリティ、電子商取引の分野において、Haskellのコマーシャル環境における採用が増加している。
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ツーリングは過去3年間で大幅に改善されており、StackやCabelといったツールが、採用ユーザのおよそ80パーセントに利用されている。
InfoQはFP CompleteのCEOであるAaron Haskell氏と、Haskellの現状や将来への展望について話す機会を得た。
Hakellはこの3年間、学術的プロジェクトと商業プロジェクトの両方において、よりよい選択肢となるための長い道程を歩んできました。Haskellが改善されて、今後さらなる採用を促進する上で重要な役割を果たしてきた、あるいは果たすことができるであろう領域をひとつ取り上げるとすれば、それは何でしょうか?
Haskell User Surveyの結果からは、強力なツーリングが鍵であることが分かっています。3年前の時点でも、言語と再利用可能なオープンソースライブラリにはすでに定評があったのですが、マシンのセットアップやプロジェクトで使用するすべての再利用パッケージの更新が大変な作業であることが、調査によって明らかになりました。対策としてstackと呼ばれるオープンソースプロジェクトが発足し、これらの問題が解決されたのです。今回の調査では、対象となったHaskellユーザの80パーセントがstackを使用して素晴らしい成果を得ている一方で、他のユーザは既存ツールのcabalによる同様の改善に満足している、という結果が出ています。ツーリングは“改善が必要”な分野のトップから、開発でHaskellを使用する上での成功分野になったのです。
FP Completeは、開発プラットフォームとしてのHaskellの成長にどのような貢献をしているのでしょう?
当社のミッションは、優れたITエンジニアリングツールとメソッドの採用を広く推進することにあります。そのために当社では、実際に適用されるコマーシャルなセッティングに焦点を当てています。具体的にはHaskellのツールやトレーニング、DevOps、監査、品質保証といった部分です。可能であれば、コンパイラのGHCなど、コマーシャルユーザのニーズに合致した既存のオープンソースプロジェクトにもコントリビュートしています。あるいは当社がstackやintero、yesod、その他の重要なHaskellパッケージにおいてリーダの役割を担っているように、必要に応じて新たなプロジェクトを立ち上げています。
商用目的のHaskellエンジニアリングプロジェクトに幅広く触れることで、当社は、有用な開発プラクティスを絶えず開発しています。その成果をfpcomplete.com/blogやオープンソース開発、当社のウェビナやカンファレンスでの講義、企業向けトレーニングクラスなどを通じて、コミュニティに紹介しているのです。さらに当社は、(開発プラットフォームや継続的インテグレーション、信頼性の高いクラウドデプロイメントのための)非常にパワフルなDevOpsや、(医療機器や暗号化などの重要なプロジェクトのための)極めて厳格な品質監査を提供してきました。
当社はまた、スケーラブルなコマーシャルプロジェクトを提供するための、パワフルな応用エンジニアリングに注目しています。このプロジェクトでは、すでにHaskellに組み込まれている、数十年にわたる基本的な言語の革新的開発を補完することを目的にしています。どのような言語コミュニティでも、可能な限り最高のコア言語とコンパイラの設計を重視する人たちと、実用的なツールやデプロイメント、品質保証などの開発に重きを置く人たちという、両方の部分が必要です。
可能であれば、当社での開発成果を再利用可能なIPに転用して、オープンソースあるいはクライアントに広く公開するようにしています。Haskellチームは多くの仕事を抱えている場合が多いので、必要であればカスタマイズやカスタムエンジニアリングを提供して、彼らの作業を支援しています。
今後のHaskellにおいて主な改善点となるのは何でしょう、あなたの意見をお聞かせください。
最近では物流やロボット、ブロックチェーン、ネットワークセキュリティなど、以前よりもはるかに多くの産業でHaskellが使用されているのを目にするようになりました。一方で、これまでの主流であった医療機器や金融技術といった分野でも、引き続き成長が見られます。解析やスケーラビリティ、ドメイン固有言語、高度な信頼性といった長所によって、Haskellはオペレーションやデータ解析には非常に適したものになっています。今後はクラウド上での、複雑なマルチソースのデータセット解析の分野で大幅に成長して、Hasekellやその他のさまざまな言語で記述された多数のクライアントに対して、財務やヘルスケアといった分野でコアとなるデータサービスを提供するようになると予測しています。
Haskellの技術はすでに極めて強力で成熟していると、ユーザは明言しています。当面の最大のニーズは、初心者や中級者のための教材を強化することです。Haskellは、理解できれば必ず好きになるのですが、その理由をすべての同僚に説明する時間がないという声が多いのです。これはコミュニティが行うべき役割だと思っています。有用なテクニックやベストプラクティスをブログなどで広く公開したり、実際の開発に踏み込んで作業を促進できるような、実用的なツールに貢献していきたいと思っています。それと同時に、活気あるHaskellのオンラインコミュニティでは、優れたボランティアア教育者の多数の参加を求めています。
FP Completeは今後の目標として、ツールやトレーニング、コンサルティングを通じて、Haskellのコマーシャル分野での採用拡大をあげている。
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