Googleは、Android Oreoの後継バージョンであるAndroid Pieをリリースした。ディスプレイカットアウトをサポートし、Neural Networks API 1.1、Magnifierウィジェット、Adaptive Battery、Slice、Wi-Fi RTTによる屋内測位などの機能を提供する。
Neural Networks API(NNAPI)は、モバイルデバイス上でマシンラーニングの計算操作を実行するために、TransFlow LiteやCaffe2など、マシンラーニングフレームワークのためのベース層を提供するように設計されたAPIである。そのNNAPIがアップデートされて、DivとSubという要素間数学演算と、 BatchToSpaceND, SpaceToBatchND, Squeeze, Stride Slice, Transpose, Pad, Meanという配列演算という、9つのオペレーションのサポートが新たに追加された。
Sliceは、Google Searchアプリ内やGoogle Assistantなどの他の場所からアプリ上に、リッチで動的、インタラクティブなコンテントを表示することの可能なUIテンプレートである。フルスクリーンのアプリエクスペリエンスを越えたエンゲージメントを実現することによって、ユーザによるタスクの実行を支援する。
Adaptive BatteryとAdaptive Brightnessは、マシンラーニングを活用した2つの新機能である。Adaptive Batteryは、Doze, App Standby, Background Limitsに最適化されたアプリが適切に動作するように、マシンラーニングを使用してシステムリソースの優先順位を決定する。Adaptive Brightnessは、さまざまな条件に基づいて、一日を通してデバイスの明るさを調整する方法を学習する。例えば、デフォルトの設定より低めの明るさを好むユーザは、最初に手動でそれを設定しておけば、時間の経過とともにAndroidが学習して、よりよい自動設定を習得する。
マシンラーニングを利用したもうひとつの機能がApp Actionsだ。Googleによると、App Actionsを使うことで、アプリの可視性を高めることができる。アプリがユーザのニーズを満足する手段として推奨されている。
Android Pieには、カメラとスピーカのためのディスプレイカットアウトを備えた、最新のエッジ・ツー・エッジスクリーンのサポートが加わっている。新設されたDisplayCutoutクラスは、コンテントが表示されない非機能領域を見つけるために役立つ。ドキュメントをチェックすれば、カットアウト領域を管理する方法を学ぶことができる。
Notificationにも一連の機能強化が行われている。会話を表示したり、写真やステッカを添付したり、さらにはスマートなリプライを提案することも可能だ。Googleによれば、ML Kitを使ったスマートなリプライ提案が間もなく可能になる、ということだ。
Magnifier(拡大鏡)は、テキスト選択のユーザエクスペリエンスを改善するウィジェットである。テキスト上にドラッグ可能なペインを通じて拡大されたテキストを表示することで、カーソルの正確な位置決めやテキスト選択を支援する。ウィンドウにアタッチされているすべてのビューで、Magnifierウィジェットを使用することができる。
2つ以上の物理的カメラから、同時にストリーミングできるようになった。開発者の立場からは、ズームやボケ、ステレオビジョンといった、単一のカメラでは不可能な新機能の開発が可能になる。さらに、ディスプレイベースでフラッシュをサポートする新たなAPIや、最初のキャプチャでの遅延の低減に有効なSessionConfigurationが用意されている。
Android Pieには統合化指紋認証ダイアログや、機密性の高いトランザクション用の高精度なユーザ確認など、新たなセキュリティ機能も追加されている。開発者が独自のダイアログを構築する必要はなくなり、BiometricPrompt APIを使って標準のシステムダイアログを表示することが求められる。さらにこのAPIでは、顔認証や虹彩認証もサポートしている。詳細はSecurity Updatesのページを参照して頂きたい。
Android Pieでは、DNSサーバでサポートされている場合のTLS over DNSなど、プライバシが大幅に改善されている。さらに、マイクやカメラ、およびSensorManagerのすべてのセンサに対して、アイドル状態のアプリからのアクセスが制限されるようになった。
Dynamics Processing APIは、サウンドのダイナミックレンジプロパティのイコライジングや変更を行うオーディオエフェクトで、均等化(equalization)、マルチバンド圧縮、リミッタなど複数のステージで構成されている。オーディオアプリはこのAPIを使用して、Androidデバイスから出力されるオーディオを修正したり、リスナや周囲の環境に対して最適化することが可能だ。
Wi-Fi Round-Trip-Time(RTT)を使用した屋内測位機能の開発が可能になった。RTT APIを使えば、1~2メートルの精度でデバイスの位置を計算することができる。この精度を利用して、建物内のナビゲーションや、話者を特定した音声制御のような詳細なロケーションを意識したサービス、およびロケーション依存情報といったユースケースのサポートが可能になる。
Android Pieへのアップデートを受けるのは、当初はPixelのみである。ベータプログラムに参加したSony Mobile, Xiaomi, HMD Global, Oppo, Vivo, OnePlus, Essentialなどのデバイス、および認定済みのAndroid Oneデバイスについては、秋の終わりまでにこのアップデートが届く予定だ。
新しい機能とAPIの完全なリストについては、Andorid Pie機能概要を参照して頂きたい。
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