先日のNarureで公開された論文の中で、MITの研究者らが、大規模量子チップを開発するために統合の可能な"人工原子(artificial atoms)"を生成するプロセスについて説明を行っている。この証明のため研究者らは、これまでで最大となる128キュービットのチップを構築した。
新チップのキュービットは、ダイアモンドの欠陥(defect)から作成した人工原子で、可視光とマイクロ波を使って量子情報を運搬する光子を放出させることができる。
ダイアモンドの欠陥はゲルマニウムやシリコンによって置き換えられ、スピン状態がキュービットで表される量子情報に関連付けられた光子源(photon emitter)として機能する。
このアプローチは新しいものではないが、残念ながら数千から数百万キュービットへと拡張可能なシステム構築に適したものではない、と研究者らは述べている。そこで、大規模チップをダイアモンドで構築する代わりに、半導体製造技術を活用することで、ダイアモンドの小規模なチップセットを大規模でハイブリッドなモジュラチップに統合することを検討中である。このプロセスは従来の集積回路に類似しているが、電子に代わって光子を使って情報を伝搬する"フォトニック集積回路"を使用する。
フォトニクス(photonics)は、回路内のモジュール間での光子のルートとスイッチを低損失で行う基盤となるアーキテクチャを提供する。従来の集積回路のようなシリコンではなく、この回路フォームでは窒化アルミニウムを使用する。
前述のように研究者らは、このアプローチを使って、ひとつの窒化アルミニウムプラットフォーム上で128キュービットを接続することに成功した。光ルミネセンスの効果によって、キュービットは安定かつ長寿命であると同時に、スペクトル的に分離できないようにさらなる調整を行うことも可能である。
論文の著者らが説明しているように、量子コンピュータの実現には多数の量子ビットのもつれをコントロールする方法の発見が重要な課題であることを考えれば、この成果の重要性は簡単に理解することができる。
ただし、この成果は、多重量子リピータや汎用量子コンピュータを構築する新たな方法への1ステップに過ぎない。真のブレークスルーにするためには、克服しなければならない課題がまだたくさんある。次のステップは、これらのキュービットをコントロールし、それらの間の相互作用を誘発する方法を見つけることだ、と研究者らは言う。さらに、モジュラ量子コンピュータにおいてキュービットを長距離伝送可能にするために使用可能な、より大きなチップを構築するためには、ハイブリッド量子チップとオプトエレクトロニクスコンポーネントとの統合が可能であることを示す必要がある。