先日、COVID-19の研究と対策へのデータ分析の利用について議論する仮想カンファレンスが急遽開催された。COVID-19感染の拡大と大学のポリシに従うため、元々予定されていたカンファレンスはキャンセルされ、"COVID-19 and AI: a virtual conference"というタイトルの仮想カンファレンスに代えられることになったのだ。カンファレンスは4つの主要セッションに分割され、それぞれが"Landscape and Framing"、"Social Impacts and Biosecurity"、"Tracking the Epidemic"、"Treatments and Vaccines"と名付けられた。注目すべき講演者は、米国カリフォルニア第7下院選挙区選出の連邦議会議員であるAmi Bera博士と、データ科学者とマシンラーニング研究者のための競合プラットフォーム(competitive platform)Kaggleの創設者兼CEOであるAnthony Goldbloom氏だ。
マシンラーニングとデータ科学の側からは、医学と生物学データ科学の准教授(生物医学情報学)であるNigam Shah氏が登壇し、60人以上のデータ科学者による今回のパンデミックに関する分析作業について論じた。Shah氏はデータ科学者を対象に、重要な3つの領域 — 必要病床数などの作業計画(operational planning)、テスト対象患者選択などの臨床ケア判断(clinical care decisions)、ウィルスに対処する上で最も有効な薬はどれか、などの調査質問(research questions) — について議論した。2つのモデルが存在する、とShah氏は言う。伝染のダイナミクスを捉えるSEIRシミュレーションと、日毎のトレンドを捉える簡易計算(simple calculator)である。SEIRシミュレータには極めて正確な入力が必要であるのに対して、簡易計算は低次元の入力で容易な推測が可能になる。
セッションIIIでは、ルシールパッカード小児病院(Lucile Packard Children's Hospital)の小児科准教授であるJason Wang氏が、ビッグデータを活用した台湾のCOVID-19伝染対応について講演した。台湾に到着した人々は、直後に実施される調査によって税関で高リスクと低リスクに分類された。国民健康保険研究(National Health Insurance Research)データベースと税関および移民局のデータベースをリンクすることにより、医師が治療する時点で、潜在的な高リスク患者の情報が事前通知されていた。早期の対応が、日本より前に台湾に寄港したダイアモンドプリンセス号に関わる潜在的リスクを低減した。台湾政府はダイアモンドプリンセス号の旅行客が訪問した地域の住民に対して、潜在的リスクに関する警告文書を送付した。
セッションIIIの後半では、ボストン小児病院(Boston Children's Hospital)のチーフイノベーションオフィサでハーバード大教授のJohn Brownstein氏が、HealthMap、WeChat用のデータマイニングツール、ローカルニュースやメディアについて、中国におけるCOVID-19症例の増大との関連について論じた。氏らはワシントン大学やオックスフォード大学、その他の大学の広範なコラボレーションを活用して、可能な限りの症例をラインマッピングした。さらに氏らは、公開されているデータセットを使用して、中国のCOVID-19流行に対する人の移動と制御対策の有効性についての評価も行っている。その他にも、温度計測を行うThermiaは中国で、NLPを使用した症状チェッカはマサチューセッツ州で、それぞれデプロイされている。
Wu Tsai神経科学研究所(Neurosciences Institute)とスタンフォード大学心理学部のスポンサーによるSpring 2020 Human-Centered AIカンファレンスは、当初は心理学と神経科学、そして人工知能のインタラクションについて論ずることが目的だった。