MozillaがFirefox 62をリリースした。このバージョンでは、可変フォントやMacOS Mojaveでのダークテーマ自動対応、Androidでのスクロールの改善などが提供されている。
デスクトップ用のFirefox 62では可変フォントがサポートされた。可変フォントはOpenTypeフォント仕様を発展させたもので、書体のさまざまなバリエーションをひとつのファイルに組み込むことができる。標準的なフォントでは、通常、バリエーションごとに別々のフォントファイルが必要である。このためHTTP要求が増え、ダウンロードされるデータも増加する(ファイルあたり20k)。可変フォントは付加データを含むことにより、開発者がCSSと単一の@font-faceリファレンスを使用することで、特定のフォントファイルに含まれるすべてのバリエーションにアクセス可能になる。
可変フォントはEdge 17以降、Firefox 62以降、Chrome 69以降、Android 69以降、Safari 12以降、Safari for iOS 11.4以降の各ブラウザでサポートされている。Linuxでは最新のLinux Freetypeバージョンが必要であること、10.13以前のmacOSでは可変フォントがサポートされていないことに注意が必要だ。
(図はdevelopers.google.comから引用)
CSSファイルでは次のように可変フォントを使用する。
@font-face {
font-family: 'AmstelvarAlpha';
src: url('../fonts/AmstelvarAlpha-VF.ttf');
font-weight: normal;
font-style: normal;
}
もうひとつの新機能はmacOS専用で、macOS Mojaveがダークモードの場合に、Firefoxが自動的にダークテーマを有効にするというものだ。
デスクトップ用Firefox 62では、Web開発者向けに以下の機能が追加、変更、および削除されている。
- 開発者がシェイプを参照したり編集したりできるShape Pathエディタが、デフォルトで使用可能になった。
- Page Inspectorに新たなモードとして、HTTMLペイン、CSSルール、Computed stylesビューやAnimatorsビュー、FontsビューなどのCSS機能を同時に参照できる3-Paneモードが追加された。
- FirefoxのGridインスペクタでDevToolsを使用して、ページ上にあるグリッドの編集やレイアウト上の問題のデバッグが可能になった。“CSS Grid Inspector: Examine grid layouts”を参照。
- スプリットコンソールツールバーにクローズボタンが追加された。
- Network MonitorのCookiesタブに、クッキーのsamesite属性が表示されるようになった(bug 1452715)。
- Responsiveデザインモード がコンテナタブ内で動作するようになった(bug 1306975)。
- Developer Toolbar/GCLIが廃止された。
- WebAssembly.Global()コンストラクタが、グローバル変数WebAssemblyとともにサポートされるようになった(bug 1464656)。
- Array.prototype.flat()とArray.prototype.flatMap()の2メソッドがデフォルトで有効になった(bug 1435813)。
- コンテキスト特有のメタデータをJavaScriptモジュールに公開するため、import.metaプロパティが実装された(bug 1427610)。
- 音声データのWebアプリへの組み込みを可能にする、試験的なSpeech Synthesis API (Text-to-Speech)が、Firefox for Androidでデフォルトで有効になった(bug 1463496)。
- “media.autoplay.enabled”プリファレンスがビデオメディアだけでなく、オーディオとビデオの両方の自動プレイバックをコントロールするようになった(bug 1413098)。
Firefox 62にはまた、アドオン開発者向けにも一連の機能追加、変更、削除が行われている。
- 特定のリクエストに関連するTLS接続の詳細情報を取得するwebRequest.getSecurityInfo()APIの追加(bug 1322748)。
- 新しいタブが開く場所をカスタマイズするbrowserSettings.newTabPositionの追加(bug 1344749)。
- windowsTypesのwindows.get(), windows.getCurrent(), windows.getLastFocused()が非推奨となった(bug 1419132)。
- themeマニフェストキーに新設されたtab_background_separatorプロパティによって、拡張機能からタブセパレータの色を変更できるようになった(bug 1459455)。
- アンパックされてサイドロードされた拡張機能のサポートが削除された(bug 1385057)。
その他、特に開発者を対象としたものではない新機能、バグフィックス、変更には次のようなもがある。
- Symantecの発行した証明書を信頼できないものとして、Firefox 63のSymantecが発行した証明書の信頼をすべて削除することを可能にするプリファレンス。アドレスバーでabout:configに移動し、“security.pki.distrust_ca_policy”に2をセットすることで、このプリファレンスが利用可能になる。これは、Symantec CorporationのPKIによって発行された、一連の疑わしいWebサイト認証証明書に関連するものである。
- WebAuthnのFreeBSDサポート(Bug 1468349)。
- アクセラレーションハードウェアを使用しないWindowsユーザ向けの、Parallel-Off-Main-Thread Paintingを使用したグラフィックレンダリングの改善(Bug 1454980)。
- スペクタのShape Pathエディタの刷新と連動した、よりリッチなWebページレイアウトを可能にするCSSシェイプのサポート。
- Adobe Flashアプレットは、macOSのプロセスサンドボックスを使用した、より安全なモードで動作するようになった。
- WebRTCの画面共有方法の変更。ウィンドウを画面共有する場合、そのウィンドウが前面に表示されるようになった(Bug 1450658)。
Firefox 62の機能とバグフィックス、変更の全リストはリリースノートにある。Firefox 62用のサイト互換性に関するガイドも用意されている。
iOS用ではタブにいくつかの改良が加えられており、タブの検索や切り替え、管理が可能になった。これにより、ひとつのビューでタブ設定を管理することができる。開いているタブを検索して、通常のブラウジングとプライベートブラウジングをシームレスに切り替えることも可能だ。
iOS用Firefoxの他の新機能としては、ダークからライトへのテーマの切り替えが、手動または自動で簡単にできるようになった。“Settings > Display > Light or Dark”をクリックするか、あるいはAutomaticスイッチを使って自動的に切り換える。
Android用Firefoxには一連のセキュリティフィックスの他、いくつかのパフォーマンス改善が行なわれている。
- スクロールパフォーマンスの改善。
- ディスクキャッシュが遅い場合にネットワークからロードすることによる、Wifi接続時のページロード時間の短縮。
- 通知設定の“Product and feature tips”の切り替えにより、表示される通知をより詳細にコントロールできるようになった。
- WebRTC video sessions between Firefox for Android and Safari browsers work again Android用Firefoxと WebRTCビデオセッション
すでにインストールしているユーザは、自動アップデートが可能である。新規ユーザは、デスクトップ用はfirefox.comから、AndroidおよびiOSユーザはそれぞれGoogle PlayおよびAppleのApp Storeからダウンロード可能だ。
この記事を評価
- 編集者評
- 編集長アクション