企業による多様性への投資がここ数年で必須になったことを受けて、一部の組織では、包括性(inclusion)に基づいて行動するための、より良い方法の模索が始まっている。2013~2014年以降、社員の幸福と性の多様性を自社の文化とアイデンティティとして重視しているEtsyは先頃、さまざまなイニシアティブを通じて包括性を確立する、新たな方策を発表した。
Etsyは経営陣の50%以上、取締役会の半分が女性である。エンジニアの30%以上が女性ないしノンバイナリ(non-binary)、30%以上が有色人種(people of color)だ。同社は先日、5つの指導原則(Guidance Principle)を公開した。その中のひとつで、"違いを受け入れる(We embrace difference)"ことを述べて、多様性と包括性を、同社のミッションである"Keep Commerce Human"の不可欠な部分と定義している。
私たちは違いを受け入れます。
多様性のあるチームはより強く、包括的な文化には、より回復力があります。異なる視点を追求することによって、私たちは、より良い決断をし、より良い製品を作ります。
Etsyの経営陣は、採用からキャリア開発、定量化可能なメリット、昇格、能力および業績評価、在職、日々の業務上のやりとりまで、社員のライフサイクル全体に対する包括性の確立について、組織全体に対する自らの当事者意識と説明責任を明確化した。その一例として、優秀なエンジニアを偏りなく採用するため、少数派グループを対象とした技術カンファレンスへの後援や参加を通じて、募集および採用プロセスの再評価と改善を実施している。また、役員層の支援するERG(employee resource group)を設けることで、ERGを強化し、経営陣や幹部に直接的なフィードバックを行うメカニズムを構築している。新たな維持プログラムには、企業内における非一貫性の評価、報酬、役職、会議や研修への参加機会、昇進サイクルにおいて、バイアスとなる可能性のある非一貫性への対応が含まれている。
2013年、Deloitteは、多様性の持つチームがビジネス成果において、多様性のないチームを上回るという調査レポートを公開した。さらに別の調査では、グループに多様性がある場合、個人の異議を唱える意欲が大幅に高まることが示されている。これにより、多様性のあるチームは、グループ思考に陥ることが少なくなるため、複雑な問題をよりよく解決でき、創造的な決定とより大きなイノベーションにつながるのだ。そのためにEtsyの経営陣は、他分野の専門家である技術者や作家、思想リーダとエンジニアリングチームが話す機会を設けて、グローバルな技術的トレンドのみでなく、彼らの成長や作業品質に直接的な影響を持つような、チームコラボレーションの異なる面に触れる機会を確保している。これらの取り組みは、無意識の偏見に対する意識を高め、より包括的な環境を育むことに貢献する。Etsyのエンジニアは、人の対話とイノベーションにおける、包括性の重要性とメリットに対する理解を深めることができる。
同社CTOのMike Fisher氏は先日、Etsyの多様性と包括性に対する積極的な取り組みについての記事を発表した。その中で氏は、多様性と包括性を損なうことは、同社のコアミッションであり価値である"Keep Commerce Human"を失うことだ、と述べている。 さらに氏は、Etsyが多様性と包括性に関して業界のリーダになることを望んでいる。それは単に正しいだけでなく、私たちのビジネスのために正しいことなのだ、と氏は言う。
Etsyの元従業員であるLara Hogan氏は、同社で自身が学んだことを公開したが、その内容は多様性に関するEtsyのブログ記事と一致している。氏の経験から、Etsyとその経営陣は、自社の持つタレントの指導と女性の地位向上に多大な努力を注いでいる。同社の成功は、具体的な作戦の展開、フィードバックに基づく反復、定期的な成果の測定によるものだ、とHogan氏は述べている。