AWS re:Invent 2018において、AmazonはAWS RoboMakerを発表した。これはインテリジェントなロボットアプリケーションの開発、テスト、デプロイを簡単にするサービスだ。RoboMakerにはROS(Robot Operating System)の拡張機能が含まれており、AWSへクラウド接続することで、機械学習、認識、監視、分析サービスが利用できるようになる。
これまで、ロボットアプリケーションの構築は、開発、シミュレーション、フリート管理のためのツールが分断されているために難しかった。こうした摩擦は様々な非効率を生んでいた。AWS RoboMakerのゼネラルマネージャであるRoger Barga氏は次のように説明している。
ロボットアプリケーションの構築、およびこれらツールの課題の解決には時間がかかります。こうした手間は、ロボット開発者が構築しようとするアプリケーションにとって、ほとんど価値がありません。私たちはこれをAWSにおける未分化の重労働だと呼んでいます。問題は、これらに時間を取られ、開発者がインテリジェントなロボットアプリケーションを構築するための時間がほとんどなくなることです。AWS RoboMakerを使うことで、開発者はロボティクスおよびアプリケーションにおける革新に、もっと時間を費やせるようになります。
これまでクラウドベースのサービスを使うロボットアプリケーションにとって、ネットワーク接続が障壁となってきた。だが、Barga氏はもうそんなことはないと述べている。
ネットワーク接続はますます普及し、改善しています。ネットワーク接続したデバイスはミリ秒の遅延でクラウドと通信でき、ずっと減少し続けています。これはロボティクスにおけるゲームチェンジャーです。なぜなら、もはやデバイス自体の物理的およびソフトウェアリソースに制限されなくなるためです。
Amazonは既存のROSにAWSクラウドサービスの拡張機能を追加することで、AWS RoboMakerを作成した。これらの拡張機能は、既存のROS開発者になじみのあるROSパッケージにバンドルされている。開発者がこれらパッケージを開発環境に追加することで、以下を含む様々なAmazonクラウドサービスにアクセスできるようになる。
- Amazon Lex - 音声認識
- Amazon Polly - 音声合成
- Amazon Kinesis Video Streams – 解析および機械学習のためのセキュアなビデオストリーミング
- Amazon Rekognition – 画像および映像解析、物体識別
- Amazon Cloudwatch – ログと監視
AWSクラウドサービスにアクセスすることで、ロボットとの会話や、あなたの話を理解させるといったユースケースが可能になる。ロボットはそれから、さらに情報を求めたり、コマンドを承認したりして、ユーザに応答することができる。ロボットはLIDARおよびレーダーをカメラからクラウドへストリーミングして、データを解析することができる。さらに、Rekognitionが提供する認識サービスによって物体を識別したり、Cloudwatchですべてのロボットの居場所を追跡したりすることもできる。
ROS向けのクラウド拡張機能に加えて、AWS RoboMakerには、開発環境、シミュレーション、フリート管理という3つの領域がある。
画像のソース: https://aws.amazon.com/robomaker/
開発環境により、チームは構築しようとしているロボットの計算、ストレージ、ROSダウンロードを設定することができる。開発者は開発環境からすべてのROSパッケージを調べて、すぐに始めることができる。Amazonによると、チームは数分でセットアップできるという。
スケーラブルなシミュレータにより、開発者はハードウェアを選択する前にアプリケーションをテストすることができる。室内、小売店、レース場を含む構築済みのワールドが利用可能だ。加えて、自分の部屋をロードすることもできる。また、異なる設定で複数並行して動かすことができ、1時間に何千時間分ものシミュレーションを実行することも可能だ。
フリート管理を利用することで、管理者は無線によるインストールとアップデートを用い、単一の管理プレーンからロボットを管理することができる。これらフリート管理機能はAWS IOT Greengrass経由で利用することができる。ここにはすべてのロボットのレジストリが含まれており、アップデート配信時のフォールトトレランスを提供する。さらに、Greegrassはセキュリティを強制し、他人が未認証のソフトウェアをロボットにインストールできないようにする。
Amazonは、Robot Care Systems、Future Robots、Advanced Robot Solutionsなど、RoboMakerを導入している顧客を抱えており、彼らはみな、これらサービスを使って自分のロボットにさらなるインテリジェンスを加えている。Black & DeckerとNASA JPLは現在、さらにアジャイルな開発をするため、また検査ドローンやNASA Mars roverのような実世界のアプリケーションをテストするために、シミュレータを使っている。さらに、NASAは自身のMars rover実装(下の図)をオープンソース化して、他の組織がAWS RoboMakerを使って独自のロボットを構築できるようにしている。
画像のソース: (スクリーンショット) https://www.youtube.com/watch?v=sjxZAdm1utM
Amazonが書いたクラウド拡張機能とドキュメントによるコントリビューションはオープンソース化されている。また、AmazonはROS2 Technical Steering Committee (TSC) にパートナーとして参加している。