CentOSの創始者であるGregory Kurtzer氏が、2020年12月、Rocky Linuxプロジェクトをスタートした。目標は、Red HatがCentOS Linuxの方向性を変えると発表したために生じたギャップを埋めることだ。安定したオペレーティングシステムから、リリース前のコードをテストするためのストリームへ、というこのシフトによって、多くの企業は、自らのニーズに合ったLinuxディストリビューションのひとつを失うことになる。
Kurtzer氏が最初に立ち上げたCaos Linuxプロジェクトが、2003年のCentOS Projectの誕生へとつながっている。Rocky Linuxとプロジェクトの今後の目標について、氏にインタビューした。
InfoQ: Rocky Linuxの今年のおもなマイルストンと日程について教えてください。
Gregory Kurtzer: 今はインフラストラクチャとビルドシステムが立ち上がって、自動パッケージビルドの用意ができたところです。次の大きなマイルストンは3月末のリリース公開なのですが、4月にずれ込みそうな状況です。
プロジェクトの予定に関する最新情報を知るには、"community update"ページのニュースを見るのが一番よいでしょう。それ以上にホットな情報は、Mattermostのコミュニケーションフレームワーク、またはIRCに参加してください。誰でも歓迎します、一緒にパーティしましょう!
InfoQ: Rocky Linuxのホームページには、Red Hat Linuxと"bug-to-bug compatible"なものになる、という説明があります。これがどういう意味なのか、Rocky Linuxコミュニティに求める作業が何であるのか、説明して頂けますか?
Kurtzer: "bug-to-bug compatible"というのは、法律上許される限りにおいて、Red Hat Enterprise Linuxのアップストリームソースとの互換性を維持する、というコミットメントを表現したものです。要するに、私たちのディストリビューションにバグがあればRHELにも同じバグがある、その逆も然り、ということです。
これを保証することには、開発者やシステムエンジニアにとって大きなメリットがあります。"bug-to-bug compatible"であるということは、アプリケーションやハードウェアやツーリングが、RHELで動作するのと同じようにRocky Linuxでも動作する、という意味になるからです。Rocky LinuxはRHELとCentOS Linuxを完全に置き換えることのできるものになります。RHELも同じように、Rocky Linuxを置き換えられます。
InfoQ: Rocky LinuxとCentOSとは、どこが違って、どこが同じなのでしょうか?
Kurtzer: 先程の質問のように、RockyとCentOS(ストリームでないもの)は、どちらも可能な限りRHELに近いことを目標にしていました。ですから違いは、実際には技術以外の部分になります...
CentOSは、CentOSの秘密署名キーにアクセスする小グループとして、常に厳重なコントロールの下にありました。このコントロールを管理するには、公開を制限することが唯一の手段なのです。従ってCentOSコア開発チームはいつも非常に小規模で、Red Hatがオペレーティングシステムをその配下に置くまでは、小さなグループによってコントロールされていました。
現在行っているのは、インフラストラクチャ、組織構造、そしてRockyのコミュニティを作る作業です。開発の一部を担い、プロジェクトの責務を共有するような、大規模なコミュニティになる予定です。それと同時に、特定の営利団体や意図によってプロジェクトが振り回されることのないようにするつもりです。Rocky Linuxはコミュニティの関心と利益に供するため、100パーセントフリーであり続けます。
InfoQ: 現在CentOSを使用しているすべての企業が、Rockyへの切り替えを希望すると思いますか?
Kurtzer: すべてとは言えませんが、私が話して、アプローチをした企業はすべて、文字通りすべてが、Rocky Linuxへの移行を希望していました。今、これを書いている時点で唯一の懸念は、まだリリースができていないことですが、プロジェクトの進捗はすべて公開していますし、開発上の議論やタスクもすべて公表しているので、私が話をした企業のほとんどがリスクは低いと感じています。
InfoQ: 企業が他のディストリビューションからRocky Linuxに移行したいと考える、一番の理由は何なのでしょう?
Kurtzer: ひとつの営利団体によってコントロールされているどのディストリビューションにも、Red Hatと同じようなリスクがあります。オープンソースと企業のビジネスモデルが争えば、ビジネスモデルが必ず勝利するということは、歴史が証明しています。論理的結論としては、ベンダの提供するLinuxディストリビューション(Red Hat、Canonical、SuSEなど)を購入するか、DebianやRockyのように完全なコミュニティLinuxを使用するかのいずれかになります。
Rocky Linuxコミュニティへの参加に興味があるならば、こちらのwikiにビルドプロセスの手引きが公開されている。ドキュメントへのコントリビューション方法に関する情報はGithubにある。コミュニティの最新情報はTwitterやRocky Linuxフォーラムで入手が可能だ。