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宇宙空間のディジタルディスラプション - 人工衛星による高速インターネットアクセス

原文(投稿日: 2018/08/02)へのリンク

人工衛星は農村部や航空機からのインターネットアクセスを可能にし、インターネットサービスプロバイダにコアネットワークを提供する。電気推進(electric propulsion)やディジタル化といった宇宙技術のイノベーションはテレコミュニケーションに革命を起こし、SpaceXのような新規参入企業は打ち上げコストを低減する。これらの開発によって、新たなサービスの提供と既存サービスのコスト低下が可能になるのだ。

衛星産業協会(Satellite Industry Association/SIA)は、農村部のブロードバンドカバレッジについて証言している。会長のTom Stroup氏が言う。

衛星通信サービスは、21世紀のブロードバンド機能を米国全体に行き渡らせる上で、重要なポジションにいます。これらのサービスは、国内の農村部や僻地など、地上サービスの配備が経済的ではない地域に対して、地上サービスに匹敵するスピードと価格を備えたブロードバンドの提供を可能にします。

Wall Street Journalによると、航空会社と航空機メーカ、通信プロバイダ、機器サプライヤが、高速化とユーザエクスペリエンス向上による航空機のインターネットアクセスのアップグレードを目標とした協業を行う計画である。

世界中のモバイル通信事業者が、航空機のキャビンにサービスを直接拡張できるようになります。これによってユーザは、自身の携帯電話やタブレットなどのデバイスを、飛行中もシームレスにWebに接続することが可能になります。

提案者の想定どおり、現在Wi-Fiスポットを地上で使用するのと同じように、一連のデバイスを使って、さまざまなモバイルネットワークを使用できるようになるのです。接続速度は最速のケーブルアクセスに匹敵し、米国内の商用第5世代、いわゆる5Gセルラーサービスの展開で期待されるものと同じレベルです。

欧州宇宙機関(ESA)では、多数の国の人工衛星によってインターネットアクセスを実現する、としている。

多くのインターネットサービスプロバイダが、人工衛星を使ってインターネットのコアに自身のサーバを接続しています。非常に強力なブロードバンド衛星が実現すれば、ユーザ自身がブロードバンド双方向衛星端末を装備して、地上ノードからの距離に影響されずに、インターネットにアクセスできるようになります。

SESの戦略開発責任者であるChristophe de Hauwer氏は、 Spark the Change France 2018で、宇宙空間におけるディジタルディスラプション(digital disruption)について講演した。InfoQではこのイベントについて、記事やサマリ、Q&Aでお伝えしている。

宇宙産業と人工衛星の市場、宇宙技術のイノベーションがテレコミュニケーションに革新をもたらしている状況、航空宇宙、防衛およびテレコミュニケーションにおける機会について、de Hauwer氏にインタビューした。

InfoQ: 宇宙産業や人工衛星の市場はどのようになっているのでしょう?

Christophe de Hauwer: 宇宙産業は活況を呈しています。Morgan Stanlyによると、世界の宇宙経済による収益は、現在の3,500億ドルから、2040年には1兆1,000億ドル以上に達すると予測されています。

この驚異的な成長は、インターネット接続に対する需要の爆発的な高まりによるものです。世界のIPトラフィックは、2010年から2040年にかけて毎年20%のペースで増加すると予測されています。これによれば、2040年には毎月5兆ギガバイトが使用されるようになります。

需要が爆発的に増加する一方で、現在でも40億近い人々がいまだオフラインのままであって、インターネットのもたらす機会や進歩のない生活をしていることを忘れてはなりません。これは20年後ではなく、今、解決しなければならない問題です。

衛星技術は、爆発的な需要と未接続地域の接続という、2つの問題に対する回答の中核をなすものです。人工衛星は、常時接続、高性能接続というユーザの要求を満足させる上で重要であると同時に、サービスの不十分な、あるいは提供されていない人たちに接続性を提供する上でも、不可欠な役割を果たします。

InfoQのサマリ“Spark the Change: Sparkling Disruptions”では、宇宙技術の革新性について探求している。業界は、政府機関による大規模なプロジェクトから、宇宙プロジェクトを行う中小規模の企業やスタートアップ投資へと変化している。人工衛星が完全にディジタル化され、重量と容積が低減されたことにより、提供可能なサービスのタイプが変化し、フレキシビリティが向上し、既存サービスのコストが削減された。

InfoQ: 宇宙技術のイノベーションは、テレコミュニケーションをどのように革新しているのでしょう?

De Hauwer: 宇宙産業は新たな時代に入りました。新たな宇宙ベンチャの到来によって技術革新が加速し、経済状況が大きく変化しました。例えば、SpaceXのような新しい参入企業が、打ち上げコストを大幅に削減しようとしています。

この革命では、他にも多くの宇宙技術のイノベーションが重要な役割を果たしています。電気推進は、衛星の体積を40~50パーセント削減することを可能にします。ハイスループットのスポットビームは、従来の衛星より大幅に高い帯域を実現し、ビット単価の低減を可能にします。完全にディジタル化された新たなペイロードによって、効率性の向上、グローバルカバレッジにおける完全なフレキシビリティ、スペクトラム利用のさらなる最適化が可能になります。

InfoQ: 航空宇宙、防衛、テレコミュニケーションといった分野には、どのような機会があるのでしょう?

De Hauwer: 航空機業界を例に取れば、航空会社では搭乗中のネットワーク接続の需要が高まっています。市場調査によれば、63パーセントの旅行客がより多くのフライトでのWi-Fi提供を希望し、48パーセントが地上と同じ程度の速度でのWiFiが必要だと考えています。これらのサービスをメインストリームにするために必要なパフォーマンスと経済性を両立させるべく、人工衛星群の整備と拡張を行っています。航空機が人口密度の高いルートや、あるいは砂漠のような広大な領域を飛行している場合であっても、常に、どこであっても、適切な種類の接続性でカバーしたいと考えています。

InfoQ: SESでの文化は、イノベーションを促進する上でどのような役割を果たしていますか?

De Hauwer: SESでは、イノベーションに向けて2つの重要な項目を掲げています。まず、再利用可能なロケットの打ち上げや電気推進の導入など、ロケットや衛星技術の新たな開発において、市場をリードしたいと考えています。次に、船舶や航空機においてはモバイル受信アンテナ製造企業、ビデオセグメントとHDおよび超HDテレビジョンにおいてはTVおよびデコーダの製造企業など、バリューチェーン全体においてパートナと協力することで、市場とエコシステムを活性化したいと考えています。このパイオニアとパートナというモデルが、イノベーションの市場投入を可能にするのです。

 
 

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