先日のBusiness Applications Summit in AtlantaでMicrosoftは、AI Builderという名称で、Power Platformの新たな人工知能(AI)サービスを発表した。この新サービスは、エンタープライズクラスのデータストアであるCommon Data Service(CDS)上で実行される、Microsoft PowerAppsやMicrosoft FlowなどのローコードアプリケーションやワークフローサービスにAI機能を提供する。AI Builderサービスを使用することで、"一般開発者(citizen developer)"が、自身のソリューションにインテリジェントな洞察と自動化を導入できるようになる、とMicrosoftは主張している。
AI Builerの提供するエクスペリエンスは、PowerAppsとMicrosoft Flowの開発エクスペリエンスから利用できる。ウィザードライクなエクスペリエンスによって、一般の開発者でも、テストや公開の可能なコンテンツを取り込んだAIモデルの開発が可能になる。AI Builerでは、2項分類(Binary Classification)、テキスト分類(Text Classification)、オブジェクト検出(Object Detection)、名刺リーダ(Business Card Reader)、フォーム処理(Form Processing)などの機能が利用できる。
2項分類は、履歴データを使用して将来のビジネス成果を予測するものだ。MicrosoftのゼネラルマネージャであるCharles Lamanna氏が、次のように説明する。
AI Builerの2項分類は、履歴データパターンと履歴結果の関連付けを学習することによって、yes/noビジネス結果を予測するAIモデルです。これらの結果に基づいて、2項分類モデルは、将来的な結果を予測するための学習パターンを新たなデータから検出します。yes/no、true/false、pass/fail、go/ no goなど、選択可能な2つのオプションのいずれかひとつで回答されるビジネス上の問題を探索するには、2項分類AIモデルを使用してください。
イメージ引用: https://powerapps.microsoft.com/en-us/blog/introducing-ai-builder-for-powerplatform/
オブジェクト検出では、画像内で選択されたオブジェクトの計数や検索、識別が可能になる。このテクノロジを使用できるユースケースのひとつは在庫管理の分野だ。オハイオ州シンシナティでPepsiの製造販売を行っているG&J Pepsiでは、このテクノロジを使用して、製品の自動識別と追跡を行っている。同社のエンタープライズビジネスシステムマネージャであるEric McKinney氏は、このテクノロジを使用するメリットについて、次のように説明する。
AI Builerを使用することで、AIモデルを簡単に構築して、オブジェクト検出モデルを使用した製品の自動識別と追跡が可能になりました。現場作業者は単に写真を撮るくらいで、残りの作業はAI Builerに任せることができます。
AI Builerにあるもうひとつの機能は、フォーム処理である。この機能を使用すれば、サンプルフォームや請求書からテキストを抽出することが可能になる。モデルのトレーニングには、最低で5つのサンプルドキュメントを提供すればよい。その後は、実行時にPowerAppsまたはMicrosoft Flowからドキュメントをサービスにロードして、結果セットをキーと値のペアとして返すことが可能になる。
イメージ引用: https://powerapps.microsoft.com/en-us/blog/introducing-ai-builder-for-powerplatform/
AI Builerの各機能は、Azure Cognitive Servicesなど、Microsoftが提供する既存のコグニティブサービスやAIサービス上に構築されている。Microsoftの目標のひとつとして、ユーザがビジネスアプリケーションでAIを活用するための参入障壁を下げる、というものがある。InfoQは、このテクノロジのアーリーアダプタである、Microsoft Power Platformのコンサルタント会社PowerApps911の創設者でMicrosoft MVPのShane Young氏に話を聞いた。氏は次のような話をしてくれた。
AI Builerを使用することで、一般の開発者がAIモデルをトレーニングし、活用することが可能になります。それがどれほど素晴らしいか、多くの人たちが理解していないのではないでしょうか。参入障壁が低くなったことで、AIが企業内に広く浸透するようになります。
IT部門ではなくビジネスユニットから収益の多くを得ているYoung氏は、以前からこのテクノロジに大きな関心を寄せていた。
請求書処理機能を使用した受注アプリケーションの拡張を計画している建設会社や、展示会用アプリケーションをアップデートして名刺スキャンを自動化しようと考えているセキュリティ企業など、これらの機能をロールアウトする計画をすでに持っているユーザもいます。まさに革命的です。
AI Builerは、米国およびヨーロッパリージョン内で、プレビュー版として利用可能である。