Agile India 2019で、Doc Norton氏は、Tuckmanチームフォーメーションモデルが機能しない理由について講演し、より人を中心として、現在のアジャイルチームのコラボレーションのニーズに適合する、新たなリチーミング(reteaming)モデルについて説明した。
1965年に発表されたTuckmanチームモデルは、チームの成立過程を、形成(Forming)、混乱(Storming)、統一(Norming)、機能(Performing),散会(Adjourning)という5つの段階で示したものだ。Tuckmanの理論によると、これらのフェーズは連続しており、同じ期間を持ち、チームがパフォーマンスの最高点に到達するために必要なのだという。
Norton氏の見る限り、Tuckmanモデルは、予想したようには機能していない。まず、連続したフェーズの各期間は同じではないのだ。"混乱"から抜け出せないチームもあれば、"統一"に移行した後に"混乱"に戻り、そこに長く留まる場合もある。一般的には"混乱"と"統一"の間で行き詰まることが多く、当初のパフォーマンスレベルを越えられない場合もある、というのがNorton氏の認識だ。
モントレー海軍大学院(Monterey Naval Postgraduate School)が2007年に行った研究調査では、対象となったチームの中で、最初の4フェーズを連続的に実施できたものは、わずか2パーセントに過ぎなかった。各ステージがまったく無効という訳ではないが、直線的ではなく、大部分のチームはそのすべてを通過できていない。また、"混乱"はフェーズではなく、頻繁に発生する継続的プロセスであり、チームが機能する上では健全な状態なのである。
Tuckermanモデルが今日まで残ったのは、長期間継続する安定的なチームは、高いレベルの専門性と相関関係にあり、従ってベロシティを正確に予測することが可能であると信じられているからだ、とNorton氏は考えている。安定したチームはよりよい成果を上げられる、従って、人材をプロジェクトリソースとみなす組織は、そのリソースを長期間にわたってウォーターフォールプロジェクトに留めるか、あるいは企業の優先順位に基づいて移動させようとするのだ。
チームメンバがひとつのチームに割り当てられ、持続可能なペースで活動するために必要なスキルをすべて備えていれば、チームはよりよい成果を上げられる。状況の変化に直面することはほとんどなく、外部依存関係をほとんど、あるいはまったく持たず、効率性に集中することが可能になる。一方で、ひとつのチームに割り当てられた人たちは、新たな組織的課題である、チームのサイロ化を生み出すことになった。チームの学習がこのサイロ内で行われ、チーム間の交流が阻害されるようになったのだ。アジャイルチームは、一部では有益な、一部では有害なサブカルチャを生み出した。チームのデリバリ、改革、学習が向上する一方で、組織としての学習が損なわれたのだ。
Norton氏は、リチーミングモデルを説明し、チームの総合的満足度とパフォーマンスを向上させるための4つの基準として、自主性(Autonomy)、つながり(Connection)、卓越性(Excellence),多様性(Diversity)の4つを挙げた。ValveやSpotifyといった一部の企業は、リチーミングの重要性を理解しており、チームの流動性をサポートするモデルを開発している。Valveでは、自己選択および自己組織化によって構成される、基本的には一時的なチームのCabal(陰謀団)を導入している。またSpotifyでは、Squad(部隊)、Tribe(種族)、Chapter(分会)、Guild(ギルド、組合)といったモデルを採用して、より流動的なチーム構成と学習パターンをサポートしている。リチーミングには、次のようなパターンがある。
- 社会化(Socialization) — 新たなチームメンバを参加させるためにチームが継続的な努力を払う。そのような継続的プラクティスを通じて、新たなチームメンバの受け入れ能力が向上する。
- 有糸分裂(Mitosis) — 分裂可能な大きなさまで、チームが成長する。新たに生まれたチームは、すでにその時点から、業務に精通している。
- ボランティア消防団(Volunteer Fire Department)チームモデル — 有志メンバが一時的なタスクチームを結成して、主要な問題を解決した後に、元のチームに戻る。
- 交換所(Trading Places) — チームが他のチームとの間でメンバを一時的に交換することで、組織全体で学習成果を共有する。
Heidi Helfand氏がさまざまなケーススタディで文書化しているように、動的なリチーミングは、組織が成長するための標準となりつつあるのだ。