WeWorkエンジニアリング担当副社長のRandy Shoup氏はCraftCon 2019で、"Moving Fast at Scale"と題して講演し、イノベーション、ビジネス価値、品質、あるいはチームの自律性といったものを犠牲にすることなく、大規模かつ迅速なチームを作り上げた氏の方法を論じた。
Google、eBay、そして現在のWeWorkにおける、エンジニアリングチームとの長年の経験に基づいて、Shoop氏は、スケールアップのための最善のアプローチは目標を絞った小規模チームから始まるとした上で、チームが小さければ小さいほど、フィードバックをより早く調査し、適応し、対応することが可能になる、従って開発、品質、運用すべての面において、その分野に必要なスキルセットをすべて備えた、クロスファンクショナルなチームを維持するべきだ、と提案した。
さらにチームには、ビジネス目標との直接的な整合性や、ビジネス目標と顧客価値を直接トレースしたインクリメンタルなソフトウェアを提供することなども必要だ。そのようなチームには、エンジニアリングや開発のパフォーマンスだけでなく、エンドユーザにとって重要なビジネスメトリックを測定することが求められる。
チームや機能が成長して、組織がスケールアップする必要が生じた時にShoup氏は推奨するのは、細胞有糸分裂の生物学的類似性に倣ってスケールアップすることだ。これはつまり、チームやチームに内在する複雑性をいたずらに拡大するのではなく、チームを分割し、独立的に運用して、ビジネス上の問題の解決に集中できるようにするという意味である。
バックログの約80%がチームの領域内でデリバリ可能であれば、そのチームは成功に向けて適切にセットアップされているといえる、とShoup氏は言う。残る約20%の仕事はチームの領域を越える必要があるため、大企業では戦略的なイニシアチブで構成されることになる場合もある。組織内の複数のチームにまたがったプロジェクトやデリバリを避けるべき大きな理由は、それがフィードバックの速度や顧客への価値提供の妨げとなるからだ。定義された責任領域を中心として構成し、単一のアプリケーションないし関連するアプリケーションセット、あるいは単一のサービスないし関連するサービスセットの開発に集中しなければ、ハイパフォーマンスなチームは実現しない。
Shoup氏が自身のチーム内で促進している、もうひとつの重要な組織的実践は、"説明責任を伴った自律性"だ。氏はチームに対して、顧客にとって重要で、明確な基準による測定の可能な、極めて明確なビジネス目標を与える一方で、そのソリューションについては指示しない。代わりに氏は、ビジネス上の問題について説明し、チームの領域内における完全な自主性を確保した上で、チームが自己組織化して、ビジネスの期待に最も適した技術ソリューションを自ら調査し、その結果に自ら責任を負うようにするのだ。
Shoup氏によれば、自律性の議論は、問題の解決方法において最も重要なものである。なぜなら、それは組織が解決しようとしている問題に直接関係しているからだ。チームが適切なソリューションで作業し、無駄な活動やプロダクトの増加を避けるためには、問題が何であって、何が最良のソリューションであるかを定義する上で、ビジネスと緊密に連携することが有用である。場合によっては、問題の再定義をビジネスに求めて、最もタイムリで価値のあるソリューションに的を絞ることも必要になる。これは、氏が規律ある問題解決(disciplined problem-solving)と呼んでいる、大規模な組織でイノベーションとスピードを実現するための最も重要なプラクティスだ。
Shoup氏の講演"Moving Fast at Scale" のビデオ録画は、YouTubeのCraftConfチャンネルで見ることができる。