Develop Denver 2019で基調講演を行ったRachel Carlson氏が、ハイテクスタートアップの設立場所として一般的であるサンフランシスコ以外の場所を、起業地として選択した理由について語った。氏の考えには当初、投資家による抵抗があったが、コロラド州デンバーにGuild Educationの本部を置いたことで多くのメリットがあった、と氏は考えている。特に氏は、デンバーのアクティブな開発者コミュニティを、すべての人たちに役立つソリューションの構築に自らのスキルを利用するという、テクノロジ活用モデルのひとつとして捉えている。
Guild Educationは、"アメリカの労働者のために、教育を通じて機会を解放する"というミッションの下で2015年に設立され、雇用主が提供する教育のメリットを従業員が享受するための支援を行っている。Certified B Corporationとして営利を目的とするこの企業には、コミュニティにプラスの影響を与えるという明確な目標がある。大学は学生を募集するためにGoogleやFacebookの広告をお金を払って購入し、高額な授業料の形でそのコストを学生に転嫁している、とCarlson氏は指摘する。このような状況や、その他の非効率的なシステムの改善にはテクノロジの利用が可能であり、デンバーは技術コミュニティが社会問題に取り組む上で主導的な役割を果たすことができる、というのが氏の考えだ。
InfoQはCarlson氏に会い、シリコンバレーから離れた場所でハイテクスタートアップを設立した経験、ハイテク企業の多様性、包括性、コミュニティに関する氏の考え方などについて議論した。
InfoQ: ハイテクのスタートアップといえば、ほとんどの人たちは、サンフランシスコやシリコンバレーに拠点を置く企業を想像するのですが、西海岸で会社を始めようとは思いませんでしたか?
Rachel Carlson: 最初はスタンフォード大学のキャンパスにGuildを設立したのですが、人を雇う段階にきた時点で、腰を上げることにしたのです。高度に成長したテクノロジ企業と、私たちのミッションに参加する意思を持った前途有望な社員によるミッション主導型コミュニティを両立する技術的才能のある町に、Guildを構築することに決めて、結果的に2016年、デンバーに会社を移転することを選択しました。デンバーは、野心的で意欲的なリーダが犠牲を払うことなく、高い影響力と高い成長キャリアを追求できる町であると確信しています。
InfoQ: 国の中央であるコロラド州デンバーを本社に選んだ理由は何ですか?他にはどこを検討しましたか?
Carlson: コロラド州出身者として、デンバーの人材プールが同等の都市と比べて同等か、あるいはそれ以上のものであることは知っていました。デンバーの起業家精神も知っていましたし、新進ビジネスが繁栄できる場所であることも分かっていました。オレゴン州ポートランドやテキサス州オースティンなど、最初は他のいくつかの都市も検討しましたが、デンバーの人材プールと新しい人材を引き付ける能力は、検討のかなり早い段階で明らかになっていたのです。
最初の大規模な採用広告用の職務説明 — ディレクタとエンジニア — をいくつかの都市に掲載した結果、最高の候補であるJessica Rusinをデンバーで見つけたことが、取締役会にデンバーへの移転を説得する上で一役買ってくれました。彼女(そう、エンジニア部門のリーダも女性です!)は現在、GuildでエンジニアリングのSVPを務めていますが、3年間でチームを40人以上に拡大しています。
InfoQ: ハイテク企業を設立する都市を選ぶ場合に、考慮すべき重要な要素は何だと思いますか?デンバーを拠点にしていることで、良い面と悪い面のトレードオフはありますか?
Carlson:デンバーが沿岸都市のメリットをすべて享受できる都市であることを幸運に思っています — 素晴らしい仕事、アウトドア、素晴らしい人たちの存在が、交通問題や質の高い保育と学校がないこと、高い生活費などの苦痛を取り除いてくれるのです。2015年の初め、シリコンバレーからの退去を希望する理由を初期の投資家たちに納得させるのは大変でした … しかし今では、投資家たちの方が、デンバーのような場所を挙げて、シリコンバレー外にスタートアップ立ち上げることを奨励するようになりました。状況は変わったのです!
InfoQ: Guildの"ダブルボトムライン・ビジネスモデル"と、CEOとして利益を上げて影響を与えるという矛盾した目標をどのようにバランスさせているのか、説明してください。
Carlson: Guildでの私たちは、大学の学位や資格を持っていない6,400万人のアメリカ人に対する機会の提供に取り組んでいます。私たちはすべての人々が、よりよい未来の機会に値すると信じています — その一部は、教育と生涯学習によって提供されるものです。さらに重要なこととして、私たちは、企業が利益と使命との間でトレードオフを行う必要はない、と考えています。Guildの雇用者側のパートナたちは、私たちと一緒に教育給付プログラムを提供する上で、従業員のためになることを行えばよい結果が得られる — ビジネス目標を達成し、価値のある従業員エクスペリエンスを生み出すことができる、ということを理解してくれています。
InfoQ: ハイテク企業の女性創業者として、どのような課題に直面しましたか?その後の年月で、何か改善されたことはありますか?
Carlson: 私たちは、Guildで働く人たちの多様性の高さを誇りに思っています。男性/女性のスプリットが50/50に近く、女性中心のリーダシップチームであることです。これによって、すべての人の声を聞き、意思決定プロセスに組み込むことのできる、多様性を持った作業チームを作り上げる方法に対して、独自の視点を得ることができました。
InfoQ: ハイテク企業をリードしようとしている、他の女性や過小評価されている人々に対して、何かアドバイスがありますか?
Carlson: Guildにおいて、私たちは、才能はすべての人に平等であると信じています。ですがチャンスは平等ではありません。
起業家としての私たちは、考えを同じくする投資家と仕事をすることができて幸運でした。企業の規模を拡大する上で、これは非常に重要なことです。投資の価値と同じように、会社の価値を信じてくれるパートナや投資家を探すことを、他の創業者たちには勧めたいですね!