先日のブログ記事でHashiCorpは、チームがインフラストラクチャ・アズ・コードのワークフロー管理を行うオープンソースプラットフォームであるTerraform Cloudのフルリリースを発表した。このオーケストレーションはクラウド非依存のツールを介して行われるため、反復可能な自動化による生産性の向上が可能になる。今回の発表は、2019年5月に発表された、同社SaaSプロダクト内の中央リポジトリにクラウドインフラストラクチャの状態を保存するRemote State Managementに続くものだ。
Terraformは2014年にオープンソースプロジェクトとして始まったもので、25,000件のコミットを実施した1,300人以上のコントリビュータによるコミュニティを擁している。当初は個々の開発者に焦点を当てていたが、その後、開発者のチーム間で使用可能なエンタープライズツールへと進化を遂げている。
Terraform Cloudを使用することで、インフラストラクチャ管理とバージョン管理を通じて、チームのコラボレーションと状態構成を共有できるようになる。この管理によって依存関係のマップが可能になり、レビュー/承認プロセスも含んだ自動プロビジョニングが実現する。
Terraformプロジェクトを使用する場合の課題のひとつは、状態ファイルの管理である。HashiCorpのテクニカルプロダクトマーケティングマネージャであるAnthony Davanzo氏が詳しく説明している。
Terraform Open Sourceの既存ユーザの場合、状態ファイルは、デフォルトではマシンにローカルに保存されます。従って、インフラストラクチャ上でチームメンバと共同作業を行うには、そのファイルを慎重に共有し、チームメンバが変更を加えた時に相互に更新されるように運用する必要があります。状態ファイル/ワークスペースの数と共同作業者の数が増えれば、その作業はさらに複雑なものになります。
Terraform Cloudサービスでは、クラウドインフラストラクチャの状態ファイル管理に対処するための基本的な変更が導入されている。HashiCorpの共同設立者でCTOのMitchell Hashimoto氏が、 Terraform Cloudを採用するメリットのいくつかについて説明している。
Terraform Cloudは多くのことを簡略化します。まず、状態ファイルは、ユーザにはほとんど見えなくなります。依然として存在はしていますが、ユーザに代わって私たちがそれを管理するのです。第２に、このアクセスに対して、これまでより多くのセキュリティを提供できるようになります。状態ファイルにアクセスするユーザを確認したり、アクセス可能なユーザを制御することが可能です。さらにTerraform Cloudは、状態ファイルのバージョン管理とバックアップも行うため、時間を遡ってインフラストラクチャの過去の様子を確認したり、何か問題が発生した場合は以前のバージョンを復元したりすることもできます。
Terraform Cloudは、インフラストラクチャのニーズに対応する手段として複数のクラウドを運用する企業が抱える、さまざまな課題を解決する。そのような課題のひとつは、すべてのクラウドインフラストラクチャに対して一貫した管理を行うことだ。Terraformによって、Microsoft Azure、AWS、Google Cloud Platform、VMware、Alibaba Cloud、Oracle、Kubernetes、Datadogなどのサポートを含む、多数のクラウドベンダにわたるインフラストラクチャを構築し、管理し、運営することが可能になる。
Terraform CloudにはFree、Team、Governanceなど、複数のティアがある。Freeティアでは5人までのユーザが、チーム状態管理の下でコラボレーションできる。TeamバージョンはFreeバージョンを拡張し、Role Bases Access Control（RBAC）を通じたチーム管理機能を追加で提供する。一方のGovernanceバージョンでは、ポリシ・アズ・コードを適用して、複数のクラウドに対して組織全体で一貫したプラクティスを実施する。さらにGovernanceバージョンには、インフラストラクチャをデプロイする前にコストを予測する、コスト見積機能が含まれている。
さまざまなTerraformバージョンの概要については、Terraformのライセンスページを参照して頂きたい。