re:Invent 2020の最初の基調講演の中で、AWSは、Amazon Aurora Serverlessの次期バージョンをプレビュー公開すると発表した。Amazon AuroraのMySQL 5.7コンパチブルエディションの新たなサーバレスバージョンには、1秒未満のスケーリング能力を備え、マルチAZのサポート、グローバルデータベース、リードレプリカ(read replica)が導入されている。
製品紹介のページには、おもな改善点として、数十万件のトランザクションにミリ秒単位で対応するスケール能力や、小容量への調整時に実行される自動スケーリングなどの機能が挙げられている。2バージョンのおもな違いは、容量拡張の実行方法にある。Aurora Serverlessv2は、スケールアップ毎にインスタンスサイズを倍増させるのではなく、0.5 Aurora Capacity Uni(ACU)単位でスケールする。さらに新サービスは、複数のアベイラビリティゾーンをサポートする他、現在は標準のAmazon Auroraのみで利用可能なエンタープライズ機能が追加される予定である。既存プロダクトに新機能をインクリメンタルに追加せずにバージョン2を導入するというのは、AWSとしては異例だが、新Aurora Serverlessの自動スケールとデザインが大きく変わったことを強調している。プレビュー版ではあるが、開発者やデータベース専門家からの反応は良好で、新しいマネージド・サーバレス・リレーショナルデータベースへの高い関心が見て取れる。シニアOracleデータベーススペシャリストのChristian Abdel-Nour氏は、次のようにコメントしている。
非クラウドシステムがリソースの過剰消費と不足の間で揺れ動く様子に失望していたところだったので、Aurora Serverless v2のスケーリングのメリットをうたったプレゼンテーションには目を見張るものがありました。
AlertMeのCTOでAWS Serverless HeroのJeremy Daly氏は、何件かの詳細なテストを実施した上で、"Aurora Serverless v2: The Good, the Better, and the Possibly Amazing"という長編のレビュー記事を書いた。記事の中で氏が強調しているのは、以前のAurora Serverlessにあった制限と、新バージョンのメリットだ。
1年半以上にわたって、このプロダクトの改善に注目してきましたが、スケールアップとダウンの速度、フェールオーバに要する時間、Aurola Provisioned Cluster機能の欠如など、まだ多くの問題が残っていました (...) Amazon Aurora Servless v2の導入で、それらがすべて変わります。やっと入手したプレビュー版を壊してみようと、数時間を費やしました。最初の印象ですか? "これは究極の解決策(silver bullet)かも知れない!"というものです。(...) 素晴らしいスケーリング能力に加えて、グローバルデータベース、マルチAZデプロイメント、リードレプリカといったAuroraの機能が幅広くサポートされています。
プレビュー版は新しいスケーリング特性にフォーカスしているため、高度な新機能の多くはまだ利用することができない。例えば、Data APIやAuroraグローバルデータベース、パフォーマンスインサイト、Auroraマルチマスタ、RDSプロキシ、ポーズキャパシティ(pause capacity)機能などは用意されていない。
新サービスで課題となりそうなのは、その価格設定だ。Aurora Serverless v1からv2に移行することにより、データベースコストを最大90パーセント(ピークロード時との比較で)削減できる、ほとんどのユーザにとって費用の節約になる、とAmazonは主張しているが、デプロイメントやデータベースパターンが違っていることから、直接的な比較は困難である。Jeremy Daly氏は言う。
この事実は隠せません。Aurora Serverless v2のコストは非常に高いと思われるのです。事実、v2のACUの価格はオリジナルのv1 ACUの2倍です (...) ただし、コストの計算方法については、いくつかの重要な違いがあります。そのひとつは、v2のACUがインクリメンタルであるのに対して、v1ではインスタンスサイズを倍増する必要のあることです (...) もうひとつの違いは、スケールダウン時間につ関するものです。
プレビューは現在、US East(北バージニア)のみで提供されており、MySQL 5.7をサポートする。利用にはプレビュー版の使用許可が必要だ。