2019年1月,Silke Hermann氏とNiels Pflaeging氏は,オープンソース,オープンスペース,社会技術(social technologies)など確立された基本理論を起源とする5つの原則に基づいた,Very Fast Organization Transformation(VFOT)モデルをリリースした。
完全かつ永続的な組織変革は,達成が難しいものと認識されているが,Hemann,Pflaeging両氏によれば,VFOTモデルで氏らが定義したガイダンスと5原則に従うことで,数ヶ月から18ヶ月以内に完全な変革を成功させることが可能になる。
原則1:原則を持つ
機械的なフレームワークとは違い,原則に基づく理論では,ツールやルール,ベストプラクティス,あるいは本質を外れた紋切り型のソリューションを推奨することはしない。その代わりに求めるのは,社交的であること,自発的な採用であること,自己組織化を促進することだ。理論を構成する原則は互いに関係し合い,相乗的で,結束しており,ゆえに不可分である。Hermann,Pflaeging両氏によると,
原則は,複雑なシステムの性質を社会集団に伝える唯一の方法であり,自然な方法です。
原則的理論の一例が,アジャイル宣言とその12の原則である。
原則2:タイムボックスを決める
スクラムでは,プロダクトを漸進的にデリバリする手段として,タイムボックスを決めたスプリントが使用される。Hermann氏とPflaeging氏は,変革のイテレーションにおいても同じように,タイムボックス化された計画を立てるように推奨している。タイムボックスには,要求のスコープを狭めることなく作業を分割する,というメリットがある。タイムボックス化された活動は,進歩感と達成感,そして成果を生み出すことで,安全性と関与意識を向上する。フィードバックプロセスを通じて,最も価値のある目標の達成も加速される。
原則3および5:全員参加を呼び掛ける
Hermann氏とPflaeging氏によれば,変革管理アプローチの96パーセントは指示命令型であり,モチベーションや参加意識を低下させる原因となっている。オープンスペースプラクティスであるVFOTでは,命令よりも魅力的な価値提案による勧誘を,グループメンバの選任よりも全員参加を,それぞれ重視する。全員がそれに応じるとは限らないが,受け入れた人たちは熱意を持って活動を支持することによって,変革のイニシアティブを最初から後押ししてくれる。変革リーダを選任して組織の他の部分を指示させる,という方法が失敗するアプローチであることはすでに証明済なのだ。VFOTは全員を対象とすることで,組織の集団的知性を受け入れる。参加意識を拡大する手段として,両氏は,オープンスペースのイベントやプラクティスといった社会技術の採用を推奨している。
これら2つの原則を組み合わせることで,変革は大きくスピードアップする。作業イニシアティブを共有するだけでなく,全員がシステム自体を形作る重要な部分であることが求められるのだ。共に組織開発に取り組むことで,全員が変革にコミットすることがより自然に,より容易に,より速くできるようになる。
原則4:システム全体
Hermann,Pflaeging両氏は、ほとんどの組織変革フレームワークが,部門,機能分野、慣行,人員は孤立的かつ段階的であるという,断片的(piece-meal)アプローチを採用している,という認識を持っている。現在の組織構造による変革の分割は,結果として表面的で孤立的な変革を実現することになり,コアシステム自体の完全な変革は達成されない。
VFOTモデルとその5つの原則が公表されたことにより,その反響が現れている。実績のある基本的慣行に基づいていることを理由に,VFOTアプローチの正しいという点で認識が一致するというのであれば,実際の採用事例や成功例があって然るべきだ,という意見もある。経営層の持つ統制的な考え方を,全員参加による共同作業的な考え方に完全に移行させることの困難さが,VFOTを成功させる上で当面の障害となる,という指摘もある。