ティール組織(teal organisation)はその視点を、より高い目標の定義と存在理由の証明においている。世界に向けて価値を創造するため、人は企業に加わり、定められた目標に向かって自由に働く。ティール企業は完全にオープンで、透過的で、相互に信頼する文化を持たなくてはならない。誰もが安心して、積極的にアイデアを共有し、不安なく失敗できるべきなのだ。
型破りなMondoraのCEOであるFrancesco Mondora氏がGoto Berlin 2018で、ソフトウェアは善をなす力(force for good)として考えられるか、という命題について講演した。InfoQでは同カンファレンスに関して、Q&Aや要約,記事などでお伝えしている。
組織は高尚な原則を持つべきだ、とMondora氏は主張する。ステークホルダは利益だけを考えるのではなく、もっと大きな目的を持たなくてはならない。
企業において、社員は等しく人であり、企業の目的によって管理されているという事実を考えれば、企業に管理構造は必要ない、とMondora氏は言う。必要なのは透明性であり、オープン性であり、全幅の信頼感なのだ。
Mondora氏は言う – 企業の鼓動はそこで働く人々だ、と我々は考える。従って、素晴らしい結果を得るためには、人を大切にすることが必要なのだ、と。
いかに自己組織化を実現するかについてのインタビューで、Bonnitta Roy氏は、自己組織化のもたらすメリットを次のように述べている。
自己組織化が企業生活における重要なテーマであると考える人たちは、複雑なシステムの中で、自己組織化が創造的な新規性と統一性の根源であることを理解しています。自己組織化を理解することは、すなわち、組織的な課題にいかに直面するかをより強く意識できることだ、と私たちは考えています。このようなダイナミクスを持ってデザインすることで、今まさに生まれつつあるコラボレーションチームの持つ可能性のデザインが可能になる、と私たちは信じているのです。
InfoQの組織の再編に関するQ&Aの中で、Frederic Laloux氏は、目的が人々の行動をいかに促すかについて説明している。
(...) 高尚な目的を持って、自己管理的な方法で働くことにより、自身の持つ潜在能力を十分に発揮し、膨大なエネルギを持って働くことが可能になるのです。強制や監視の必要はありません。
Erwin Van Waeleghem氏は、ティールのパラダイムを採用したティール組織の特徴を、次のように説明している。
ティール指向の組織は、自分たちをもっと、自然界のどこにでも見られるような“生物的な存在”だと考えています。彼らは極めて人間中心的であり、従業員に対して解放感を提供します。人をリソースとみなすのではなく、人の中にあるリソースを求めるのです。そこでは地位や肩書き、エゴといった品位を欠く考え方を必要としない、別の形の、より自然なリーダシップスタイルが使用されています。
ティール組織としての同社がその目的を定義した理由、組織構造と管理方法について、Mondora氏にインタビューした。
InfoQ: “ティール組織”とはどのようなものか、ご意見を聞かせてください。
Francesco Mondora: まず何よりも、組織には、より高い目標を定義する必要があります。目標を定義する中で、企業はその展望と、あらゆる行動に対する目的を設定します。企業の中の個々は、定められた目標に向けて自由に働きます。彼らは、世界に向けて企業が創造する価値のために、企業に参加するのです。サービスやプロダクトはすべて、私たちが追い求める目的に到達するためのツールなのです。
企業が存在する理由が定義できれば、他はすべてそれに従うことになります。
InfoQ: ティールとアジャイルの原則を会社の基盤とすることを決めた、その理由について教えてください。
Mondora: 当社は元々、よりよりソフトウェア開発のためのツールとして生まれました。私たちにとってアジャイルは、顧客やユーザとの間に迅速かつ継続的なフィードバックループを構築できる唯一の手段でしたから、ビジネス組織として当然の選択でした。
2003年、アジャイルが高品質ソフトウェアを提供するための新たな標準パラダイムになると、私たちは“よいソフトウェア”から、より一般性のある“よい生活”へと企業目標を移し始めました。進むべき道は明確でした – ステークホルダの経済的利益だけではなく、自己管理的な方法で、人々を中心として、すべてのステークホルダの利益創出を含む目標に向かって会社を成長させ、発展させたかったのです。
InfoQ: Mondoraはどのような構造で管理されているのでしょう?
Mondora: Mondoraは自己管理型の小さなチームで構成されています。各チームには、そのチームのCEOである“オーナ”がいて、毎日のアクティビティにおいてMondora哲学の価値と原則を追求しています。各チームは、すべてのステークホルダを作業に受け入れ、すべてのアクティビティを最新の状態に維持する責任を負います。
チームは2週間のスプリントで活動します。各スプリントは計画ミーティングで始まり、レトロスペクティブミーティングで終了します。チームはすべてフルスタックで、最初の受託フェーズから終了まで、ひとつの顧客とプロジェクトに従事します。
ビジネス上の決定はすべて透過的に行われ、オンラインプラットフォームのLoomio上で議論されます。提案は誰でも可能で、決定が下されるまでは、すべての人にコメントと投票の権利があります。
当社には財務の完全な透過性というポリシもあるので、特定の予算割り当ては必要ありません。全員が財務情報を見て、Mondoraのために意思決定することが可能です。
InfoQ: 講演では、作業方法のレベルアップや、組織の人間側への考慮が話題になっていました。これについては、どうなっていますか?
Mondora: まず最初に、当社には人事部門がありません。私たちは社員を“リソース”や“機能”ではなく、ひとりの人として見ているのです。これはつまり、作業環境以外での意思決定や行動に対して責任を持つのと同じように、社内で行動に対しても全員が責任を持つ、ということです。自己組織化、作業時間のフレックス化、無制限の休暇ポリシ、コラボレーティブな意思決定といったものは、Mondoraの人間的な面を構成する要素の一部に過ぎません。
もうひとつの基本的な観点は、私たちが“the :m way”と呼んでいる、完全にオープンで、透過的で、互いを信頼し合う文化です。シニアアーキテクトからハイスクールのインターンまで、社内のすべての人が、不安を持つことなく、積極的に、アイデアを共有し、失敗することができなければなりません。これを達成するための試みのひとつがFailure Partyです。誰かが何かに挑戦して失敗した場合(小さな失敗もありますが、顧客やプロジェクトに影響するような大きなものの場合もあります)、パーティを催すのです。パーティの目的は特定の人物の失敗を責めることではなく、失敗に至ったエコシステムを全員で分析することです。そこから学び、将来的な失敗を回避し、安全で包括的な環境において、全員が作業プラクティスを改善する機会とするのです。
Ash Sheikh氏が“Robot Says "Culture" – Moving towards Teal”で説明しているように、ティール組織は自分たちの文化を尊重する。
ティールは文化に似ていると思います。文化には(ティールも)、最終的な状態というものはありません。養うものであり、成長し、進化し、手入れし、育まなくてはならないものなのです。適応と変化を絶え間なく続ける生き物であり、常に注意を払わなくてはなりません。GoogleやFacebook、あるいは他のどの文化とも同じである必要はないのです。組織の文化は、その組織独自のものです。
ティールとアジャイルの原則に基づく自己組織化組織の例としては、他にSoftwareMillと/ut7がある。
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