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”守破離”によってチェンジエージェントを組織内に確立する

原文(投稿日:2020/07/16)へのリンク

守破離(Shu-Ha-Ri)は漸進的な成功を収めるための基本をマスタし、ファンダメンタルを理解することを通じて、アジャイルになるための習得パスを示してくれる。自身のチェンジ・エージェント(Change Agent)を持つことによって企業は、変化する市場ニーズに素早く対応し、競争力を獲得することが可能になる。

SpeechmaticsのスクラムマスタであるRitika Singh氏はAginext.io 2020で、アジャイルを極めるための守破離の道について講演した。

守破離は、基本の習得を語った日本の武道のテクニックである。守破離には3つのステージがある、とSingh氏は説明する。

守(Shu) — 逸脱や疑問を持たず、教えに従うステージ。

破(Ha) — 基本的なテクニックとその用法を理解し、目的に応じた逸脱が可能になるステージ。

離(Ri) — テクニックに習熟し、独自のアプローチと適用方法を見出すことが可能になったステージ。

チェンジ・エージェントとは、組織の変革過程において、その変革を支援できる組織内の人物である、とSingh氏は言う。ほとんどの企業は、その分野の専門家と契約することで、組織の文化を観察し、変革を実現する方法を評価するという、変革の支援を受けている。しかしながら、まず基本をマスタし、その上で必要に応じて変革を行うという、守破離の学習ステージを用いることで、組織独自のチェンジエージェントを持つステージに到達することが可能になる、とSingh氏は説明する。

その上で氏は、変化する市場ニーズに素早く対応し、競争力を獲得することを長期的に支援するためには、独自のチェンジエージェントを持つべきだ、とアドバイスする。我々は基本をマスタするプロセスと、漸進的な成功を収める上でファンダメンタルを理解することの重要性を信頼する必要がある、と氏は言う。

このような文化は、組織として注目しなければならないものです — 小さな結果を生み出すことによって、企業のプロセスに対するステークホルダの信頼を勝ち取ることが必要なのです。

例として氏は、アジャイルのレトロスペクティブのマスタを取り上げる。

レトロスペクティブの必要性を理解しなければ、その実践が成功することはありません。何のために、どのように実行するか、という基本を全員が理解しない限り、それが行為として定着することはあり得ないのです。

InfoQはRitika Singh氏に、アジャイルの心(Heart of Agile)、アジャイルの真髄を極めるための守破離と"心(Kokoro)"の活用、市場のペースへの対応と競争力のための変革などについて話を聞いた。

InfoQ: 日々のアジャイル活動を計画する上で、Alistair Cockburn氏の提唱する"Heart of Agile"をどのように用いればよいのでしょう?

Ritika Singh: Heart of Agileでは、アジャイル文化をCollaborate(協力)、Deliver(提供)、Reflect(反映)、Improve(改善)という4つのステージに単純化しています。日々のアジャイル活動を振り返れば、すべてがこれら4つの命題を中心としていることが分かるはずです。

アジャイル活動を詳細に検討すれば、私たちが達成しようとしているものはすべて、チーム内やチーム間のさらなるコラボレーションなのです。日々のスタンドアップに始まり、リファインメント、すべての必要なステークホルダとコラボレーションするためのスプリント計画 — これらすべてが、チームのデリバリをより早く、よりシンプルなものにします。これに続くのがレトロスペクティブで、チームや組織が内省し、改善し、結果としてパフォーマンスを向上する機会を提供してくれます。ですから、全体としてHeart of Agileは、アジャイル活動を非常によく表していると言えるのです。

InfoQ: "アジャイルとは何か"ということに関して、組織内にはさまざまな観点があるかも知れません。それらへの洞察を得る上で、このマッピングはどのように役立つのでしょうか?

Singh: マッピングは私たちに、内容の定義されたセレモニをセットとして提供します。この一連のセレモニは、チームや個人が意見を述べる機会であると同時に、ステークホルダが別の角度から状況を確認するための機会にもなるのです。全員がそれぞれの意見を聞き、意見を話し、透明性と開放性を持ち、信頼を得る機会を提供してくれます。これらがすべてセレモニを通じて構築されることによって、さまざまな観点への洞察を得ることが可能になるのです。

InfoQ: アジャイルとビジネスアジリティの習得を達成するための学習パスを確立する上で、守破離はどのように役立つのでしょうか?

Singh: アジャイルやビジネスアジリティを習得するためにどう役立つのか、簡単な例を使って説明しましょう。例えば、スタンドアップです。

守: チームはスタンドアップを必ず実施して、その3つの基本である"昨日は何を行ったか"、"今日は何を行う予定か"、"問題はないか"について話し合わなければなりません。チームが熟達するまでは、これを継続して行う必要があります。

破: このステージでは、第4の確認事項として"その他の課題"を加えたり、あるいは"walking the board"スタイルに完全に変更するなど、要件を満たすためにある程度の逸脱を行うことが可能です。

離: このステージでは、情報のフローが自然に起きているため、スタンドアップの前に考える必要さえなくなっています。チームの一部として取り込まれた状態が、このステージです。

つまり、これらの学習ステージないしパスを使用することで、まずビジョンと動機を理解するためのコラボレーションを行い、次に積極的な意図を持って実践し、その後にニーズに基づいた内省と改善を行うという、Heart of Agileを会得することによるアジリティの学習活動が実現するのです。そして社内の人々が"離"のステージへと到達し始めれば、新たなことを始める時が来た、ということなのです。

仕事の方法は革新的になります — 組織のビジョンや戦略を十分に理解し、効率的に仕事を行う方法を自ら見つけることができるようになるのです。そして、そこから期待できるのは、組織が自らのチェンジエージェントを持つ、ということなのです。

InfoQ: "心(Kokoro)"とは何でしょう、守破離をどのように拡張すればその習得を達成できるのでしょうか?

Singh: "心"は基本的に、あらゆるテクニックの基本をマスタしたステージです。守破離の延長線上にあり、"離"のステージの次に来るものが"心"なのです。"心"はHeart of Agileそのものであり、協力(Collaborate)し、提供(Deliver)し、反映(Reflect)し、改善(Improve)することです。"心"は基本として、ファンダメンタルを完全に(あるいは私たちが基本の習得(mastering the basis)と呼んでいるものを)理解すれば、あらゆるプラクティスをマスタすることができる、というコンセプトを反映しています。

ですから、私たちがコラボレーションとレトロスペクションの概念を理解しているのであれば、たとえ意識しなくても、それを毎日の仕事や個人的な生活に活かすことが可能になるのです(すでに私たちの一部になっているので、何の練習も必要ありません)。

InfoQ: 市場のペースに適応して競争力を獲得しなければならない企業に対して、何かアドバイスはありますか?

Singh: 全体を通じての透明性を持つこと、明確なビジョンを持ったリーダがいること、ステークホルダの声を聞くことが非常に重要です。そして最も重要なのは、投資(財務的、非財務的の両面で)に関してオープンであることです。また、全体を通じてオープンと信頼の文化を持つことも、組織が競争上の優位性を達成する上で有効です。

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