UBSでアセットマネージメントSWAT(SoftWare Action Team)の責任者を務めるJelena Laketic氏がDevOps Enterprise Summit Londonで講演し、スイス最大の銀行でイノベーションを推進した経験から学んだ教訓について語った[スライドPDF]。
InfoQはLakeric氏にコンタクトを取り、氏がSWATの活動の中で経験した課題と成功、およびUBSにとってのイノベーションについて話を聞いた。
InfoQ: SWATチームの起源と役割、構成について教えてください。
Jelena Laketic: SWAT (SoftWare Action Team)は、イノベーションの可能性の追求とUBS Asset Management(AM)のディジタル化を目的として結成された、ハイパフォーマンスなITスペシャリストによる専門チームです。
このチームは、ビジネスソリューションを新たなテクノロジや方法論に結びつけて、ボトムアップのイノベーションを可能にする手段として、イノベーション実現アプローチを使用して、UBS AMの業界における競争上の優位性の達成と維持を支援する目的で設立されました。このチームは、革新的なテーマや新技術、方法論、ベストプラクティス(Agile、DevOps、デザイン思考)に関心を持ち、成長思考(Growth Mindset)を備えた4人のフルスタック開発者と1人のUXエキスパートで構成されています。
InfoQ: “運用可能(production ready)”なソリューションを提供するという説明がありましたが、これはどのような意味なのでしょう、また、このチームは本番稼働開始後のアプリケーションの運用に関しても責任を持つのでしょうか?
Laketic: チームは、外部セットアップ(外部のセキュアなネットワークとUBS外のハードウェア上で動作する)と内部セットアップ(標準的なUBSセットアップ)を適切に組み合わせた、サンドボックス技術セットアップで作業しています。最初は外部セットアップでソリューションの開発に着手して、他のイノベーションチームと同じように、徐々にUBS環境に移行していきます。これがつまり、“運用可能”なソリューションということです。このようなアプローチによって、イノベーションの実践が可能になります。SWATチームの仕事とコンセプトにおいて、これが最も重要な部分です。このプロセスを採用すれば、SWATの業務とは別に、UBSアプリケーションの導入作業の評価や改善を行なうことも可能です。
ソリューションの導入準備が整った(運用可能になった)ならば、対象とするビジネスパートをサポートするITチームに、そのソリューションを引き渡します。この引き渡しによって、新たなテクノロジや方法論に関する知識と教育やベストプラクティスが、関係するITスタッフに移行されることで、ボトムアップのイノベーションが可能になるのです。ソリューションに関する責任も新たなチームに移管されるので、SWATチームは別のタスクに移行する機会を得ることができます。
InfoQ: Agile、DevOps、デザイン思考を採用する上で、チームが克服しなければならなかった課題は何かありましたか?
Laketic: Agile、DevOps、デザイン思考の採用はSWATのコンセプトの一部なので、ITスペシャリストを選任する上では、これらの実務経験を積んでいることが重要でした。その場で対応が必要な部分はいくつかありましたが。外部セットアップにこれらのコンセプトを適用するのはそれほど難しくはありませんでした。実際の問題は、特にDevOpsの部分に関して、内部セットアップへの移行時に発生しています。その場合でも、問題の規模を評価することが非常に重要です。企業の他の部分にコンセプト展開する場面では、これが役に立つかも知れません。
InfoQ: SWATチームが最新のプラクティスとパターンを適用してデリバリ速度を向上する一方で、他が依然として遅いデリバリプロセスに固執するという、マルチスピードデリバリ(multi-speed delivery)のトラップに落ちるのを、どうやって防いだのでしょうか?
Laketic: 移行先チームと一緒に作業したのです。最新のプラクティスとパターンを共同で実装して、そのメリットを彼らに伝えました。この方法で自然に(かつ徐々に)、彼らの転換を支援することができます。
最新のプラクティスやパターンを理論面でのみ教える場合もありますが、実装を通じてのみ到達できるような深い理解を得ることはできません。
InfoQ: “イノベーション”という言葉は必要以上に使われることも多いのですが、UBSではどのような意味であって、実際にはどのように進められているのでしょう?
Laketic: UBSではいくつかの方法でイノベーションを実践しています。現行のコンセプトはイノベーションラボで、将来についてはシンクタンクで探索されています。私の見解では、イノベーションを取り入れる最も効果的な方法はハッカソンであり、同じくSWATチームです。いずれもアイデアの具体的な実施とそれによる明確なメリットという、イノベーションの実践方法について模索するものです。
InfoQ: “イノベーションの推進(driving innovation)”は文化、技術のどちらなのでしょう?人々の行動に影響を与えて変化させる方法について、あなたが学んだことを教えてください。
Laketic: イノベーションを進める上では、どちらも重要です。どちらかひとつだけでは存在し得ないのです。ある時は一方が起点となってもう一方が追随し、ある時はその逆であるべき理由はここにあります。
人々の行動を変えるのは、それがもたらすメリットが正確に示されている場合にのみ可能なのだと、私は強く信じています。イノベーションの実現は、私にとって、それを実践するための正しい方法なのです。
InfoQ: UBSのグローバルハッカソンは、企業としてどのような価値と影響を持つのでしょうか?
Laketic: UBSハッカソンは、イノベーションを推進し、UBS全体に多様性の文化を促進する上で、最も効果的な方法のひとつです。UBSには素晴らしく熟達したITスペシャリストがいるのですが、日々の業務で常にその創造性とアイデアを発揮できている訳ではありません。このイベントは彼らにとって、革新的なソリューションの開発を通じて自身の革新的精神を発揮し、自身の創造的なアイデアに基づいて共同で作業し、独自の経験と展望を取り入れるためのプラットフォームなのです。
現在は5回目のUSBハッカソンの準備中で、9月には6回目と7回目を実施する予定です。準備作業がたくさんありますが、とても楽しみにしています。そこで得られる肯定的な感情には影響力があって、同じエネルギと熱意を持って仕事を続けようというモチベーションになるのです。
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