Appleは、エッジデバイス上で実行するAIモデルを構築するスタートアップXnor.aiをおよそ2億ドルで買収した。
この話は「取引について知る情報源」に基づき、GeekWireが最初に報じた。XNor.aiの技術は、クラウドにデータを送ることなく低リソースのエッジデバイス上でAIモデルを実行することにフォーカスしているため、今回の買収はAppleのデータプライバシー戦略に関係している、と多くの評論家は推測する。だがGeekWireなどが報じているように、Appleは買収に対するお決まりの回答をしている。
Appleは時に小さなテクノロジー企業を買収しますが、通常、その目的や計画についてお話しすることはありません
Xnor.aiは2017年にAllen Institute for AI& (AI2) のインキュベータープログラムからスピンアウトし、シアトルのVC Madrona Venture Groupから資金提供を受けている。同社の共同創業者であるAli Farhadi氏は、ニューラルネットワークの計算要件を削減する彼のチームの研究について、2016年のNew York Timesの記事で取り上げられている。Xnor.aiの最近の製品には、コンピュータビジョン・ニューラルネットワークを動かすソーラーパワーのFPGAチップや、Wyzeセキュリティカメラに組み込まれた人物検出アルゴリズム(このパートナーシップは最近、突然終了した)がある。
Xnor.aiの技術にある重要なアイデアは、ニューラルネットワークの重みと操作の量子化だ。これはモデルの数値を表現するのに必要なビット数を削減する。量子化はTensorFlowやPyTorchなど多くのディープラーニングフレームワークにある機能だが、Xnor.aiのチームは、最先端のコンピュータビジョンモデルの主要コンポーネントである畳み込み層の各重みとアクティベーション値を、たった1ビットで表現するという極端なアプローチをとった。そうして得られたニューラルネットワークは、完全な精度のモデルと比べてわずか2.9%の精度低下で済むという。メモリが32倍削減できるのに加えて、データを1ビットとして表現することにより、シンプルな論理操作であるXNORで計算を実行することができる。このことは社名の由来になっているだけなく、ビジョンモデルが通常のCPUで58倍高速に実行でき、GPUの必要性がなくなることを意味している。
メモリと計算リソースが削減できるということは、セキュリティカメラや携帯電話といったリソースおよび電力の制約があるデバイスでもモデルが使えるということだ。このオンエッジ処理は、プライバシーに関心がある人々にとって魅力的だ。AI処理のためにデータをクラウドに送信することは、消費者や規制当局にとって大きな関心事となっており、それが不要になるためだ。Apple CEOのTim Cook氏はスタンフォード大学での2019年卒業式のスピーチで、プライバシーの重要性を強調しており、このことが買収の動機ではないかと思わせている。一方、2019年のCNBCのインタビューでCook氏は、Appleは「平均で2、3週ごとに」会社を買収しており、その年の前半に約20ダースの会社を買収した、と述べている。Appleは最近、「テックジャイアント」のAI買収件数でGoogleを追い越し、GANs (generative adversarial networks)の発明者であるIan Goodfellow氏など元Googleの著名なAI研究者を採用している。
Xnor.aiは、大手テクノロジー企業によって買収された、2番目のAI2インキュベーター発のスタートアップだ。2017年に、Baiduがチャットボットフレームワークを開発するAI2スタートアップKitt.aiを買収している。WebサイトにはKitt.aiとXnor.aiのほか、資金提供されている3つのAIスタートアップが挙げられている。