Caragh O’Carroll氏はWomen in Tech Dublin 2018において、ブロックチェーン、ロボットによるプロセス自動化、人工知能と機械学習という3つの新技術について語った。そして、ビジネスが直面している課題に対して、これらの技術がどのように解決策を提供するか説明した。
富士通のDistinguished EngineerであるO’Carroll氏はまず、Gartnerによるブロックチェーンの定義を引用した。「ブロックチェーンとは、ネットワーク内の全ての参加者によって共有される、暗号署名された、改ざん不能な取引記録の拡大するリストだ」。これは共有コントロールを備えた分散テクノロジだ、彼女は語った。ブロックチェーンのユースケースには、例えば、請求書の確認、スマートコントラクト、資産の所有権、知的財産の追跡、監査、コンプライアンスがある。
ブロックチェーンは信頼を構築するのに役立つ、O’Carroll氏は語る。ブロックチェーン技術を使うことで、情報が変更または改ざんされていないことを保証できる。彼女は、検証が必要なときにブロックチェーンを適用することを提案した。そして、ブロックチェーンがビジネスにとって価値があるかを確かめるため、Proof of Businessを行うことを提案した。これは5日でできるという。
RPA(Robotic Process Automation)は人間がこれまでやってきたタスクを自動化するのに使える、O’Carroll氏は語る。これは反復的で平凡なタスク(たいていは退屈だと思われるタスク)に適用されることが多い。RPAを使うことでロボットにやらせることができるという。RPA技術に基づいたソリューションには意思決定が組み込まれており、あなたはクリエイティブな仕事に専念できる。彼女は、メールから情報を抽出し、その情報を購買発注システムに入力して発注を行うというルールを構築することで、ロボットをどのように訓練するか説明した。
彼女はRPAのユースケースとして、ケース管理(例えば医療)、入社・異動・退社を管理する人事部、銀行などに言及した。これらはロボットを使ってやる方が安くつき、自動化することで顧客に費やす時間を増やせる、と彼女は主張した。
機械学習(ML)と人工知能(AI)は、我々の脳が神経ネットワークでやっていることに基づいているため、これまでとは異なる種類の技術だ、O’Carroll氏は語る。正しい答えを予測すること、それを改善していくことを必要とする。あなたはデータサイエンティストを参加させる必要がある。彼らは技術とその適用方法について知っているためだ。
人工知能を適用する際の主なステップは、問題の定義、データの収集、アルゴリズムの作成、システムのトレーニングだ、O’Carroll氏は語る。AIとMLの適用は忍耐を必要とするという。あなたはシステムをトレーニングし、結果をレビューし、向上させるために改良する必要がある。
InfoQは、ブロックチェーン、ロボットによるプロセス自動化、人工知能と機械学習について、O’Carroll氏に質問した。
InfoQ: 規制やコンプライアンス要求を満たすことに関して、ブロックチェーン技術の現状はどうですか?
Caragh O’Carroll: ブロックチェーンは私たちに次のような恩恵をもたらします。
- 正確さを高める – ブロックチェーン台帳は、資産の所有権とその経時的変化を追跡できる記録を提供します。
- 安全な取引詳細 – その性質上、ブロックチェーン台帳は変更が極めて困難です。データベースの同一コピーが複数、パブリックに共有されています(パブリックブロックチェーンで)。同時に台帳の全コピーを攻撃対象にする必要があるため、ハッキングに対する脆弱性も限定します。
規制やコンプライアンスの影響がある分野では、現時点ではまだまだです。欧州委員会のFinTech行動計画は、EU全体のサイバーリスクテスト、EUクラウドファンディング、EUパブリックブロックチェーン基盤をまとめながら、新しいビジネスモデルと新しい技術の採用をサポートすることを目的としています。並行して、欧州銀行協会は、ブロックチェーンなどの新技術が既存の機関に与える影響を積極的に分析しており、マネーロンダリングなど顧客保護の問題について評価しています。
地元アイルランドでは、中央銀行がInnovation Hubを設立しました。その目標は、企業がアイデアと情報を共有して、将来の金融サービス規制が目的に適しているか確認できるようにすることです。ブロックチェーンと分散台帳技術がペイメント技術における重要な課題、送金したい人もしくは組織が実際にお金を持っているかどうか、に対する回答を与えてくれることは、疑う余地がありません。
しかし、ブロックチェーンと分散台帳技術は、理論上、透明性があり改ざんを防止しますが、現在のところ、ブロックチェーンの標準やバージョンにおけるコンセンサスが欠けています。技術はまだ進化しているところなので、私は実験することをアドバイスします。明確な標準とリーダーが登場するまで、ブロックチェーンに大規模移行してはいけません。
InfoQ: ロボットによるプロセス自動化はどんなメリットをもたらしますか?
O’Carroll: RPAとは、ビジネスプロセスの一部として、ITシステムを用いた人間として機能する「ソフトウェアロボット」を設定できるようにする技術です。ロボットは人間と同じ画面(UI)を使用し、同じようにデータをキャプチャしてアプリケーションを操作することができます。私たちが特定のデータを見て特定の行動をトリガーするのと同じように(例えば、注文を問い合わせを含むメールには、プロセスを進めるために他のメールやシステムに入っているデータが必要になる)、ロボットはこうした行動を学習できます。目標は、反復タスクにロボットを使うことです。
その主な利点は次の通りです。
- タイプミスやコピー/ペーストのミスがなくなる
- 望むなら、24時間365日稼働できる(ただし、下流にあるプロセスへの影響を監視)
- 時間の節約 – もっと価値のあること、例えば、新規ビジネス開発に時間を割けます。
- コスト削減 – ボリュームに応じて合理化できます。
- コンプライアンス – 常に正しいことをするため、コンプライアンスは素晴らしい副産物となります。
職務に及ぼす影響のため、RPAには変更計画が必要です。ビジネスが最も必要としているところに、解放された時間を集中できるようにします。また、RPAによって恩恵または影響を受ける人が、その変化に関与することができ、その恩恵を受けられるようにします。
InfoQ: AIとMLをビジネスアプリケーションに組み込むのはなぜですか、どんなメリットがありますか?
O’Carroll: 様々なメリットがあります、全てはあなたが答えたい質問から始まります。しかし、質問に答えるのはそれほど簡単なことではありません。今のところ、デジタルアシスタント(SiriやAlexa)、顔認識(例えばSensory Inc.)、写真のキャプション付け(人物のタグ付け)、商品のおすすめ(ターゲット広告)で使われています。
ですが、メリットはかなり大きくなる可能性があります。
- DevOpsにAI/MLを用いたリリースプロセスの合理化。そして、もっとアジャイルなCI/CDアプローチへの移行。これを用いて、テスト、チューニング、リリースを繰り返しましょう。
- レポートだけでなくシナリオ計画(例えば、KPIの変化に対するシステムやプロセスへの影響)のためにビジネスKPIを組み込む
- 顧客データ(複数の入力ストリームに基づく)に関する記録、分析、個人化、推薦。別の料金プランや追加商品のアップセルがおすすめされませんか?
現在のビジネスアプリケーションは外部データベース(OracleやSQL)やインメモリデータベース(NoSQL)に依存していますが、将来のアプリケーションにはAIのAPIが含まれるでしょう。例えば、コールセンターでの会話をテキストに変換して、特定の感情(例えば、怒りや解約の可能性が高いなど)をもつ顧客や問い合わせをリアルタイムで特定できます。こうしたソリューションは、英語が流暢でない患者など、サービスを受けている人に対するライブ翻訳にも有用でしょう。テキストをターゲットとする言語の話し言葉に変換することもできます。
社内外の複数のソースから収集したデータに基づいて、社内機械学習プラットフォームを作るという選択肢もあります。適切な質問を特定できたら、適切なアルゴリズムを選択する必要があります。それから、モデルをトレーニングして、プロダクションへ移行します。
Women in Tech Dublin 2018について、InfoQではQ&Aとまとめ記事で紹介している。これまで、「スキル開発とキャリアのためのフィードバックの重要性」と「Embracing Diversity and Fostering Inclusion: A Necessity」を公開した。