先日のブログ記事でAmazonは、AWS Outpostsのリリースを発表した。シングルベンダによるコンピュートおよびストレージソリューションの持つメリットを、AWSユーザに提供するものだ。Outpostsは、アーキテクチャ的にはAmazonのパブリッククラウドコンピュートアーキテクチャに基いているが、ユーザ自身のデータセンタにホストされるシステムである。このソリューションによってユーザは、AWSテクノロジのメリットを享受しながら、ローカル処理と低レイテンシといった要件への対処が可能になる。ユーザがオンラインでインフラストラクチャを発注すると、Amazonがモジュール式のコンピュータラックを出荷し、トレーニングを積んだAWSの技術者が配置されて、セットアップとインストレーション検証を実施する。
Outpostsのハードウェアは、AWSデータセンタで運用されているものと同じである。AWS OutpostsチームのエンジニアリングリーダであるAnthony Liguori氏は、パブリッククラウドとOutpostsを次のように比較する。
AWSのインフラストラクチャラックは、完全にアセンブルされて、最終的な場所への配置が可能な状態でデータセンタに配送されます。配置が終われば、後は電源とネットワークを接続するだけで、自動的にEC2インスタンスが使用可能になり、バーンインテストが実行されます。AWS Outpostsは、このエクスペリエンスを再現します。ラックに電源とネットワークを供給するだけで、構築プロセスはすべて自動化されているのです。
Amazonのラックは、他のインフラストラクチャベンダのものに比較して、信頼性と効率性に配慮した設計が行われている、とLignouri氏は説明する。
このラックでユニークと思われるのは、バスバーが背面に、パワーシェルフが中央に配置されている点だ。一般的なサーバラックではサーバ毎にパワーサプライが配置されているため、これらのコンポーネントが定常的に故障することによる故障率の高さと、AC電源をDC電源に変換する際の効率の低さという問題がある。Outpostラックでは、集中型の冗長電源変換ユニットとDC分散システムをバックプレーンに配置しており、サーバを所定の場所に差し込むだけで使用可能になる。このアーキテクチャの採用には、信頼性、コスト、エネルギ効率性、サービス性といったメリットがある。
イメージ引用: https://aws.amazon.com/blogs/aws/aws-outposts-now-available-order-your-racks-today/
Outpostsのラックはユーザのデータセンタ内に配置されるが、インストールされたインフラストラクチャの監視やアップグレード作業はAmazonが引き続き実施する。ハードウェア障害が発生した場合には、モジュラ構造により、ユーザのロケーションにおいてダウンタイムなしの交換が可能である。
管理者やDevOpsエンジニアは、パブリッククラウドで使用しているAPIやツールや運用プラクティスがOutpostsでも使用できることから、既存のAWSスキルをOutpostsに転用することが可能になる。CI/CDパイプラインの構築や、一部のコンポーネントをAWSパブリッククラウドで、一部をオンプレミスでというハイブリッドアーキテクチャの構築もサポートされている。
ラックに格納する基盤インフラストラクチャコンポーネントの選択を通じて、ユーザには多くのオプションが用意されている。OutpostsはIntelプロセッサを使用したNitroベースのEC2インスタンスとして、C5、C5d、M5、M5d、R5、R5d、G4、I3enをサポートする。それぞれのタイプを組み合わせたり、必要に応じてインフラストラクチャを追加したりすることも可能だ。
ストレージとネットワークに関しては、OutpostsはEBS gp2と最大2.7TBの汎用目的SSDストレージをサポートし、各Outpostsにネットワークデバイスがペアで配備される。各ネットワークデバイスは最大400Gpsの接続能力を持ち、1 GigE、10 GigE、40 GigE、100ギガビットのファイバ接続をサポートする。
Outpostsは現在、米国、EU各国、スイス、ノルウェー、日本、韓国、オーストラリアなど、限定された国で提供されている。