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UX設計の倫理 - ダークパターンとデザイナバイアスへの対処

原文(投稿日:2019/06/13)へのリンク

企業の利益にユーザを誘導するようなインターフェースをデザインするのは簡単だ。そのような慣行に従う必要があるのか、デザインコミュニティはもっと頻繁に問う必要がある、とUXデザイナのAgnieszka Urbańska、Ewelina Skłodowska両氏は、ACE! 2019で主張した。いわゆる"ダークパターン"や、さらにはデザイナによる無意識のバイアスも、共感に相反するものであり、人間中心のデザインとは相容れない。KPIはその大部分を、依存症的なユーザエンゲージメントや、積極的なUX戦略に依っているが、デザイナの立場からは、クライアントのビジネス目標が倫理的原則に反することのないよう、注意する必要がある。

世界は新たな技術への依存を徐々に増しており、デザイナの責任も重くなっている、とUrbańska氏は言う。デザイナは、自身が開発した製品やアプリケーションが何百万人もの人々によって使用されていることと、彼らの仕事が他の人々の生活に本当の影響を与えていることを認識しなければならない。Spidermanのセリフにもあるように、"大きな力には、大きな責任が伴う"のだ。 個々のプロジェクトの決定には、我々自身の一部が含まれており、我々が世界をどのように認識しているか、他人の感情や感覚をどのように読んでいるかが反映されている、と氏は言う。

Skłodowska氏は、UXデザイナの仕事にはエバンジェリストとしての役割が含まれており、企業に対してユーザリサーチやデザイン上のベストプラクティスのメリットを説く必要がある、と述べている。それは、正しく実践すれば、人間の行動を実際に変える力を持つ製品開発につながるものだ、と氏は言う。デザインする製品の倫理的問題に対する責任を何も主張しなければ、人々に有害な影響を与える可能性がある、とSkłodowska氏は主張する。デザイナとして最低限できることは、"どうすればよいのか ... ?"に対して、"どのような影響があるのか ... ?"で回答することなのだ。

ACE! 2019で、Skłodowska氏とUrbańska氏は、"ダークパターン"との戦いについて講演した。インターネットを利用するユーザは、ページ内のすべての単語を詳細に読んでいる訳ではない、とSkłodowska氏は言う。ユーザに対して、企業側の意図に従うように説得したいのであれば、それほど難しいことではない。単に習慣を利用し、視覚的なデザインを使用して、より目立ち、よりクリックしたくなるように、大きくしたり、カラフルにすることで、ユーザを誤った方向に導けばよいのだ。

ユーザがサイトに来た時に見回す画面の領域は分かっているので、そこにボタンを配置することは可能だ、とSkłodowska氏は言う。ここで問うべき質問は、このボタンを使って我々が何かをするべきかどうか、ということだ。アプリやウェブサイトとユーザとのやり取りの責任を、ユーザ自身に負わせようとする傾向があるが、それは正しくない、と氏は主張する。

ポップアップ通知やダークパターンから自らを守る方法の習得を、ユーザに強要するべきではない、とSkłodowska氏は述べている。彼らはそもそも、そのような立場に置かれるべきではないのだ。女性が常に催涙スプレーを携帯することの重要性にのみ注目して、なぜそれが必要なのか、なぜ彼女たちが恐怖を感じるのかを蔑ろにするようなものだ、と氏は言う。

ダークパターンは、我々がデザイナとして信じる概念とは真っ向から対立している。共感の概念を否定するものであり、人間中心のデザインプロセスとは相容れない、とUrbańska氏は主張する。氏はデザイナに対して、気を付けるように呼びかける。クライアントのビジネス目標に注意を払い、倫理の原則に反しないことを確認する必要があるのだ。悪い慣行を使用するというクライアントの圧力が非常に強い場合もあるが、その場合は、それがユーザにとって、長期的にはビジネスにとって、有害であるという理由を説明し、教育する必要がある、とUrbańska氏は言う。

Isobar PolandのUXデザイナであるAgnieszka Urbańskas氏と、El PassionのUXデザイナであるEwelina Skłodowska氏に話を聞いた。

InfoQ: どうすれば多様性と包括性を備えた製品をデザインできるのでしょうか?

Ewelina Skłodowska :デザインにおいて最初に守るべき最も重要なことは、ユーザに危害を与えないことだと思っています。この基準が確実に達成されて、初めて、次の質問に進むことができるのです。

最も一般的なタイプだけではなく、あらゆるユーザの理解を支援するために適用可能なUXツールがたくさんあります。最も人気のあるもののひとつは、ペルソナを使うことです。これはCVに似たもので、製品チームがさまざまな顧客タイプを理解し、共感する上で有効です。

Sara Wachter-Boettcher氏の"Technically Wrong: Sexist Apps、Biased Algorithms、and Other Threats of Toxic Tech"には、高レベルのマーケティングディレクタとともにユーザペルソナに取り組んだ経験について書かれています。より包摂的に、さまざまなユーザのニーズに対応するため、氏は財務担当役員のペルソナとして黒人女性の写真を使用しました。氏のハイエンドクライアントは、これが納得できないようでした。彼らにとって財務担当役員とは、中年の白人男性だったのです。それは彼らが、人口統計の観点からのみ、それを見ていたからです。このような場合、通常であれば、誰にでも合うものを作りたいと思うはずです。しかし、誰にも合うものは、本当は誰にも合わないのです。この状況で、Saraは何をしたと思いますか?写真だけカットして、ペルソナの他のすべての側面はそのままにしたのです。それでうまくいきました!

ですから、ペルソナを作る時には、クライアントが念頭に置いているイメージと一致しないかも知れないペルソナを、もうひとつ考えておきましょう。いわゆる通常ユーザと同じ注意で、エッジケースを扱うのです。自分で調査しましょう。あなたがデザインする製品の、本当のユーザを見つけてください。結果は、あなたを驚かせるかも知れませんよ。

Agnieszka Urbańska: 仮想の世界でシンプルなフォームをデザインしたり、新たな現実を作ったりすることで、有害なステレオタイプや誤解を克服する機会が得られます。例えば、ユーザに性別を尋ねる場合、男性または女性という2つの回答のみを提供するのではなく、ユーザに性別をカスタマイズさせる方法もあります。

その他に、さまざまな肌の色や性的指向を持った絵文字の実装に着手する、という方法もあります。ユーザに対して仮定をせずに、ステレオタイプな情報を使わずに、ペルソナを作ることが、私たちの役割なのです。世界に対する私たちの認識の小さな変化と多様性への開放性が、社会的な変化をもたらすことさえあるのです。

InfoQ:デザインはレイシズムや差別、偏見、気候の変動などと、実際に戦うことができると思いますか?

Urbańska: 私と同じUXデザイナの友人たちと話をした時、彼らは人種差別や差別と戦うというデザイナの役割については、非常に懐疑的でした。しかし、デザインは偶然の産物ではないのです。私たちの仕事は、人々の生活に影響を与えます。私たちの仕事が実際に世界を変えるきっかけになり得ることを証明する、よい例や悪い例はたくさんあります。

人種差別や偏見との戦いの好例は、例えば、肌の色が異なったり、性的指向が異なる、さまざまな絵文字の使用(この慣行を始めたのは、おそらくFacebookです)などです。

Skłodowska: バタフライ効果と言えます。デザイナだけで、気候変動や差別を止められるとは思えませんから!しかし、デザインしている製品が実際に使用された時、何が起こるかは分かりません。どのように進化するのか、人々の生活をどう変えるのか?Uberのデザイナは、自分たちの作ったものが、人々が街を移動する方法を完全に変えてしまうと思っていたでしょうか?それまでのタクシー運転手をどのような目に遭わせることになるのか、想像していたと思いますか?

先日参加したカンファレンスで、私は、ウェブサイトのコメントやフォーラムのセクションに実装可能なボットのデモを見ました。そのボットは、有害な言語に反応して介入し、人々がより共感を持って互いに話せるようにするものです。それが実際に機能したという事実に、私は感銘を受けました!人々は不快なコメントを抑えて、共通点を見つけようとするでしょう。

InfoQ: デザイナは、自分たちの仕事のやり方をどのように考えて、どのように働き方を改善できるでしょうか?

Urbańska :デザイナは、クライアントの活動や製品戦略、組織内で下された決定に対して、実際に影響力があることを認識しなければなりません。当然ながら、倫理的な価値観の体系を構築するには多くの努力が必要ですが、それによって私たちは、より優れたデザイナに、よりよい人になれるのです。

Skłodowska: チェックリストを使ったソリューションを考えてみましょう。

自分が正しい道にいるかどうかを知るために、答えるべき質問がいくつかあります:

  • あなたのデザインは、人々の対話方法をよりよいものに変えますか?
  • そのデザインは、ユーザが意図しない時間を費やすことを目的としていませんか?
  • このデザインによってユーザが、他の方法では簡単にアクセスできないような、社会的に受け入れられない、あるいは違法なアイテムに、簡単にアクセスできるようになることはありませんか?
  • 自分のデザインを使用している他の人に、満足することができますか?
  • あなたのデザインは、欺瞞、操作、不実な表示、脅威、強制、またはその他の不正な手法を使用していませんか?
  • あなたのデザインには、何らかのデザイナバイアス(性別、政治、その他)が含まれていませんか?
  • そのデザインはユーザのプライバシを保護し、設定に対するコントロールを提供していますか?

いずれも簡単に答えられる質問ではありません。しかしながら、あなたがそれを実行しようとしている、という事実が、すでに小さな勝利なのです。

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