従来の組織は、非効率的な作業方法や、体系的に協力できない組織構造に苦慮していることが少なくない。ビジネス上の効果が期待されるプロダクトやサービスをもっと迅速に提供可能な、クロスファンクショナルで自律的なチームを構成して、知的能力を有効化する方法を見出すことが必要だ、とDandy Peopleの創設者であるMia Kolmodin氏は言う。
ACE Conference 2019での講演でKolmodin氏は、非効率な組織に見られる症状について説明した。
長時間働いているのに、目標に到達したという実感がない。フィードバックに対応して計画を変更するよりも、計画に固執し、あくまで計画通りに実行しようとする。ほとんどの時間が会議に費やされていて、実行に移すことができない、等々。
従来のIT組織は、自分たちを中心に周りが構成されているという、裏返しの観点に立っている、とKolmodin氏は指摘する。我々の顧客が誰なのかを理解し、彼らのニーズを中心として自らを構成し、可能な限り効率的にそのニーズを満たすことが必要なのだ。顧客を重視し、顧客中心に構成された自己組織型の組織は、競合相手をはるかに凌ぐ、とKolmodin氏は言う。
顧客重視の方向に進むための方法のひとつは、カスタマジャーニー(customer journey)を定義し、その一部あるいは特定のプロダクトについて、エンドツーエンドでチームが責任を負うような構造的手法を見出すことだ。この方法によって、顧客重視が我々の活動のすべてに浸透し、さらにはそれが組織を形作ることになる、とKolmodin氏は主張する。
詳細な計画やプロジェクトを持たずに組織をリードするというのは、困難なことに思われるかも知れない。しかしながら、ハイペースで複雑な世界では、迅速な意思決定と複雑な問題の解決が可能な自己組織型チームが必要なのだ、とKolmodin氏は言う。全体像の中でチームがどのように貢献し、成功のためには誰とコラボレーションすべきかを理解するためには、連携することも必要になる。
Kolmodin氏は、カスタマジャーニーに結び付いた、6~12か月の戦略的チームミッションの採用を提案する。このアプローチは、仮説に基づいた長期的な方法で作業する余地をチームに与える。それがビジネスと顧客の両方に大きな価値をもたらす、というのがその理由だ。
次にKolmodin氏は、Customer Focus Stairsを紹介した。これは顧客フォーカスのさまざまなレベルを視覚化したもので、Nielsen Norman Groupに大きくインスパイアされている。
最下段には、自分たちは顧客よりも知識が豊富である、顧客がプロダクトの使い方を学ぶべきだ、という考え方がある。階段の最上部では、顧客エクスペリエンスが組織内のすべてに浸透している。
ノルマンニールセングループの主張によれば、組織が1~8の階段を登るのには、平均で10年を必要とする。しかしながら、その実現に全力を傾けて、クロスファンクションな活動を開始し、顧客を中心に自らを位置付け、重要なコンピテンシをチームに取り入れて、顧客を強く意識したアジャイル文化を構築したアジャイル組織においては、それよりもはるかに速く上昇できる場合がある、ということも確認されている。
InfoQは、ACE Conference 2019において、ビジネスの機敏性、リーダーシップに果たすことができる役割、組織におけるイノベーションの実現と維持についての講演を終えた、Mia Kolmodin氏と話をすることができた。
InfoQ: ビジネスのアジリティをどのように定義しますか?
Mia Kolmodin: ビジネスのアジリティとは、その組織が新しい顧客のニーズにどれだけ早く適応できるか、場合によっては顧客のニーズを先取りできるかによって定義されるものだと思います。
これを可能にするためには、従業員の能力に対する信頼と、顧客のニーズを理解して解決できる優秀な人材が必要です。これは大部分の組織にとって、予算編成や人事といった古い管理モデルを変える必要があるため、大きな変革となることが少なくありません。予算編成の面では、ビジネスのアジリティを実現するために、従来の予算編成プロセスのさまざまな部分、目標設定、予測、リソースの割り当てを分離する必要があります。
人事に関しては、フィードバックとコーチング、パフォーマンス、学習、開発、報酬を分離して、ビジネスのアジリティを実現する必要があります。これを行うことにより、戦略を簡単に変更でき、従業員が不必要な官僚主義や政略を弄することなく、組織内の適切な人々と協力して、最も価値のあることに集中できるようになります。
InfoQ: アジリティを向上させる上で、リーダーシップはどのような役割を果たすことができるのでしょうか?
Kolmodin: 優れたリーダーシップは、あらゆる組織において成功の鍵となります。そして、組織が複雑でハイペースであるほど、アジリティが必要になります。単にアジャイルを実践するのではなく、組織自体がアジャイルになるには、優れたリーダーシップが不可欠です。
アジャイルで革新的であるには、人々が何よりもまず、勇気を出して声を上げることに不安を感じない必要があります。次に、優れた決断を迅速に下すためには、何が起きているのか、どこに向かっているのか、ということの透明性が必要です。これらはいずれも、優れたリーダーシップがなければ不可能なのです。
InfoQ: 組織にイノベーションを実現し、それを維持するために、どのようなことを提案しますか?
Kolmodin: 従業員とチームの成長をサポートしてください。彼らが組織の戦略を理解できるようにして、戦術的な決定を下す権限を与えるのです。そうすることで、学習の可能な組織を作り上げて、従業員の知力を結集して顧客とビジネスの問題を解決することが可能になります。あなたのビジネスと従業員は、現在だけでなく、将来にわたって成功を収めるでしょう。
このインタビューで説明されているトピックに関するインフォグラフィックポスターが用意されており、InfoQ読者は無償でダウンロード可能である。