インターネットが持続可能(sustainable)であるためには、健全な環境に対するその影響を評価し、緩和し、責務に応えることが必要だ。環境への影響を理解することで、我々は、インターネットの進むべき道筋を指し示すと同時に、看過できないほど深刻な結果を意図せずに伴っている、このディジタルインフラストラクチャの側面を明確にすることができる。
MozillaのサステナビリティスチュワードであるCathleen Berger氏は、OOP 2021で、インターネットの持続可能性について講演した。
持続可能性は一般的に、社会的な結び付き、経済面での幸福、健全な環境の3つの交わりとして定義される。インターネットの環境への影響を推し量る方法に関する理解を深めるため、Berger氏は、ソーシャルメディア、オンライン広告、オンラインストリーミングなどの影響を推測した、さまざまな研究論文を参照した。例えば、
これらの研究はすべて精度もさまざまで、温室効果ガス排出量の推測結果にも大きな開きのあることも少なくないのですが、それらの計算結果を合計すると、年間0.5~1.9 GtCO2e程度になります — ただしこの数字は、まだ控え目なものかも知れません。
"インターネットの提供する多くのメリットを無視するつもりはまったくありません"、とBerger氏は言う。"ですが、インターネットが環境に与える影響を理解することは、私たちの社会に必要な、持続可能な変革をサポートする上で重要なのです。"
Berger氏は利害関係者たちに対して、インターネットの環境への影響を低減するために、自分たちの役目を果たすように呼び掛けている。
ビジネスにおいては、環境への影響評価をコア文化の一端とし、イノベーションの推進力としての持続可能性を理解することが必要です。これは遠い将来に向けた投資などではなく、通常の5か年計画なのです。そのカーブに乗って、リスク評価とイノベーションの原則を取り入れてください。
政府に対するこれは、透過的なGHGの報告を必須のものにすると同時に、公共投資を、将来の世代を含むネットポジティブ(net-positive)なものに対してのみ行うようにすることです。
そして市民社会は、環境保護に関して、これまで以上にアドバイスを求め、提供することによって、よりよく、より多く、より速い対応を求めていく必要があります。
我々のすべてにとって、これは1度限りのものではなく、コミットメントであることを明確にする必要がある、とBerger氏は我々に問いかける。
Cathleen Berger氏に、インターネットにおける持続可能性について話を聞いた。
InfoQ: 時刻可能性(susutainability)を、どのように定義しますか?この定義は、インターネットに対してどのように適用されるのでしょうか?
Cathleen Berger: 私は持続可能性を、社会的な結び付き、経済面での幸福、健全な環境の3つの接続点だと定義しています。その観点から見れば、今回のパンデミックは、インターネットが特に物理的な距離という点において、社会的なつながりの上でのライフラインになり得ることを示した、という点については間違いありません。
本質的に最前線にいない私たちにとって、インターネットは、ビジネスを行うための主要な手段であるとともに、多くの人たちがリモート作業し、オンラインサービスを提供し、収益化することを可能にする存在です。つまりインターネットは、経済的幸福を護るための重要な手段なのです。
一方で、インターネットを持続可能にするためには、無視されがちな方程式の要素である健全な環境に対して、その影響を評価し、緩和し、責務に応える必要があります。
InfoQ: インターネットが環境に与える影響とは何でしょうか?
Berger: 世界が理想的であれは、インフラストラクチャや必要な電力、デスクトップやラップトップ、タブレット、携帯電話、その他ネットにつながるWebアクセス用デバイス、さらにはコンテンツや他のデータフローを見ることで、インターネットの影響を計算できます。
ですが実際には、これらの要素すべてを信頼性を持って測定することが非常に難しいというだけでなく、根底にある技術的な仮定や境界条件のあり方に関しての意見も分かれている状態なのです。これに関しては現在、Europian Commisionの"Supporting the Green Transition"のように、レベルの高い声明も公開されています。同資料によると、情報通信技術(ICT)部門の影響は世界の排出量の2パーセントに達しており、対策が講じられなければ、2040年には14パーセントまで増加する可能性があるといいます。
2パーセントでも、年間排出量としてはおよそ0.8GtCO2に当たります — ちなみにこれは、ドイツの2019年の総排出量とほぼ同じ量です。
InfoQ: インターネットが環境に与える影響を低減するために、すでに実施されていることは何でしょうか、それは効果を上げているのでしょうか?
Berger: MicrosoftやApple、Amazon、そしてもちろんMozilla、といった多くのハイテク企業がカーボンニュートラル、総排出量ゼロ(net zero emission)、さらにはカーボンネガティブの達成という、意欲的な誓約をしています。これは素晴らしいことですが、公開されるべき研究やイノベーションはまだまだあります。
まず最初に、環境に対する影響の評価と報告がまだ合理化されていませんし、GHG Protocolのすべての範囲とカテゴリに関する方法論や結果は、いまだ透明性に欠けていることが少なくありません — そのため、進捗を比較することや、ベストプラクティスを理解することが難しくなっています。GHG Protocolは、環境への影響を評価する上で最も一般的に使用されている標準であると同時に、二酸化炭素(CO2)に限らず、さまざまな温室効果ガスについて理解するためのガイダンスも提供しています。
加えて、全体的な傾向として、エネルギの需要や、サーバやデータセンタやプロダクトに必要な電力量の面からの効率改善に注目の集まる傾向があります。この分野に関連する排出量の増加をスローダウンするという意味から、これも重要ではあるのですが、必要とする土地や水、あるいはレアアース原料といった希少な資源への影響が考慮されていませんし、リサイクルと廃棄に関する問題にも対処していません。
InfoQ: 影響をさらに削減する上で、次に可能なステップは何でしょう?
Berger: "たくさんある"というのが単純な答です。ここで期待が持てるのは、課題のスケールが圧倒的に大きなものであっても、ディジタルテクノロジがそれと同じ規模のソリューションを提供できる、という点です。
私たちは生活と仕事を、すべてのレベルで、すべての面から変えなくてはなりません -- これはつまり、すべての人たちがこのポジティブな変革を進める立場にある、という意味にもなります。まずは普段のワークフローを振り返ってみてください。"いつもそのようにしている"ことは何かを自問自答することができると、その結果に驚かされることが少なくありません。
Begre氏は自身の講演について、持続可能なインターネットに関するTwitterのスレッドで公開している。